第48話 カルタヘナへの道

-スペイン:王国軍兼十字軍総司令部前-

1936年10月1日


 総司令部から出たCTV総司令官のロアッタ将軍とコンドル軍団のグデーリアン将軍とリヒトホーフェン参謀長がカルタヘナの攻略について会話していた。


「すいません...先程2人が言っていた試してみたい戦術とはなんでしょうか?出来れば、カルタヘナへの進軍に向けて我々も取り入れようと思うのですが」


「わかりました。ではまず私から説明致します」


 とグデーリアン将軍が説明した。


「私が提唱する電撃戦とは、まずヘリや偵察機などで敵の防御が薄い地点を把握してから、その地点を砲兵・爆撃機による砲撃と爆撃で集中攻撃します。それが終わった後に戦車を進軍させ、戦車の後ろを走行兵員輸送車やトラックに乗せた歩兵を随伴させ、突破した後に歩兵がその地点を占領します。そして敵が態勢を立て直す前に司令部等の後方の重要な拠点を制圧し、敵を殲滅して行く感じですね」


「なるほど、※①浸透戦術に戦車等の車両と航空機を足した感じですか...」


「そうですね。来年に出版予定の私が制作した戦車についての本を出しますので、それを読んで頂ければ、電撃戦について詳しくわかるかもしれません」


「そうですか...機甲師団のメッセ少将にも言っておきます」


「はい、是非お願いします」


「話を戻しますが、戦車等が進軍した場所を占領する随伴歩兵は、どうするのでしょうか?確かコンドル軍団には1個装甲師団しか居なかった気がしますが?」


「それは大丈夫ですよ。私がフランコ将軍と交渉して、我々が担当する最前線の2個歩兵師団の指揮権を頂けたので」


 とグデーリアン将軍に変わってリヒトホーフェン参謀長が話した。


「そうでしたか」


「次に私の考えている戦術についてですが、主に3つで構成されています。1つは2つの航空基地を戦闘機と爆撃機に行き来させてることで航空支援を受けやすい態勢を整えます」


「なるほど、カルタヘナまでは180キロ程度であるから航空機の行き来も問題ない訳か」


「はい、次に2つの基地のタイムテーブルを調整して複数の編隊による絶え間ない航空支援を継続させます」


「なるほど、それなら制空権が確実にある状態で進軍でき、敵に反撃する時間すら与えさせないワケだな」


「その通りです。最後に前線の指揮車両に電話や無線を配備して陸空の共同作戦を取りやすくさせます」


「凄いな、それがグラナダ進撃の時にあったら、どれだけ素晴らしかったことか…それに誤爆も減らせそうだな」


「はい、最後の物はその為でもあります」


「因みにそれは何%位誤爆を防げると思うか?」


「そうですね...個人的な試算ではありますが、50%程減らせると思います」


「そうか、なら我らがドゥーチェの意見も含める事で誤爆は100%減らさないとな」


「100%ですか?因みにムッソリーニ統領はどの様な意見を出したのでしょうか?」


「まあ、やる事は簡単だ...味方車両の上面に目立つ模様や国旗を描いておくと良い、まず誤爆されにくくなるぞ」


「なるほど、確かにそれは有効ですね。しかし、何故その様なことが思いついたのでしょうか?」


「なんでも、空軍が味方の軍艦や軍用車両への誤爆が酷かったもんで、それがドゥーチェの元に届いたらしくてな...それでドゥーチェの意見で上空からでも見えやすい様にストライプ模様や国旗を上面に描くようにと厳命が下ったんだ」


「なるほど...それは思い付きませんでした」


「まあ、2つを合わせれば誤爆はかなり減らせそうだな」


「そうですね」


「お話しの途中失礼します」


 とドイツ将校服を着た者が立っていた。それにグデーリアン将軍が応答する。


「※②ロンメル中佐か、どうした?」


 しかし、その名前を聞いたロアッタ将軍が何かを思い出す様に考え始めた。


「.......ロンメルだと?何処かで聞いたことがある様な気がするが...」


「はい、装甲師団を何処に配置転換するのか、総司令部の会議の結果をお聞かせ頂きたく参りました」


「そうか、我々はCTVと共にカルタヘナへ進撃することが決まった。それも1週間以内にだ...今日中に最前線へ行き、2日目に車両等の整備や進軍の準備を整えて王国軍2個歩兵師団と合流後、速やかにカルタヘナに向けてCTVと2方面から進撃する。その時、君に先遣隊を率いて先に進軍して欲しい」


「わかりました」


 その時、何かを思い出した様にロアッタ将軍が顔を上げた。


「ロンメル中佐と言ったな、君は先の大戦で1万以上のイタリア兵を少数の兵を率いて、捕虜にしなかったか?」


「はい、確かにそうですけど、どうかなさいましたか?」


「やはりか、あの時どれほど驚いた事か、何せたった500の兵に2回の戦闘で17000のイタリア兵が捕虜になったんだからな」


 その言葉にグデーリアン将軍とリヒトホーフェン参謀長が驚き、グデーリアン将軍が思わず反射的に言葉を出してしまった。


「君はそんな凄い奴だったのか!?装甲師団じゃ無くてもっと、良い場所があるんじゃないか?」


「大丈夫ですよ。もう戦車運用には慣れましたし、総統閣下からの指名なので異動するつもりはありません」


「そうか.....だから来年に歩兵に関する本を出版するって言ってたのか」


 それを聞いたロアッタ将軍とリヒトホーフェン参謀長が『お前もか』と2人して心の中で呟いた。


「はい」


 そんな一団に機甲師団長のメッセ少将が近づいた。


「ロアッタ将軍、少々お時間よろしいでしょうか?」


「なんの用かなメッセ少将?」


「はい、総司令部で話された内容の通り、我々が駐屯しているグラナダからカルタヘナ方面に進むルートが二通りあるのですが、どちらから進軍するのかロアッタ将軍に決めて頂きたく」


