第45話 New Heroine 2
「っ・・・ふふふ、あはははははははははは! ご、ごめん、やっぱ我慢できない・・・こんなの笑っちゃうよ風香ちゃん!」
「・・・え?」
吹き出した購買部のお姉さんは、なぜか秋庭を下の名前で呼んでいた。
「まったく神崎さんったら・・・訳の分からない演技を勝手に始めて、勝手に終わらせるのは止めてもらえるかしら」
・・・? 何も理解できない
「・・・え、何? 二人とも知り合い?」
かたや、秋庭のことを「風香ちゃん」と呼ぶ購買部のお姉さん。
購買部のお姉さんを「神崎」と呼ぶ秋庭。
・・・もしかして俺、おちょくられた?
「そだよ~ん、ごめんね、ちょっと試してみたくなっちゃってw 私は神崎玲奈。風香ちゃんと同じ風紀委員1年生だよ」
ビシッと敬礼ポーズをとって見せるお姉さん。
先ほどまでの礼儀正しさはどこかにはじけ飛んだかのようにフレンドリーに自己紹介をかましてくる。
俺の苦手な陽キャタイプか・・・
「ごめんなさい御影くん、彼女は購買部の管理人をしている神崎さんよ。丁度紹介しようと思って来たのだけど、彼女が突然余所余所しい演技を始めたものだからつい・・・」
「えへへ、ごめんね 御影くん?だっけ、あの風香ちゃんと絡む男っていうから、どんな反応するか見てみたくなっちゃってさ~」
頭をかきながら舌を出す神崎という女性。
どうやらこの二人は元々知り合い、というか友達だったようだ。
「風紀委員ってロクな人間居ねえのか・・・」
「聞き捨てならないわね、私は真っ当な人間よ」
「私も~!」
連れションみたいなノリで自分の真っ当さを主張するな。信憑性0だろ。
「本来の目的はこっちよ。中を確認させて頂戴」
裏カタログの中身をぺらぺらとめくる秋庭。乱丁などがないかを見ているのだろうか・・・慎重だな。
完全に手持ち無沙汰になった俺に、神崎という女性がこっそり近づいてきて耳打ちする。
「てかさてかさ、二人はどっちが告ったの? 御影くんから?」
「――え、いや別に付き合ってないけど・・・」
「え~嘘だ~! 確実に付き合ってる距離じゃん!」
「――こ、声が大きい! つか付き合ってねえって!」
「ふ~ん、怪しいなあ~ だってあの風香ちゃんだよ? 鉄の女フッチャーだよ? どんな男に言い寄られても拒んできた風香ちゃんが男と一緒に行動するなんて天と地がひっくり返らないと起きないよ!」
「・・・SEPのことを思えば、天地がひっくり返ることもなくはなさそうだけどな」
俺の言葉に、神崎という女性は目を丸くする。
「・・・冷静だね。私もちょっと興味湧いてきたかも」
言って、なぜか両手でスカートの裾を握りしめていた。心なしか膝が小さく揺れているように見えた。
咄嗟に目を逸らす。
「そ、そういや、神崎さんは俺らと同い年って認識で合ってるよな?・・・」
「うん、そだよ~ぴっちぴちの16歳。華のJKなのです」
「・・・てっきり年上かと思ってたが」
購買部に居ること自体もそうだが、その所作があまりにも大人びていたしな。
その言葉に神崎さんはむすっと頬を膨らませた。
「え~ それ酷くな~い? 老けてるってこと~?」
「いや、単純に大人の魅力があるというか・・・」
「ふぇっ!? と、突然口説いてくるじゃん!? いきなりすぎて心の準備が・・・」
「あ、すまん、別に口説いたつもりはないんだが――」
「も~風香ちゃんいいの~? ペットさんが私のこと口説いてきてるよ~?」
神崎さんは告げ口するように秋庭へと声をかけた。
当の秋庭は冊子をぱたんと閉じた。こちらを一瞥する。
「――裏カタログ、問題ないみたいだから借りて帰るわ。神崎さんも彼をいじめるのは大概にしてあげてね」
言って、華麗に踵を返し歩き始める。
俺も神崎さんに一言告げてから秋庭の後を追った。
――良かった、特に気に障ってはいないようだ。
そりゃそうだよな、俺と秋庭は別に付き合っているわけでも何でもないんだから。
ただ、手を組んでいるだけ。
それ以上でも以下でもない。
俺が誰を口説こうと問題ないね。(つうかそもそも口説いてねえけど)
安堵する俺の前で、秋庭の背中が告げる。
「御影くん、後で500万SEPを貸しに追加しておくわ」
・・・怒ってんじゃん・・・キツゥ・・・
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