第53話 来年度軍事会議

-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿 会議室-

1936年11月4日


 外交関係の話し合いが終わると次に来年度の軍事についての話しに移った。


「そういえば、来月にワシントン海軍軍縮条約が失効するけど、他国の計画されている戦艦についての情報は何か掴めていたりする?」


 その質問にバルボが答えた。


「はい、詳細まではわかっていませんが各国とも超弩級戦艦の建造が予定されています。ドイツは現在11インチ27.9cm砲戦艦2隻と15インチ38.1cm砲戦艦2隻を建造している為、新たな建造計画は無いようですが、アメリカが16インチ40.6cm砲戦艦を2隻、イギリスが14インチ35.6cm砲戦艦を5隻、フランスが15インチ38.1cm砲戦艦4隻を来年度の議会に提出するようですね。それとは別に日本が16インチ40.6cm砲戦艦を2隻建造しているという情報が諜報部に入っています」


 まあ日本は恐らく16インチ40.6cm…41cm砲は嘘で46cm砲戦艦だろうけどね。あれは本当に一部の海軍関係者しか知らない情報だからね。


 バルボの言葉に大臣達が驚愕の声が漏れる。その後にチャーノが意見を述べた。


「ドゥーチェ、今からでも遅くはありません。新型戦艦ヴィットリオ・ヴェネト級を3隻から元の4隻に戻しましょう。このままでは、砲門数的に我が国が不利になります」


「確かに海軍列強の新型戦艦は脅威ではあるけど、今までの方針を変えるつもりはない。これまで通り1隻の大型空母インペロと、3隻の新型戦艦ヴィットリオ・ヴェネト級のままでいく」


「これから各国が戦艦を建造して、建艦競争の時代になるだろうけど、暫くすれば戦艦の時代が終わり、航空機の時代になると私は予想しているよ。これはあくまでも個人的な意見ではあるけどね」


 他の大臣達は信じていない様ではあるが、バルボに関してはその言葉に満足していた。


「わかりました。ドゥーチェ、空母で思い出しましたが、フランス海軍が我が国に対抗する為か空母2隻の建造を来年度の議会に提出するみたいですね。イギリス海軍ロイヤル・ネイビーも近代化改装を終えた空母※①グローリアスと※②イーグルが地中海艦隊に加わるようです」


「わかった。各国も本格的に軍備拡張して来たという訳ね」


 史実で大戦初期に地中海艦隊に配備されていたグローリアスは1940年にドイツ海軍のシャルンホルストとグライゼンナウに撃沈されてしまった。その代わりの空母として地中海艦隊に配備されたのがイーグルだったから、別に2隻が地中海艦隊にいるのは不自然ではないけどね。


 そういえば、前のカルタヘナ冲海戦でスペイン共和国海軍が降伏したから、史実で起きたパロス岬沖海戦でバレアレスが沈没することがなくなったんだよね。


 それに史実より早くバレアレスが就役していたのは驚いた。カナリアスとほぼ同じ月に就役していたのは、転生者フランコの影響もあると思うけど、これでほぼ夜戦がなくなってしまい、夜戦時のレーダー性能実験が出来なくなってしまったのは正直想定外だった。


 まぁ夜間時に封鎖を突破しようとする人民戦線を支援する船舶を発見するのにかなり役立ったみたいだけどね。


「陸軍の新兵器開発はどうなっているの?」


「はい、中戦車は現在2種が製作中であり、2年もすれば量産が開始するかと、装甲車も同様です」


「わかった。エチオピア戦で問題となった兵站の問題はどうなっている?」


「はい、4トンと6トン軍用トラックの開発をFIATフィアット社に依頼しています。それとリビアの砂漠地帯での運用を想定し、フランスから輸入したハーフトラック※③ユニックP 107とドイツから送られた試作品のハーフトラック※④Sd Kfz 10と共に研究中です」


「わかった。レーションの方はどうなっているの?」


「はい、缶詰工場の目処がたった為、現在各地方の料理を缶詰にする為の研究しています。開発メンバーも先の大戦とエチオピア戦でレーションことが不満だった様で熱心に取り組んでいますね」


