第51話 カルタヘナ沖海戦

-スペイン:カルタヘナ沖-

1936年10月5日


 カルタヘナ港から距離にして約8海里程離れたところに西独伊連合艦隊が集結していた。そこでは※①ザラ級重巡洋艦の1番艦ザラを旗艦とするイタリア王立海軍、※②ドイッチュラント級装甲艦の1番艦ドイッチュラントを旗艦とするドイツ海軍、そして※③エスパーニャ級戦艦1番艦エスパーニャを旗艦とするスペイン王国海軍が決戦に向けてカルタヘナに向かっていた。


 その中のイタリア王立海軍の旗艦ザラの艦橋にイアキーノ提督が鎮座していた。


「戦艦1隻、装甲艦1隻、重巡6隻、軽巡5隻、駆逐艦17隻か...そのうち装甲艦は実質戦艦と言っていい程だな」


「そうですね。しかし、それにしても凄まじい光景ですね。本国でもこの規模の艦隊はあまり見られません」


「まぁ、そうだな。スペイン共和国海軍の戦力はわかっているか?前回聞いた時に人民戦線側に着いた艦艇が確か7割ぐらいとか言っていたが?」


「はい、スペイン共和国海軍の戦力は戦艦1隻、軽巡3隻、駆逐艦12隻、砲艦1隻、魚雷艇9隻です。また水上機母艦が1隻ありますがまあ、除籍されていたものを修理して使っているようなのでまともに戦力になってないと思いますが」


「なるほど、まあ戦力差からすれば勝てるだろうな...なんなら我ら王立海軍レジーア・マリーナだけでも大丈夫なくらいだ」


「はい、ただフランコ将軍からは、なるべく拿捕してほしいとのことです」


「まあ、そうだろうな。そこのところは努力しよう。なんなら、今回の海戦で沈没した軍艦分の艦船を供与することが出来ないか、本国に聞いてみるとするか」


「そうですね。ここでスペイン王国に恩を売っておくのも悪くないかもしれません」


「確かにな」


 そんな会話をしているとカルタヘナに放った水上機からスペイン艦隊が軍港を脱出したことが伝えられた。


「提督、スペイン共和国海軍が脱出して此方に向かってきているそうです」


「そうか、なら戦力比から考えて此方の戦艦と装甲艦をペアにして敵戦艦に当たらせて、重巡は2隻で組ませ軽巡に当たらせ、残りの軽巡と駆逐艦は魚雷攻撃後に数の力で敵駆逐艦と戦闘をするように連絡せよ。しかし可能な限り拿捕とする様にドイツ海軍とスペイン王国海軍、それと各艦の艦長に伝えて欲しい」


「わかりました」


 そんな会話をしていると甲板見張員から報告があがってきた。


「イアキーノ提督!2隻の艦艇が距離15000まで接近しています!」


「なんだと?」


 それを聞いたイアキーノ提督は直ぐに見張員に質問した。


「どこの国かわかるか?」


「はい、ホワイト・エンサイン英国の海軍旗三色旗フランスの海軍旗が掲げられています」


 その報告を聞いたイアキーノ提督の決断は早かった。


「それなら問題ない。イギリスとフランスはこの海戦の行く末を見守る事と我々の実力を測る目的があるのだろう。それならば、偉大なるローマ帝国の後継たるイタリア王国が誇る王立海軍レジーア・マリーナの精強さを奴等に見せつけてやれ!」


「はっ!」


 西独伊連合艦隊は、爆撃から逃れてる為にカルタヘナの軍港から脱出してきたスペイン共和国海軍に奇襲する様な形で艦隊決戦が始まった。


 スペイン共和国海軍は、まだ軍港から出たばかりで陣形もこれから組むという状況だった。そこに射程距離の長い西独伊連合艦隊の主力艦である戦艦・装甲艦・重巡洋艦の主砲弾が次々とスペイン共和国海軍に襲いかかった。


 空からの爆撃と主力艦による主砲弾だけでも大混乱が発生しているのだが、更に軽巡洋艦と駆逐艦が主砲を放ちながら突撃を仕掛けてくる。スペイン共和国海軍からしたら、悪夢の様な状況であった。


 西独伊連合艦隊の主砲弾が続々と命中弾や至近弾、挟叉とスペイン共和国海軍を捉えているのに対して、西独伊連合艦隊には未だ挟叉すら捉えていなかった。

 

 スペイン共和国海軍を追い詰める様に突撃してきた西独伊の軽巡洋艦と駆逐艦による魚雷攻撃が多数命中し、駆逐艦の何隻かが沈みかかっている。


 戦闘が始まってから1時間した頃にはスペイン共和国海軍で損傷していない艦は一隻もなかった。そんな満身創痍の中、旗艦であるエスパーニャ級3番艦のハイメ1世が弾薬庫に引火したのか爆沈。指揮権を継いだ軽巡洋艦※④ミゲル・デ・セルバンテスの艦長が白旗を掲げ、生き残った艦が西独伊連合艦隊に拿捕された事で、ここにカルタヘナ沖海戦は幕を閉じた。


 この海戦の結果、スペイン共和国海軍は戦艦1隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦5隻、魚雷艇3隻が沈没し、その他の艦も全て中破以上という結果だった。


