幻想とファンタジーと願い

 8月も中旬。夏休みに入ると、僕の生活のルーティンの大半は一時的になくなった。しかしそれでも、あの総合病院へ行くというルーティンはまだ続いている。足のねんざが治ったにも関わらず、だ。もう一か月以上あの子を通い続けた。おっと、言い忘れていたが、最近僕には彼女ができたのだ。


 いつものように正面玄関から入り、うきうきで病室のある二階へと続く階段を上ろうとしたその時、もう行かなくなった診察室から話し声が聞こえてきた。

「201号室のあの子、もう長くないですね。」

「ああ、もって一週間ってところか。」

 

 は、、、?


 階段の途中で石像のように固まっている自分に気付くと、バランスを崩してよれよれになりながら二階へ大急ぎで上がり、何度も見てきたあの部屋の号室の札を願うように確認する。

 [201号室]

 「は、、はは」

 ベッドの上で寝ている彼女の元に行くなり、僕は祈るように手を握る。

「幻想とか、ファンタジーとか。そんなものはもうどうでもいい。僕はただ、榴美に生きてほしいんだ...!!」

 そう祈りの言葉を捧げながら、もう離さまいと目をつむりながら顔を近づける。ああ、人がキスするのって、愛が終わってしまうのが恐いからなんだろうな。








 閉じていた瞼を開くと、そこには"僕"がいた。

「え、?」

 

 そして"僕"が目を開けると、彼はひどく動転して、「しまった」とでもいうような顔を浮かべた。

「いったいどういうことだ?」

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