閑話 フィアット社兵器設計局の知られざる奮闘②

-イタリア:フィアット社 兵器設計局 軍用車輌課-

1936年1月8日


 軍用車輌課にはマルティ課長を中心とするメンバーが実践評価や現場の兵士からの具志の報告をまとめていた。


「追加予算も確保できた事だし、とりあえず前回作った戦車のメリットとデメリットをまとめるぞ」


 まとめられた資料には、以下の様なことが書いてあった。


メリット

・ディーゼルエンジンを採用したことによって行動距離が長くなった事と被弾した際に炎上が少なくなった事

・乗員を3人に増やしたことによって作業の分担ができるようになり乗員の負担が減った事

・無線機を搭載した事によって味方と連携がしやすくなった事

・装甲を増やした事で20mm機銃まで耐えられるようになった事


デメリット

・ハルダウンが銃塔しかできず砲が使えない事

・車体を相手に向けないと主砲が撃てない事

・車体が狭くあまり身動きが取れない事

・防砂フィルターが無いため砂漠では砂塵が車体に入ってエンジンが故障する事

・銃塔に換気装置が無い為、主砲を撃った時に発射ガスが充満してしまう事


 資料を読み終えた後に次の戦車開発の会議が始まった。


「まず、デメリットに車体が狭いと搭乗員から言われていたから、車体の大型と多少の砲撃に耐えられるように装甲の強化をする事にしよう!それに付随して乗員をもう1人追加してより、作業を分担する」


 その決定に同志Aが意見を了承と意見を言う。


「わかりました。車輌を大型化するということは、同時に主砲も口径を大きくする事も可能です」


「ああ、勿論やる予定だが、時間がないから37mm戦車砲を去年から生産されているDa 47/32に変更だ!それにL-60を参考にして回転砲塔に新技術の油圧式動力旋回砲塔を採用する予定だから、この前の様なハルダウンすると機銃しか撃てなくなる戦車にはならないと思うぞ」


「そのことで一ついいでしょうか?」


 とマルティの部下であるヴェロネーゼが手を挙げていた。


「なんだ?」


「はい、前回の具申の中で気になるものがありまして、車体に主砲がついているので車体ごと動かさないと主砲が撃てないが、待ち伏せを主任務として運用するのなら結構使えるという意見があるのですが、大型化させた車体に固定式で75mm級の主砲を搭載するのはどうでしょうか?」


「待ち伏せ専用として割り切るのならばいいと思うが、75mm級だと...?何処でその主砲を確保するんだ?今から開発すると少なくても2〜3年はかかるぞ?」


「いえ、一昨年開発されたばかりのDa 75/18榴弾砲を搭載しようと思っています」


「此度の戦争でも活躍してる榴弾砲だから、問題は無いだろうな…よし、言い出しっぺのお前が開発を担当しろ」


 それを言われたヴェロネーゼは嫌そうな顔をしながらも了承した。


「まあ、とりあえず車体が完成するまではこっちを手伝ってもらうから大丈夫だぞ」


「そうですか…」


「新型戦車についての話に戻るが、他にL-60を参考にするとして何か意見のある奴はいないか?」


 それに同志Bが意見を言う。


「マルティ課長、今回のエチオピア戦でわかったことがあります。まず、現在運用されているL3軽戦車には電気溶接型のcv.33とリベット接合型のcv.35があります」


「そうだな、それがどうかしたのか?」


「はい、そこでそれぞれ敵から被弾した際の兵士からの具申を求めたところ、電気溶接型は機銃弾や小銃弾に被弾しても多少の傷が付いた程度で問題が無かったのですが、リベット接合型は被弾した際にリベットが外れて車内に飛び散り、乗員を負傷した事案が少なくても8例程確認されています」


「そんなにか...しかし、電気溶接は熟練の溶接技術者の知識と技術が必要になっている。cv.33で経験を持つ者もいるだろうが、何処の国でも電気溶接の技術は未熟だ、そんな技術者なんて...L-60のライセンスで経験を積めば良いってことか」


「はい、それにドイツから昨年溶接技術の供与と2年契約ではありますが、ドイツ人電気溶接技術者が派遣されていますので、人員は揃っています」


「そうか...よし、装甲は電気溶接にするか!」


「わかりました」


「他にもなにか意見のある奴はいるか?」


 それに同志Cが意見を言う。


「マルティ課長、L-60にはトーションバーシステムという新技術が採用されています。この技術は実戦運用や試験においても乗り心地が良く、操縦性が安定します。それに構造が単純で、が低くメンテナンスが楽であると良いことずくめです」


 その言葉にマルティ課長は直ぐに採用すると了承した。他に意見はないかと聞いたところ、同志Dが意見を言った。


「デメリットにあった防砂フィルターがないことによるエンジンの故障の件や砲塔に換気装置がないことによる発射ガスの充満の件はどうなさいますか?」


「勿論、解決するつもりだ、車体を大型したことでスペースが出来るから防砂フィルターと換気装置を搭載する」


「わかりました」


 そして他に意見はなかった為、全員に向かって新型戦車の開発を決定した。


「よし、その通りに2種類の戦車を作るぞ!」


「「「「おお!」」」」


 そうして二ヶ月で設計を終わらせ、試験車輌数十両が試験に出されたのだが、第二次エチオピア戦争の時と同じく、スペイン内戦に実戦に投入をして評価されることになった。


 そこでカルタヘナ電撃戦において、ドイツのⅢ号戦車と共にソ連製戦車を撃破するのに活躍し、現場の兵士からも高い評価を受けてマルティ達が喜んだのは言うまでもない。


 その後、ムッソリーニからの指示でドイツと日本の技術を足した改良版の製作に取り掛かった。彼等が作り出した戦車がいつ、何処で使用されるかは、誰も知らない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

読んで下さりありがとうございます。

もし面白いと思ったら★評価と♡応援とフォローお願いします。

また、誤字・脱字があるかもしれません。

もし見つけましたら気軽にご報告ください。

233フォロー及び36097PV、★160評価に4レビュー、♡1252応援に41応援コメントありがとうございます。


 読者の皆様はもう解っているかもしれませんが、今話に登場した戦車はM13/40の欠点を改良したM14/41にL-60の新技術を追加した感じですね。それともう一つはセモヴェンテ da 75/18自走砲ですね。


M14/36中戦車


諸元


全長   4.95m

全幅   2.25m

全高   2.39m

重量   14.3t

速度   32km/h

行動距離 200km

主砲   32口径47mm戦車砲47/32

副武装  MG34×4

装甲   14-45mm

エンジン フィアットSPA 8T M40 V型8気筒液冷ディーゼル

最大出力 125hp/1,800rpm

懸架方式 トーションバーサスペンション

乗員   4名



セモヴェンテ da 75/18自走砲


諸元


全長   4.92 m

全幅   2.2 m

全高   1.85 m

重量   14.4t

速度   32 km/h

行動距離 230 km

主兵装  75 mm Da 75/18

副武装  MG34

装甲   10-50mm

エンジン フィアットSPA ディーゼル

懸架方式 トーションバーサスペンション

乗員   3 名

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る