【05】bullet
バレーをやっていると聞いて永児は素早く反応した。
今度は永児の方が二多宮の方に体を向け、前のめりになって質問する。
「え、ほんとに! 二多宮さんもバレー部なんだ。ポジションどこっすか?」
「急に元気なったなあ。ポジションはミドルブロッカー。まあ今年もやれるかわからんけどな」
「それどういうことっすか? 辞めるんですか? 受験とか?」
「俺は辞める気ないんだけど、部員の数がなあ……人が揃わなかったら試合にも出られんし」
たしかに部活と言えど人数が揃わなければ、公式の試合に出場することもできないので、団体競技の部員確保はいつだって重大な課題だ。
バレーボールなら最低でも六人いなければプレーはできない。
ポジション練習を積んでも試合に出られないという状況は相当じれったい……ベンチの経験も積んできた永児にはとてもよくわかる。
辞める気はないのに好きなのにできるかどうかわからない……不確定な未来。
「俺もバレー続けられるのかな……」
「というと?」
「今年で中三だけど背は180㎝行かないだろうし、新しく高身長の一年入ってきたら監督はそっち使うだろうってのもわかってるし……。
そうなったら、このままやっててもレギュラーもエースも厳しいの誰の目にも明らかだから……。
試合に出てスパイク打てなくてもベンチでも……そのままでも続けていけるのかって思うと……」
「ふむ……でもバレー辞めたい、じゃないんだな」
「え」
「だってお前の話、よくよく聞いてたら試合に出られないから辞めたい、
じゃなくてバレーやりたいけどこのままじゃ続けていけるか自信がないってことだろ。辞めたいとは思ってないと」
「…………うん。そうだ……そうです。俺バレー辞めたくないです。
辞めたいなんて思わない……。
バレーでもっともっとやりたいことたくさんあるんだ。
今だってほとんど何にもできてないのに、このまま辞めるなんて嫌なんだ」
永児の身長が生まれつき高ければ、他のチームメイトの背がもっと低ければ、
背で負けていても派手なプレーができなくても、
自分の熱意と努力が監督にもっと伝わっていれば……。
何度同じことを考え、それでも諦めまいと首を振ったことだろう。
そうやって同じところをぐるぐると回るだけだったとしても。
「わかるよ。俺もミドルだけど身長は180には届かない。だから高身長じゃなくても試合に出れるバレーやってる」
永児は我が耳を疑った。
二多宮を見ると彼の青い瞳が、蛍光灯の光を反射して海の水面のように輝いていた。
「そんなバレーが……あるんですか……?」
「あるよ。身長関係なく活躍できるバレーボール。アーマーバレーっていうんだけど知らない?」
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