閑話 とある大佐の受難②

前書き


 既に近況ノートの方で話してはいるのですが、5月中は本作を休載といたします。

 理由と致しましては、5月の就活のために専門校の筆記試験対策・論作文・面接対策等で時間が取れず、執筆することが出来ないからです。

 最近は勢いも休載前に戻る以上視聴数が増えて、私としては大変嬉しく、この勢いのまま投稿したいですが、一旦お休みを頂きます。

 読者の皆様、ご理解のほどお願いします。

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-スペイン:カタルーニャ州 バルセロナ-

1937年2月3日


 スペイン各地で敗走が続いていた人民戦線政府は、人員不足が深刻な状況だった為、王国軍からの捕虜交換に直ぐに応じた。


 捕虜交換実施後、カサドは4ヶ月振りにアサーニャ大統領に面会した。


「久しぶりだね。カサド君」


「お久しぶりです。アサーニャ大統領...マドリードを失陥してしまい、会わす顔すらありません」


「いやいや、君はこれ以上マドリード市民の犠牲が出ない為に降伏の決断をしたんだろう。なら仕方がないさ...これからは共和国大統領護衛軍団長として務めて欲しい。再び人民軍の指揮となると共産党が敗北主義者を許すなとうるさいからな、私の元なら彼等は何も言ってこないだろう」


「お気遣い感謝します」


 そんな事を話しているとすぐに近くで銃声が多数響き渡った。カサドはアサーニャ大統領に伏せるように説得し、臨戦体制に入っていた。そして暫くしてからアサーニャ大統領の秘書が大慌てで部屋に入って来た。


「大統領閣下!一大事です!」


「何があった!?」


「はい、カタルーニャ州全域でカタルーニャ自治政府庁舎などが※①CNTや※②FAI、※③FIJL、※④POUM等に占領又は攻撃されています!」


「なんだと!?奴らは馬鹿なのか!内戦中に内輪揉めするなんて、敗北を決定する様なものだ!直ぐにラルゴ首相を呼んでくれ!」


「はい!」


 急いで秘書が部屋から出ていく、しかしこの反乱を好都合だとカサドは思っていた。


「アサーニャ大統領、私に捕虜交換されたマドリード守備隊の指揮権を下さい。兵力は9000程ではありますが、迅速にこの反乱を納めて見せましょう」


 それを聞いたアサーニャ大統領の決断は早かった。


「わかった。君にマドリード守備隊の指揮権を与えよう。まだ配置転換は終えていないから直ぐに召集出来るはずだ。頼んだぞ」


「承知しました」


 そしてカサドは僅か2日でカタルーニャ州で起きた社会主義者の反乱を鎮圧した。しかし、この反乱で人民戦線政府に対するカタルーニャ人からの支持はほぼ無くなっていた。



1937年2月6日


「カサド君!君が迅速に対処してくれて本当に助かった...これで君が共産党から何か言われることもないだろう!」


「ありがとうございます。アサーニャ大統領一つよろしいでしょうか?」


「なんだ?出来ることなら、なんでも叶えよう。君は反乱鎮圧の英雄なのだからな」


「はい、マドリード守備隊の指揮権をこのまま継続して貰いたいのです。彼らとはこの3ヶ月マドリード防衛の為、共に戦ってきた同志ですから」


「わかった。ただそうなると、前線に出てもらう事になるぞ?3日前の反乱が起きてから反乱軍スペイン王国軍の攻勢も激しくなっていらからな」


「わかりました」


 そしてカサドは部屋から出るとセンターニョ中佐を呼び、ある人物達と接触を図った。



1937年3月3日


 ※⑥アラゴン州全域がスペイン王国軍に占領され、フランス国境を除くカタルーニャ州東西南方面がスペイン王国軍兼十字軍に包囲された状態になっていた。


 人民戦線政府は約10万の兵力を集めたが、その殆どは民兵で士気と練度は低かった。対して、連戦連勝で士気と練度に勝り、制空権と制海権を持つ、40万を超えるスペイン王国軍兼十字軍と戦えば、人民戦線政府軍が負けるのは確実であった。