「それは良いことだね。料理は兵士の士気にも関わる事だし」


「はい、本当にそうです。飯が不味ければその日のやる気を無くしますから」


 とチャーノが凄い頷いている。


「そうだね。そういえば、対戦車火器とかの開発は大丈夫なの?」


「はい、アディスアベバ攻略時に空挺兵が戦車に苦戦した事もあって、開発研究を進めていましたが、カルタヘナ攻略戦での戦訓でドイツも歩兵が戦車に苦戦したのもあって、以前よりも対戦車火器の共同開発に協力的ですね」


「なら良かった。その他の開発研究も大丈夫そう?」


「はい、殆ど問題はありません」


「そう。空軍の航空機の開発はどうなっているの?」


「はい、各航空機の開発は問題なく進んでいます。三ヶ月もすればFIAT AVIAZIONEフィアット・アヴィアツィオーネ社の戦闘機が初飛行を行う予定です。これは我が国初の単座全金属単葉機となる予定ですので、国防省としても興味深いですね」


「それは良いね。時代は複葉機から単葉機に変わりはじめているから。1940年までに空軍が保有する航空機の大半を単葉機にしたいね」


「できるだけ努力しましょう」


 まあ、史実と同じでイタリアが第二次世界大戦参戦時に保有している航空機の約9割が複葉機って事態は避けたいからね。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明

①グローリアス

グローリアスは15インチ38.1mm連装砲2基搭載のカレイジャス級大型軽巡洋艦として建造された。ワシントン海軍軍縮締結後に姉妹艦のカレイジャスと共に空母に改造された。1940年6月8日にドイツ海軍のシャルンホルスト級2隻と遭遇し、艦砲射撃により護衛艦と共に撃沈した。


満載排水量 26,518 トン

全長    240 m

最大幅   27.75 m

吃水    7.5 m

最大速力  31.42 ノット (56 km/h)(公試時)

航続距離  16ノットで5,860 浬

搭載機   48機


②イーグル

チリ海軍向けにイギリスで建造していたアルミランテ・ラトーレ級戦艦の2番艦アルミランテ・コクレーンを第一次世界大戦時買収し、空母に改造された。第二次世界大戦ではグローリアスの代艦として派遣された地中海で活躍し、地中海艦隊とH部隊に所属して、多くの戦果を上げた。1942年8月11日にドイツ潜水艦U73から4本の雷撃を受け、3発が命中して触雷から8分後に沈没した。


基準排水量 21,600トン

常備排水量 22,600トン

満載排水量 26,500トン

全長    203.5m

水線長   191.1m

最大幅   35.1m

飛行甲板  198.7m×29m

吃水    7.3〜8.8m

機関    蒸気タービン

ボイラー  ヤーロー式重油専焼水管缶32基

主機    ブラウン・カーチス式高速・低速タービン2組

推進    4軸

出力    50,000HP

最大速力  24.0ノット

燃料    2,500トン(常備)

      3,750トン(満載)

航空燃料  67トン

航続距離  18ノット/4,000海里

乗員    834名

兵装    15.2cm(45口径)単装速射砲9基

      10.2cm(45口径)単装高角砲5基

      4.7cm単装高角砲4基

      12,7mm四連装機銃12丁

      53.3cm三連装魚雷発射管2基

舷側装甲  25-114mm

甲板    38mm

主砲砲盾  25-76mm

搭載機   24機


③ユニックP 107

フランスのシトロエン社が1934年に開発して、ユニック社において1935年から1945年にかけて量産された軍用の半装軌車ハーフトラックである。第二次世界大戦中はフランス軍とドイツ国防軍で使用された。


④ Sd.Kfz.10

第二次世界大戦中にドイツ国防軍で使用された小型半装軌車ハーフトラック。牽引能力は1t。デマーク社で原型車両を1934年に作り上げた。その後、改良を続け1937年に開発されたデマークD7型がSd.Kfz.10を与えられた。


全長    4.74 m

全幅    1.83 m

全高    1.62 m

重量    4.9 t

乗員    2 名 + 兵員 6 名

主武装   なし

副武装   なし

速度    53 km/h

エンジン  マイバッハHL 38 または HL 42 6気筒ガソリン

出力    100 hp

懸架・駆動 半装軌式、

      リーフスプリング(前輪)

      トーションバー(装軌部転輪)

行動距離  150 km

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