 一方西独伊連合艦隊は中破等の損傷艦は多数あったが、沈没した艦は一隻もなく完全勝利パーフェクトゲームを成し遂げた。


 拿捕した軍艦を輸送エスコートする部隊と分離したのち、カルタヘナ冲に残った西独伊連合艦隊はカルタヘナに艦砲射撃を加えた。


 制空権と制海権がほぼ敵に渡っている状況で、目の前で唯一の海軍が壊滅したのだ。そのことで籠城する人民戦線政府軍の士気は地に落ち、そこから数時間の戦闘を経てカルタヘナは陥落した。


 そして、当初の目的である海軍基地の洞窟から200トンの金塊をソ連に渡る前に奪取した。ソ連は有償での支援を約束していた為、払える物がなくなった人民戦線政府に支援が停止されたのは、フランコ将軍率いる反乱軍改め王国軍兼十字軍の勝利が決定した様なものであったと後の歴史書で語られている。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウィキペディア等を参考)

①ザラ級重巡洋艦

イタリア海軍が1930年代にワシントン条約の制限下の条約型重巡洋艦として建造した艦級。

船体重量軽減のため船型は前級の平甲板型船体とは異なり、船体後半を甲板一層分低めた船首楼型となっている。


排水量1番艦ザラ基準 11,870t、満載 14,530t

全長 182.8m

全幅 20.6m

吃水 7.2m

機関 ソーニクロフト式重油専焼三胴型水管缶12基(フィウメはヤーロー式水管缶)

+パーソンズ式ギヤード・タービン2基2軸

最大出力 95,000hp(71 MW)

最大速力 33.0ノット(61 km/h)

満載時31.0 ノット(57 km/h)

航続距離 16ノット/8,300 km

15ノット/5,500 km

31ノット/3,100 km

燃料 重油 1,450トン(常備)

2,400トン(満載)

乗員 830~841名

兵装

アンサルド Models 1927 20.3cm(53口径)連装砲4基8門

OTO Models 1927 10cm(47口径)連装高角砲8基16門

ヴィッカーズ Models 1917 4cm(39口径)単装機関砲6~8基6~8門


②ドイチュラント級装甲艦


ドイッチュラント級装甲艦は、第一次世界大戦後、ヴァイマル共和政下のドイツ海軍が、退役する艦の代替艦として初めて就役させた1万トン超の軍艦。本級の登場は列強各国に大きな衝撃を与え、建艦競争を引き起こしている。第二次世界大戦では、初期の対英戦における通商破壊作戦で活躍した。


基準排水量 11,700トン

満載排水量 15,900トン

全長    186.0m

最大幅   20.6m

吃水    7.25m

機関方式  MAN式2サイクルディーゼル機関8基2軸推進

最大速力  26ノット(公試時:28ノット)

航続距離  20ノット/10,000海里

      10ノット/21,500海里

乗員    615~951名

兵装

28cm(52口径)三連装砲2基

15cm(55口径)単装速射砲8基

8.8cm(45口径)単装高角砲3基

(1935年:8.8cm(76口径)連装高角砲3基)

3.7cm(83口径)速射砲4基

2cm(65口径)機関銃10丁

53.3cm4連装魚雷発射管2基

装甲

舷側:60mm(シュペーは80mm)

甲板:40mm(シェーア、シュペーは45mm)

主砲塔: 140mm(前盾)105mm(天蓋)

司令塔:150mm

搭載機 ハインケルHe 60D 2機

→アラドAr196水上偵察機2機

旋回式カタパルト1基


③エスパーニャ級戦艦

米西戦争の敗戦後にスペイン海軍再建を目指したフェランディス海軍法案によって計画されたもので、設計・資材・兵装をイギリスからの輸入に頼って建造された艦級。そのために3番艦「ハメイ1世」は1912年5月に起工ものの、第一次大戦の勃発により資材調達ができず建造が中断している。1919年に再開、1922年にようやく竣工した。


基準排水量 15,700トン

満載排水量 16,400トン

全長 139.9m

水線上 133m

全幅    24m

吃水    7.7m

機関 ヤーロー式重油混焼水管缶12基+パーソンズ式直結タービン(高速・低速)2組4軸推進

最大出力  15,500hp

最大速力 19.5ノット

航続距離 10ノット/7,500海里

乗員 854名

兵装

30.5cm(50口径)連装砲4基

10.2cm(50口径)単装速射砲20基

4.7cm(50口径)単装速射砲2基

装甲 舷側:229mm(水線最厚部)

75~150mm(艦首尾部)

甲板:50mm(機関区上面)38mm(弾薬庫上面)25mm(艦首尾部)

主砲塔:203mm(前盾)

バーベット部:250mm

副砲ケースメイト部:150mm

司令塔:229mm


④ ミゲル・デ・セルバンテス

プリンシペ・アルフォンソ級軽巡洋艦の3番艦。エル・フェロル海軍工廠にて1931年に竣工。1943年~1946年に近代化改装を実施、1964年に除籍後解体処分となっている。


常備 7,475トン

全長 176.6m

全幅 14.5m 

吃水   5.0m 

機関   ヤーロー式重油専焼水管缶8基

+パーソンズ式ギヤードタービン4基4軸推進

最大出力 80,000hp

最大速力 33.0ノット

航続距離 15ノット/5,000海里

燃料 1,680トン(重油)

乗員 564名

兵装 ヴィッカーズ 1923年型 15.2cm(50口径)連装砲3基&同単装速射砲2基

ヴィッカーズ Mark V 10.2cm(45口径)単装高角砲4基

ヴィッカーズ 4.7cm(50口径)単装高角砲2基

53.3cm三連装水上魚雷発射管4基

装甲

舷側:40~75mm

甲板:25~50mm

司令塔:150mm

航空兵装 無し

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