第52話 混乱する世界情勢
-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿 会議室-
1936年11月4日
その日、これからのイタリアの方針を決める会議が行われていた。会議の途中でチャーノが最近の世界情勢について話した。
「現在、3つの地域で反乱及びクーデターが起こっていますが、今わかっている情報をお伝えします」
「まず、先月末にメキシコで反政府勢力の大規模な蜂起が発生しました。アメリカとの国境周辺を中心にメキシコの3割が反政府勢力の占領下になっているそうです」
「そんな状況なんだ...」
「はい、反政府勢力はカトリック教徒と手を組んでいます。おそらく※①カリェス前大統領の反カトリック的な政策でカトリック教徒の反感を持っていたからですね」
「そうなんだ...」
「彼らはローマ教皇の宣言を無視し、スペイン人民戦線に味方して支援しようとする政府を打倒すると言う大義名分を掲げています。そして、昨日再選をはたしたアメリカのルーズベルト大統領が反政府勢力の支援とメキシコに対する経済制裁を発動する事を表明しました。それに追従する様にラテンアメリカ諸国もメキシコに対して経済制裁を発動しました」
「えっ、アメリカが.......?理由はわかる?」
これが本当なら、アメリカの軍需産業がある程度持ち直して、連合国に
「はい、メキシコの与党である制度的革命党は11年前からアメリカの石油利権を制約する等してアメリカからある程度の反発を受けていましたが、現政権の※②カルデナス大統領が石油と鉄道産業の国有化を数年以内に実行する発言してからは、両国の関係は冷えきり最悪の状態になっていました。アメリカとしては石油利権の国有化を阻止して、アメリカが持つメキシコの利権を保護したいという目的があると考えています」
「なるほどね。メキシコ政府の方はどうなっているの?」
「はい、メキシコ政府は農地改革等の多数の改革で国民からかなり支持されており、また国有化に賛成する者達を中心に志願兵も増えているとのことです」
「メキシコの内戦は長引きそうね」
「はい、各国も同じ結論だそうです」
「まぁそうだろうね...ああ、アメリカで思い出した。アメリカの国務省に先の大戦後に渡米したイタリア人の帰国政策について、外務省から言ってくれる?最近は景気もいいし、労働力が足りていないからね」
「わかりました」
「話を戻すけど、先月末に起こったイラクのクーデターの方はどうなっているの?」
「はい、10月29日にクーデターを起こした※③シドキ将軍は既に④ガージー国王から承認を受けて組閣しました。しかしそれに反発した国防相を殺害し、その結果多数の将校はこのクーデターを支持しないと表明したそうです」
こっちは史実通りか、まあどうせこの後に不満を持った軍部によって暗殺されるから、関わらない方がいいか...
「なるほどね。我が国としては、このクーデターを認めないと声明を出しておいて」
「わかりました」
「最後にスペインの情勢について教えて」
「はい、先月のカルタヘナ陥落以降ですが、人民戦線政府軍は各地で敗走を続けている状態で、2日前に臨時首都バレンシアが陥落しました。人民戦線政府は既にバルセロナに臨時首都を移動させ、徹底抗戦を主張しているそうですが、正直に言ってしまえば半年持つかどうかでしょう」
「そう、わかった。最後に何か言いたい事はある?」
「はい、実は気になる報告がありまして...対外諜報局から報告になりますが、最近ソ連と中国共産党の接触が多いそうです」
「確か中華民国が中国共産党に対して8月から攻勢を強めていたんだよね?」
「はい」
「まあ、しばらくは様子見かな、何かあれば報告して」
「わかりました」
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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を
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補足説明(ウィキペディア等を参考)
①プエタルコ・エリアス・カリェス
メキシコ革命後にソノラ州の知事に就任し、最低賃金を定めたり教育改革等をしたが、カトリック聖職者を追放した。その後は国防相、内務相に就任し、反乱を鎮圧する為に戦っている。大統領に就任すると1925年12月に外国人がメキシコの土地を所有することの制約を設け、石油産業に制約を設けた。
この世界では当初は反政府勢力が彼の味方だったが、カトリック勢力と結びついて以降、これまでの政策上の観点から彼の下を離れている。その後、アメリカ政府に後ろ盾になってもらい反政府勢力に対抗しようとしたが、アメリカ石油業界等が反発した為アメリカ政府は後ろ盾につかなかった。
②ラサロ・カルデナス
20世紀で最も国民の人気が高いメキシコ大統領でポピュリストと評されている。1934年に大統領選に立候補し、圧倒的な得票で当選する。メキシコ政界の黒幕と言われているカリュス前大統領に推されて、傀儡大統領として選ばれたが、就任後にカリュスと側近、腐敗していた労働組合幹部を追放した。1917年革命憲法に記載されて実施されていなかった農地改革等の社会改革に乗り出し、1937年に鉄道の国有化、翌年に石油産業の国有化に踏み切り、アメリカ合衆国が反発した。これを国民は熱烈に支持した。スペイン内戦は人民戦線政府を最後まで支援し、内戦終結後に約10000人の亡命人を受け入れている。
③ バクル・シドキ
アッシリア人虐殺等の反乱鎮圧で功績を上げ昇進していったが、イラク政府の独裁体制が固まるにつれて中枢から排除された。
その後、首相がトルコ訪問しているうちにバグダードに進軍し、ガージー国王がクーデターを承認して組閣を命じられた。クーデター取り消しを画策した国防相を暗殺し軍部の激憤を買い、1937年8月にトルコ訪問で途中立ち寄ったモースル空港で暗殺された。
④ガージー・ビン・ファイサル
第2代イラク国王。イラクのクウェートに対する主権を公式に主張した最初のイラクの元首。
1939年に27歳と若かったが不可解な交通事故で崩御した。一部では当時のイラク首相で親英派だったヌーリー・アッ=サイードによる陰謀説がささやかれている。
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