閑話 ヒトラー総統の回想
1936年5月1日-ドイツ:ベルリン 総統官邸-
国内外からの報告書を確認している途中、転生した時から悩んでる目眩がして、作業の手を止めた。
「総統閣下大丈夫ですか!?今すぐに医者を呼んで来ます」
と同じ部屋に居た※①ルドルフ・ヘス副総統が、私の異変に気付いて声をかけた。
「少し目眩がしただけだから、大丈夫よ」
「しかし、もし総統閣下が体調を崩してしまったら、元の子もありません。少し、お休みを取られたら、どうですか?」
「わかったわ。じゃあ、お言葉に甘えて、少し休むわ」
「わかりました。何かあれば、直ぐにお呼び下さい。表に親衛隊がいるので、何かあれば、其方にお願いします」
「わかったわ」
ヘスが部屋から出て行って一息ついた後、私は昔の事を思い出していた。
「私が転生してから、もう17年も経つのね…」
1918年10月18日-ドイツ帝国:ポンメルン地方 陸軍病院-
ある日、どうゆう訳だかわからなかったけど、直ぐに自身の異変に気付いた。
「目が…見えない」
直ぐに医者が駆け付けてから事情を聞いた。
「なんで、目が見えないの?」
「はい、貴女は3日前に連合国軍によるガス攻撃を受けて、目が見えない状態です」
「…そう。じゃあ、此処は何処なの?」
「はい、此処はドイツ帝国ポンメルン地方の陸軍病院です」
ドイツ帝国…?なんで過去に滅んだ国が…?それと陸軍病院?それにガス攻撃って、1925年のジュネーヴ議定書や1992年の化学兵器禁止条約で禁止された筈でしょう?なんで、私がそれを食らって、目が見えなくなっているの?
私は今起きている現場に訳がわからなくなって、混乱していると、自身の声が違うことに気付いた後、一つの仮説に辿り着いた。
「ねぇ、私の名前は何?」
「あ、はい、貴女の名前はアドルフィーネ・ヒトラー。ドイツ帝国陸軍所属の軍人で階級は伍長です」
「は?」
その後の事は覚えていないけど、その時に私の担当だった医者によれば、数日間発狂したり、精神を病んだりと言った感情がごちゃ混ぜだったらしい。そのおかげで、精神の動揺における軍への復帰不可能と判断されて、大戦終結まで病院暮らしを余儀なくされたが…
でもその症状が治ったのは、今でも鮮明に覚えている。少しだけではあるけど目が見える様になったから、その時に転生して得た自分の体…アドルフィーネ・ヒトラーを鏡で見たからだ。
その時に初めて見た自分の顔にただ一言。
「…かわいい」
鏡に写った私は青く深い瞳に艶のある肩まで伸びた黒髪、貴婦人の様な整った顔をしたドイツ系美人であった。
それ以降、正気に戻って医者達に謝りつつ、治療を続けていたが、中々治らなかった。
しかし、その悩みが終わるのは直ぐだった。1918年11月18日に第一次世界大戦の終結。つまり、ドイツの敗戦である。それ自体には衝撃は起きなかったが、それよりも驚いたのは、その日のうちに視力が回復したのである。
それからと言うもの直ぐに情報収集を始めたが、殆ど史実と変わって無かった。ただ、ヒトラーが女になっている時点で他にも変わっていることはないか調べていたが、年が変わった1919年4月に史実の※②ザバイカル共和国を領土とする極東ロシア大公国が建国されたことで、史実と違う点があることを知った。
私と同じような転生者がいる可能性を考えつつも、その後の情報を収集する中で敗戦したドイツを巡っている中で、ヴェルサイユ条約で課せられた賠償金に苦しむドイツの人々を多くその目に焼き付けた。
史実の様な悲惨なことを起こさないと心に思いつつも、私は苦しむドイツの人々を見捨てられなかった。
そして、私はドイツ労働者党…後の国家社会主義ドイツ労働者党に入党した。ただ私は反ユダヤ主義者でもなければ人種主義のような考え方を持ってるわけでもなかった。史実の
史実と同じ道を辿らない為にも、ドイツの人々が苦しみから解放して、自由にする為にも、ドイツをこんな目にした連合国に復讐する為にも…
そこから数多の権力闘争を乗り越えて首相に就任した。その時に転生前のムッソリーニ統帥と会談を行った。
その時のことは今でも覚えている。何せ出会った瞬間から、私を口説いてきたからだ。最初はムッソリーニが女性になっている時点で転生者かどうかを疑ったのだが、彼女と接する内に本当にムッソリーニが女性になっただけだと思う様になった。
最初の頃は会談で口説いて来たり、駐イタリア大使館からムッソリーニ統帥の熱烈な口説き文句をほぼ毎日送られて来るのを鬱陶しく思っていたのだが、ある日の会談の中で、史実よりもかなり内容が変わった我が闘争の中にある「胸チラは巨乳よりも貧乳の方が乳首まで見えるからエッチ」と言う一文にムッソリーニ統帥が
「ヒトラー首相。貴女とはいい酒が飲めそうだ」
と言ってからは、私の百合趣味がバレてしまったが、そこからは意気投合し、その日は徹夜して2人でどれだけ百合が素晴らしいことかを語り合った。まぁ、お互いに手は出していない。何せムッソリーニ統帥には
だが、そんな時間も長くは続かなかった。
ムッソリーニ統帥に転生した人が現れたからだ。そこから、ムッソリーニ統帥の行動は変わった。リビア油田の開発に兵器の更新、新部隊の創設と重工業化を目指すこと等と言った改革を次々に始めた。
だが以前に会談した際、転生してムッソリーニ統帥が変わっていても、少し転生前の面影は残っている。それを懐かしく思うこともあるけど、同じ転生者として、そして将来連合国と共に戦う同盟国として、彼女が目指すイタリアの近代化を支援していきたいと思っている。
1936年5月1日-ドイツ:ベルリン 総統官邸-
そう思い返していると、ヘスが勢いよく部屋に入って来て、ナチスの敬礼をした後、報告した。
「総統閣下!イタリア王国にエチオピア帝国が降伏しました!本日、アディスアベバを
「そう。報告ありがとね。イタリアに祝電を送って」
「わかりました」
「ああ、それとスペインのフランコ将軍に支援の用意はいつでも整っていると伝えてちょうだい。そして、遠征軍の準備を」
「わかりました」
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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を
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補足説明(ウィキペディア参考)
①ルドルフ・ヘス
ヒトラー政権で副総統を務めた。ヒトラーの著書「我が闘争」の口述筆記を務めた。イギリスと和平しようと1941年、イギリスに航空機で不時着したが、そのまま逮捕されて1944年まで収監された後にロンドン塔へ幽閉され、精神病院で終戦を迎えた。その後、ニュルンベルク裁判で終身刑を受けてシュパンダウ刑務所に収監され1987年8月17日に首吊り自殺するまで同刑務所内で過ごした。
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