第40回配信 雑談

 配信のスタートボタンを押し、配信がスタートする。今日は久しぶりの雑談枠で、背景には机や椅子、お菓子にお茶が置いてある極力自分の自宅に似せた背景が置いてある。

「こんみな~ミイナだよ!」

 いまだに定まらない配信開始の挨拶で枠が回りだす。配信の内容は主に最近自分に起きたことやリスナーの身の回りで起きたことの話題になった。

「ミイナはね~、最近SNSで取り上げてくれる人が増えて、イラストとかも描いてくれてる人がいてうれしいな」

 率直に最近の出来事を語っていく。そう、最近SNSでミイナを描いている絵師がいわゆるバズりでミイナ自身の知名度も上がった。彼女のイラストがバズったのだ。季節は丁度真夏、水着衣装の女子のイラストがバズらない訳がない。

 そんなこんなでチャンネル登録者が500を超え、配信に来てくれるのは大体5~600人くらいで安定していた。時間も夜8時から、夕飯もそれなりにみんなが食べ終えた時間の配信なので見に来てくれる人は多い、配信アプリでもリピート率は右肩上がりだった。リスナーのコメントにも目を向ける。すると、

「最近家に害虫が出ました」

 や、

「家が火事で燃えました」

などのコメントが見られる。そこからリスナーのコメントに反応していると徐々にみんな話題がなくなってきてコメントの頻度が落ち始める。

「みんなもう話題ないの~もっと話そうよ~」

 そういうミイナ自身も話題に困り始めていた。しかし一つ可能性を見出して話始める。

「これは中の人の話なんだけど…………」

 ミイナを動かしている自分の話をする。苦肉の策ではあるが、実際にその話をしていたライバーがいたことを思い出し、話すことにした。結果的にコメントの数が増え始める。

「え、本職は医者?」とか、「本業お疲れ様」などのコメントが散見している。新型の感染症が流行っているので実際仕事は大変だ。しかし、そんな忙しさの中でもリスナーたちのおかげで元気をもらっている。リスナーは、

「ミイナのおかげで頑張れる」

 という元気いっぱいなミイナから元気をもらっているようだが、ミイナ自身もリスナーから元気をもらっているのだ。感謝しなくてはならない。

「私もみんなのおかげで頑張れるんだよ~! みんなありがと~」

 そういった直後に、

「ん? 最終回かな?」

 という秀逸なボケを見てしまいツボに入って数分は笑っていた。リスナーも、

「草」、「それはうまい」、「今同じこと思ったわ」

 などとコメントしている。そうこうしているうちに時計は10時を回り配信を終わる時間になった。

「それじゃあみんなお疲れ様~また見に来てね!」

 配信終了ボタンをミイナは押し、リスナーは各自、自分の生活に戻ってゆく。お風呂や別の配信を見に行ったりとその形態は様々だ。しかしほぼ全員に一致することがある。それはミイナの配信が始まると見に来る、という事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る