【06】bullet


 アーマーバレー。そういえばクラスの誰かが、パワードアーマーを使うスポーツのことを話していたような…。


「そんなのありか?って思うだろ? でもアーマーバレーは本当にそうなんだ。

選手は皆同じ大きさのアーマーに乗るから身長とかのハンデは関係ないんだ」


 人間にはそれぞれ身長差がある。

 永児にとってそれは当たり前で常に付きまとうものだった。


 バレーボールは競技の性質上<高さのスポーツ>と言われるだけあって、身長が高ければそれだけ試合でも有利な流れを作りやすい。


 だけど皆が同じ身長なら?


 チームによっては、それほど平均身長が高くないところもある。


 だが何の巡り合わせか、永児の周りにはいつも身長の高いチームメイト達がいた。

 同じ目線の高さでバレーができたら一体どうなるのか……頭がまだ追いつかない。


 そんな永児の頭を二多宮が上からつんつんと指でつっつく。


「想像してみろよ。普通のバレーだったらどんなに頑張ってジャンプしても追いつけない高さを持つ奴らとだって、アーマーバレーなら戦えるようになる。

お前のポジションはウィングスパイカーだろ?

自分より10㎝身長の高いブロッカーと、同じ高さで勝負してみたらどうなるか知りたくないか」


「でも、それじゃあ……ただアーマーに頼るだけのプレーにならないっすか」


「それが違うんだな。Vアーマー……あ、これはアーマーバレーで使う競技用のパワードアーマーのことな。

Vアーマーは主に操縦する人間の動きをセンサーでトレースして動くんだ。

だから選手の方がバレーの技術を身に着けていないと話にならない。

アーマーバレーの場合は、機体の性能ばかりに頼るプレーなんて元から無理なんだよ」


 二多宮はポケットからスマートフォンを取り出し「ほらこういうヤツ」と言いながら液晶に移る画像を永児に見せた。


 そこにはまさしく人型のロボットと言うべき機体が、背中を反らしスパイクを打つ体制で映っていた。


 画像はどうやら広告用だったらしく『アーマーバレー世界選手権』と大きくタイトルロゴが描かれている。


 ちなみに永児の携帯電話は絶滅危惧種の二つ折りなので、なんとなく指で押したりなぞったりする以外にスマートフォンの動かし方はよく知らない。


「こんなのに乗ってバレーができるんだ……!」


「アーマーバレーでは今までハンデになっていたことが関係なくなる分、選手達はもれなく、より対等に近い条件で競い合うことになる。

だからその実、いかにバレーの練習をよく積んでるかが問われるスポーツなんだよ。俺たちの間じゃ、そこから逃げずに戦い抜いた奴がヒーローだ」


「じゃあここに出てるやつは……皆バレーボールが上手いってことっすか」

「上手いよ。どいつもこいつもバレーボールのバケモンだ」

「バレーボールの……バケモン……」


 スマートフォンを両手で持ちながら、永児はしばし画像に見入っていた。



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