第59話 マドリード会談④

-スペイン:マドリード-

1937年4月14日


 ドイツと二重帝国の問題が片付いた事で、バルカン半島の国々に対する話題に戻った。先程私が言ったルーマニア領に存在する旧領トランシルバニアを二重帝国が奪還する際の独伊墺の密約が結ばれた後、史実で大戦中にルーマニアの政権をとっていた※①鉄衛団の話になった。


 鉄衛団は来年内務大臣暗殺の報復として、ルーマニア国王の命令により、幹部等が逮捕されて一時的に弱体化した事を思い出し、その事を絡めて話した。


「そうですね。鉄衛団は1933年に首相を暗殺しておりルーマニア国王も鉄衛団の政治目的に強く反対しています。そろそろ上層部などが粛清されるでしょうから、その間に傀儡にする方が良いかと思います」


 それを聞いたヒトラーが応えた。


「傀儡ですか.....そうですね。二重帝国による領土要求も有り、ルーマニア国王の影響力がある程度低下するでしょうからね」


「なるほど...わかりました」


「ところで、他の国も巻き込むのですか?」


「そうですね。※②第二次バルカン戦争で領土を失ったブルガリアに独立保障でもかけて唆してやろうかと」


「なるほど...ということはブルガリア、二重帝国が領土要求し、我々が圧をかけるのですね」


「えぇ、流石のルーマニアも4カ国と戦争を起こそうとは考えるはずがありませんので」


「ホルティ宰相はそれでもよろしいでしょうか?」


「大丈夫です。むしろ、その方がありがたいですから」


「そうですか、ではその方向で領土要求しましょう」


「わかりました」


 そういうと、思い出したかのようにヒトラーが私に質問した。


「そういえば、第二次バルカン戦争でブルガリアが失った領土はギリシャ王国やセルビア王国...現在のユーゴスラビア王国にもあったはずですが...それらはどうするつもりなのですか?」


「ギリシャ王国とユーゴスラビア王国に関しては、今動かれてルーマニアと同盟を結びその後イギリスやフランスに協力を求められても厄介なので...」


 それを聞いたヒトラーとフランコは史実でユーゴスラビア国内がそれなりにボロボロになっている事を知っている事とギリシャで独裁政治を執っているメタクサスが反共主義者であり敵対もしていない為、触らぬ神に祟りなしと頷いていた。


「それがいいですね」


「まあ、イタリアはギリシャに手を出さなければ大丈夫だと思いますよ」


 その会話を聞いていたホルティ宰相は不思議に思い質問した。


「何故、フランコ首相はイタリアがギリシャに手を出してはいけないと思うのですか?イタリアとギリシャは※③コルフ島事件以降、あまり関係は良くなかったと思うのですが...」


 それを聞いたフランコは私たちと目を合わせた後にホルティ宰相の質問に応えた。


「ああ、それはですね。確かにイタリアはギリシャとの関係は悪いですが、現在建艦競争が加速しています。それでイギリスが地中海での影響力を強めていることにあたって、地中海情勢をこれ以上、緊張を高めることはあまり得策ではないと考えて発言したまでですよ」


「…まあ、今はそう捉えておきましょう」


「ありがとうございます」


「最後にアルバニアに関してですが、今後イタリアはどうなさるつもりなのですか?」


 多分、※④アルバニア侵攻とかを警戒しているのかな?まあ、保護国のままでも特に問題ないから大丈夫だと思うけど


「そうですね。保護国なので、これまで通り軍事関係を強化して、アルバニアの資源である油田とクロムやニッケル等の取り引きに力を入れる予定ですかね」


「そうですか」


 そうして、バルカン半島の話題が終わった。途中、ポルトガルとの交渉が入り、内戦の参戦の見返りとして、ドイツから工業製品、イタリアからは艦艇の輸出が決定され、ソ連に輸出されるはずだった※⑤タシュケントがポルトガルへ輸出することが決まった。


 それ等が終わると、ソ連の話題へと移った。


「最近のソ連の動向はどうなっているかなのですが...各国で何か掴んでいる情報はありませんか?」


「そうですね。1月にモスクワ裁判でトロツキー派の人物を処刑したくらいでしょうか」


「その裁判でトロツキー派13名が我が国ドイツや日本の手先となってスターリンの暗殺を目論んだと自供しましたね.....とんだ言いがかりですが」


「だと思いましたよ」


「まあ、我々が防共協定を結んだことに対する恨みでもあるのでしょうけどね」


 そのことを聞いて、各国の代表が頷いていた。


「トロツキーといえば、メキシコ南部で蜂起していましたが、各国は何か情報は得ているでしょうか?」


「それについては私がやりましょう」


 とポルトガルのサラザール首相が手を挙げた。


「ラテンアメリカにいる諜報員によれば、ソ連からトロツキー派へ収集をかけている様です。それに一部のアメリカ共産党員に協力を持ちかけて、ソ連からのトロツキー派や型落ちの兵器をメキシコ南部に輸送中でさらにベネズエラ共産党員にも協力を持ちかけ石油を得ているとか」


