第41話 Turn
「――というわけで秋庭、俺に力を貸してくれ」
「全く意味が分からない上に気持ちの悪い回想を披露するのは止めてもらえるかしら・・・吐き気がするわ」
額に手をあて、やれやれと言わんばかりの仕草を見せる秋庭。
「・・・というかあなた、あまり不用意に接触してこないでって言ったの覚えてる?」
「勿論。だからこうして早朝に待ち伏せしてたんだろ」
秋庭はいつも誰よりも早く教室に来ている。そういう意味では待ち伏せするのは容易い。
早朝の教室ということもあって、俺と秋庭以外に登校している生徒は居なかった。
「で、どうして私があなたの個人的な目的に協力しないといけないのかしら? 確かにあなたと私は手を組んでいるけれど、それは"SEPの構造"そのものを破壊するためでしょう? 私怨を持ち込まれても困るわ」
理路整然、一ミリも違わない論理武装。さすが我らが風紀委員、秋庭風香。
「まあそう固いこと言うな。これも長い目で見れば"SEPの構造"破壊につながるかもしれない」
「・・・そういう楽観的な考えは嫌いだわ」
うん、確かに嫌いそう。
「・・・悪いけど、力は貸せないわ。他をあたって頂戴」
本に目を落として、俺との接続を完全に断つ秋庭。
こっちこそ悪いが、引き下がるわけにはいかない。
「――藍沢唯華、1-Aの風紀委員。風紀委員会の副委員長」
秋庭の眉がピクリと動くのを俺は見逃さなかった。
「おかしいと思ったんだよなあ・・・L Loomの見回りとか夜間のC棟警備とか、生徒主体の委員会にしちゃあまりにも学校側に寄り過ぎだ。まあ? まさかそれが風紀委員だとは思わなかったけどな」
「・・・」
秋庭はなおも本に目を落としている、しかし意識は確実に俺の言葉に向けられている。
「お前が――」
「おはよ~~」
「うっす~~~~~~」
「やーはろooooooooooooooooooo!!!」
畳みかけようとしたところで、ぞろぞろと生徒たちの喧騒が廊下から聞こえてきた。皆さん揃って登校の時間ということだろう。
こんな話をしているところ見られて変な疑いをかけられるのも困る。
仕方なく秋庭の席から離れる。
刹那――
「――今日の放課後、視聴覚室に来なさい。・・・貸しは50000 SEPよ」
秋庭は記号のような発語の後、完全に一人の世界に戻っていった。
いや、だから俺のSEPはずっと0ポイントなんですって・・・
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