第54話 Hypnosis
月山桐人。2年生。甘いマスクで全校生徒から支持を集める私たちの生徒会長。
校内で行われるテストは勿論1位、全国統一模試での成績もトップクラス。
所属しているサッカー部では全日本スカウトからも声がかかるほどの実力者。
成績優秀、品行方正、文武両道。
一人の学生が揃えられる勲章を優に総なめしている人間が、私の知る月山桐人という人だった。
そんな彼が、あんな異常な光景を見て、さもアレが当たり前かのようにいなしたという事実が私を動揺させていた。
どうして、月山さんが?
そもそもあの場に萌ちゃんが居たのはなぜ?
私の疑問よりも先に月山さんが口を開いた。
「単刀直入で悪いんだけど、さっきの件は黙っといてもらえるかな?」
口封じ。
予想は付いたその言葉に、私は反射的に回答していた。
「な、なんなんですかあれ!」
「あー、あんまり大きい声出さないでね、また鬼島に見つかったら面倒だし」
「あ、すみません・・・」
月山さんの視線が鋭くなった気がした。
「で、でもあんなこと学校でしちゃダメじゃないですか・・・まがりなりにもウチは進学校ですよ?」
「・・・あんなこと間違ってる、って言いたいのかな?」
私はもう訳が分からなくなって泣きそうな顔のまま頷いた。
月山さんは小さくため息をつく。
「あまり手荒な真似はしたくなかったが、仕方ない」
そう言って月山さんは私の顔の前にスマホを向けた。
画面は真っ暗だった。
「え、なんですかこれ―――――」
「大丈夫、強烈な奴じゃない。漏斗みたいなもんさ」
彼の言葉と同時に、真っ黒だった画面に謎の赤い紋章が浮かび上がった。
「ろ、―――――う、と?――」
私の意識はその画面に吸い付けられる。
「―――――――――――ぁ」
ぐにゃり、と視界が歪む。
「よし。じゃあ改めて、始めようか」
思考が彼の言葉だけを受け入れる。
囁くように、呼びかけるように、彼の声が脳に浸透してくる。
「君は与えられた情報でしか物事を測れていない。本質はもっと深い部分にあるんだよ」
「少し、話をしよう」
「話せばわかる、ね?」
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