 そして、戦いの火蓋が切られようとした時にカタルーニャ州全域でカタルーニャ人とカサドが率いるマドリード守備隊が蜂起し、政府庁舎が全て占領され、前線で対峙中の両軍に停戦命令が出された。


 臨時大統領執務室ではアサーニャ大統領が凄まじい憎しみを込めて、自分を拘束しに来た人物を睨んでいた。


「まさかカサド君が裏切るとは思わなかったよ。君は共和国大統領護衛軍団長としての誇りはないのか!」


 と机を思いっきり叩く。しかし、カサドとその配下の兵士達は表情を変えなかった。


「我々はこれ以上、このままカタルーニャ市民と兵士達が無駄な犠牲を払って最後まで戦い抜くのは無益だと考えたまでです。マドリードでもそうでした」


 その言葉を聞いたアサーニャ大統領はある仮説が頭をよぎり、カサドに尋ねた。


「まさか.........君達はマドリードでただ降伏したのではなく、この様にクーデターを起こして共産党員や徹底抗戦派の民兵を始末してから降伏したのか?」


「そうですね。2回目だったので、比較的スムーズに占領することが出来ました」


「ふざけおって......」


「ではアサーニャ大統領、貴方を拘束させて頂きます」


「その前に一つだけ聞きたいことがある」


「なんですか?」


「なぜ私を…いや、なぜ人民戦線政府を裏切った!本当のことを言え!」


 それを聞いたカサドは少し沈黙した後、応えた。


「私は軍人として、大統領でも人民戦線政府でもなく、国王陛下に忠誠を捧げる事にしたのですよ」


 その事を聞いたアサーニャ大統領は、2月に起きた反乱で責任を取り辞任したラルゴ首相から言われた事を思い出した。


“ 大統領、彼は反共産主義者で保守主義者です。そんな者に中央軍最高司令官の役職を与えても大丈夫なのですか?”


「あの時に彼の提言を真剣に聞いておけば、こんな事にはならなかったかもしれんな.....」


 アサーニャ大統領がそうつぶやくと、それを聞き終えたカサドが配下の兵士達に命令を下した。


「何をしている、今すぐにアサーニャ大統領を拘束しろ!」


「「はっ!」」


 こうして、スペイン人民戦線政府は崩壊し、その中で新しく設立されたスペイン臨時政府がスペイン王国に降伏した。


 スペイン内戦終結後、スペイン王室がイタリアの支援のもとスペインに帰還し、スペインはスペイン王国として再出発していくのだった。


 そしてその王室近衛兵団長にカサドがいたことは公然の事実である。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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267フォロー及び41960PV、★178評価に 4レビュー、♡1406応援に43応援コメントありがとうございます。


本話の中で、なぜカタルーニャ州で反乱が起きたのかというと、史実で1937年5月3〜8日に起きたバルセロナ5月事件と言って、バルセロナ市を中心とするカタルーニャ州で起きた人民戦線政府内部の社会主義者と共産主義者による武力衝突です。


補足説明(ウィキペディア参考)

①CNT

正式名は全国労働総同盟。スペインのアナルコサンディカリズム支部の連合。


②FAI

通称はイベリア・アナキスト連盟。


③FIJL

イベリア・リバタリアン青年連盟。


④POUM

マルクス主義統一労働者党。


⑤アラゴン州

スペインを構成する自治州の一つ。この地域にはアラゴン語という独特の言葉があるが、スペインの貴族階級はスペイン語を使用し、アラゴン語を話す者を弾圧していった。フランコ政権になってからは、最も激しく弾圧された。

しかしこの世界線では、フランコが言語に対して弾圧をする意味が無いと考えている為、アラゴン語等の言語弾圧は起きていない。

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