「なるほどな...因みに2つのルートについての説明をしてくれるか?」


「はい、まず一つ目がグラナダ付近の※③グアティクスから進軍するルートで、これは付近に作った臨時空軍基地等から航空支援を受けやすいメリットがあります。距離的にはカルタヘナまで約190kmですね」


「なるほど、2つ目はなんだ?」


「はい、二つ目はグラナダから南に20km離れた沿岸の街※④エル・エヒドからの進軍ルートですね。これは、海上からの艦砲射撃や航空支援を受けられるメリットがあります。こちらのカルタヘナまでの距離は約180kmですね」


 それを聞いたロアッタ将軍は少し考えた後に答えた。


「なるほど、聞いた感じは2つ目の方が良さそうだが、カルタヘナには現在人民戦線唯一の海軍基地があり、そこにスペイン海軍の主力が引きこもっているから、カルタヘナから叩き出されたスペイン海軍との艦隊決戦を考慮した場合、決戦前に砲弾を消費しておくのは、良くないだろう.....1つ目のルートで行こう」


「わかりました。そのように伝えておきます」


「あぁ、それとメッセ少将」


「なんでしょうか?」


「この3人と話しておくと良い、勉強になるぞ」


「はぁ....?わかりました」


 のちにメッセ少将がグデーリアン将軍とリヒトホーフェン参謀長、ロンメル中佐と北アフリカ戦線やロシア解放戦線で共闘する事になるのは、まだまだ先である。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウィキペディア等を参考)

① 浸透戦術

第一次世界大戦後半に産み出され採用されたドイツ軍の戦術。しかし、連合軍による他称であり、当のドイツ軍はとくにこの戦術に名称を付けていない。この戦術においては四つの要素に集約しておりそれぞれ砲撃、突撃隊、敵防御拠点の迂回、敵後方地域の崩壊である。


② エルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメル

実は貴族出身ではない中産階級出身者初のドイツ国防軍陸軍元帥でもある。第二次世界大戦初期の西方電撃戦では第七装甲師団を率いて1日に最大240km進撃し、連合国軍は全く対応出来ず、幽霊師団と呼び恐れた。またイタリア軍を救援する為にドイツ・アフリカ軍団の司令官として派遣された。広大な砂漠に展開された北アフリカ戦線において、巧みな戦略・戦術によって戦力的に圧倒的優勢なイギリス軍をたびたび壊滅させ、敵対する側の英首相チャーチルをして「ナポレオン以来の戦術家」とまで評せしめ、アフリカにおける知略に富んだ戦いぶりによって、第二次大戦中から「砂漠の狐」の異名を付けられた。またロンメルは騎士道精神に乗っ取った戦いで部下に無謀な命令はせず、住民を戦火に巻き込まず、敵捕虜を国際法に乗っ取って丁重に扱い、ドイツ本国からのユダヤ人殺害の命令を無視した。そのおかげか英軍中でもロンメルを尊敬する者が数多く現れた為、「ロンメルを尊敬してはならない」という命令がでる程だった。ノルマンディー上陸作戦では持てる知識を持って大西洋防壁の強化をしていたが、西方軍司令部との対立や物資不足に悩み、当日には妻の誕生日を祝う為に帰国していた最中に上陸された為、ロンメルは電報を受け取った際に「私はどうかしていた。大馬鹿者だ」と嘆いた。1944年ヒトラー暗殺未遂事件が起こると事件への関与が疑われ、平民出身初の元帥であるロンメルをよく思っていなかったヒトラーの側近であるカイテル、ヨードル、ブルクドルフがヒトラーを説得し、偽造文章まで出したことがきっかけで処刑が決められた。10月24日に自宅をゲシュタポが取り囲み、使者として訪れたブルクドルフが自殺して名誉を守り叛逆を不問として国葬で弔うか人民法廷で処刑を言い渡されるかを迫り、自殺すれば家族を保護すると伝えれたことで自殺を決意した。車で郊外まで出ると渡された青酸カリを飲み自殺した。1970年代まではロンメル名将論が定着していたが1970年代以降になると欧米の軍事史では、ロンメルは軍人として戦略的視野や高級統帥能力の面で欠けるところがあったが、戦術的な次元では有能な指揮官だったという評価が定着していった。この世界線では、史実で総統護衛大隊の指揮官になる前にヒトラーの指名でコンドル軍団の第二装甲師団に配属されている。


③ グアティクス

スペインアンダルシア州グラナダ県のムニシピオ基礎自治体で歴史的にアクシタニア地方と呼ばれるシエラ・ネバダ山脈北麓にある地域。かつてはガイウス・ユリウス・カエサルによって植民地とされ、紀元45年にはJulia Gemela Acciユリア・ゲメラ・アッキと呼ばれていた。


④ エル・エヒド

スペイン・アンダルシア州アルメリア県のムニシピオ基礎自治体。ガドル山脈と地中海に挟まれている都市。

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