第50回配信 ホラーゲーム

 深夜、いつもと違う時間帯に暗い部屋の中でPCと相対する。配信のスタートボタンを押していつもと違う暗めのオープニングがスタートし、配信画面にミイナが映る。彼女は小声でマイクに向かって囁く。

「こんばんミイナ~…リクエストの多かったホラー回だよぉ…部屋も暗いしすでに怖いよ~……今日はこの、”阿賀屋敷(あかやしき)”をやっていくよ…」

 自分自身ホラー耐性がないのになぜこんなガチガチに有名なびっくり系ホラーをやっているのかと心の中で自問する。数回前の晩酌配信で勢いとノリでやると言ってしまったからだ、と多分そうだと思った。あの日は結構な量を飲んだのでほとんど覚えていない。ただ、"ホラーゲームをやる"と言ったことは覚えている。


 序盤のびっくりポイントで大声で叫び、防音ルームにしててよかったと安堵しながらゲームは中盤に差し掛かる。懐中電灯で屋敷内を歩きながら探索をしていく、どうやらギミックを解除しない限り無限に屋敷の部屋がつながってしまっているようだった。コメント欄にクリア勢が微小のヒントを出してくれるおかげでミイナの考察力が試される。

「ここの鍵は…どこに使うんだろう」

 ダメそうだ。コメント欄も考察勢が散見されるようになった。このゲームには主人公の精神値が存在し、0になるとびっくり要素と共にチェックポイントまで戻されてしまう。その精神値は懐中電灯を消すと減っていく。ならば点けとけばいいではないか。そう思うだろう。しかし屋敷内は常に日本人形が徘徊している。見つからないためには一時的に懐中電灯を消さなければならない。その回数によっても運が悪いと人形に驚かされるか、ゲームオーバーに驚かされるかの二択になってしまう。精神値は次のチェックポイントまで回復しないのでどれだけ効率よく謎解きやギミック解除をしなければならない。気が付けば時間は午前2時を回っている。リアルでも辺りが漆黒に包まれていく。ミイナ自身も精神がすり減っていく、恐怖と不安感が部屋を支配する。

「あ、あのさー…後日やるので、今日はこれでやめていい?」

 耐えきれず後日に持ち越すことにしたミイナ。視聴者もミイナファーストなので反論は特になかった。配信を切ってすぐさま部屋の電気を全部つける。自分のいない部屋の電気も全部つけた。この後、恐怖で一人でお手洗いに行けるようになるころにはすっかり日が昇ってしまっていた。幸いなことに今日は土曜日だ、今から寝ても咎める人は誰もいない。

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Vの登竜門(リクエスト作品) 小雨(こあめ、小飴) @coame_syousetu

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