「それらが到着すれば厄介なことになりそうですね」


「そうですね」


「あとここには居ないですが、同じ防共協定国の日本が掴んだ情報によりますと、カルタヘナ攻略以降に人民戦線へ送られるはずだった兵器や軍事顧問団が中国共産党に送られて、現在再編成された中国共産党軍が中華民国軍に反撃しているようですね」


「それは大丈夫なのでしょうか?」


「そうですね。中華民国軍は機械化があまり進んでいないので、スペイン内戦の時の様に戦車や航空機等が供与されていれば、かなり厄介なことになるかと」


「現状はこれ以上なんとも言えないので、それなりの精度がある情報が集まってから、この話題について再度話しましょうか」


「わかりました」

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウィキペディア参考)


①鉄衛団

1927年から第二次世界大戦の初期にかけて、ルーマニアで起こった極右の反ユダヤ主義民族運動、およびそれを推進した政党。1940年から1941年まで政権を獲得した。


②第二次バルカン戦争

ブルガリア王国が第一次バルカン戦争での取り分に不満を感じて、1913年6月16日6月29日に元同盟国のセルビア王国とギリシャ王国を攻撃したことで勃発した戦争。セルビア軍とギリシャ軍はブルガリア軍の攻勢を撃退して反撃に転じブルガリア領に進軍した。ブルガリアがルーマニア王国との国境紛争も抱えていたために、ルーマニアが介入を決定さらにオスマン帝国も機に乗じて第一次戦争で失った領土を一部取り戻そうとした。ルーマニア軍がブルガリア首都ソフィアに迫ると、ブルガリアは停戦を求め、第一次バルカン戦争で得た領土の一部をブカレスト条約でセルビア、ギリシャ、ルーマニアに割譲せざるを得なかった。オスマン帝国とはコンスタンティノープル条約でエディルネを割譲して講和した。


③コルフ島事件

1923年8月31日に発生した武力衝突事件。第一次世界大戦後にバルカン半島諸国で発生した領土対立に絡んでいる。イタリアのエンリコ・テッリーニ将軍暗殺事件に対する報復として、イタリア王国がギリシャ王国領のケルキラ島コルフ島を砲撃し占領した。


④アルバニア侵攻

1939年4月7日から4月12日にかけて行われた戦争で、数日間の戦闘の後にアルバニアは降伏し、アルバニア国王がイギリスに亡命した。後にイタリア国王がアルバニア国王に選出され、事実上の降伏を認めた議会はアルバニアを王の庇護によりイタリア王国の同君連合として扱ってくれるよう嘆願したこともあり、イタリアの新聞各紙では併合ではなく連合とする言葉を用いて報道した。その後、イタリア国王が戴冠式でアルバニア国王となり、アルバニアはイタリア王国の保護領となった。


⑤タシュケント

イタリアで建造されたソ連の嚮導駆逐艦でウズベク・ソビエト社会主義共和国後のウズベキスタンの首都タシュケントに因んだものであるが、直接的にはロシア内戦時の殊勲船の名称を記念したものである。ソ連艦隊では、その艦体色と役割から「空色の巡洋艦」と呼ばれて親しまれた。ソ連では、大祖国戦争における勝利のために大きな功績のあった英雄的な艦として記憶されている。

しかし、この世界線ではムッソリーニの指示でタシュケントの輸出が取り消されて、ポルトガルへ輸出された。


基準排水量 2893 t

公試排水量 3422 t

満載排水量 4163 t

全長    139.8 m

全幅    13.7 m

喫水    4.0 m

機関    ヤーロウ缶4 基

      オルランド式蒸気タービン2 基

      102000 馬力(計画)

      130000 馬力(公試)

推進    2軸推進

最大速力  42.5 kn

巡航速度  20 kn

航続距離  5030 浬/20 kn

燃料搭載量 1178 t

乗員    250 名

兵装(初期)

      50口径130 mm単装砲B-13 3基

      45mm単装高角砲21-K 6基

      12.7 mm機銃DShK 6基

      533 mm3連装魚雷発射管 3基

機雷    1908/39:80 - 100 個

装甲    なし

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