第29話 降下せよ!第1空挺師団『フォルゴーレ』②

-エチオピア:首都 アディスアベバ上空-

1936年5月1日

 

 宮殿に向かいアディスアベバ上空を飛ぶSM.79スペルヴィエーロの機内では、第1空挺師団『フォルゴーレ』の中隊長が兵士達に話し始める。

 

「諸君、この戦争で今作戦が初めての実戦って訳ではないが、一年とうして訓練してきた成果が報われる時が来た。この作戦が成功すれば、戦争は終結するだろう。そして終われば首都アディスアベバに一番乗りし、エチオピア皇帝を捕らえた俺達は本国、…いや、世界中の女達からモテること間違いなしだ」


 その言葉を聞いた兵士達は皆、実戦前というのを忘れ笑っていた。その中の一人の兵士が中隊長に質問する


「中隊長殿、本国の女達からモテるのはわかるのですが、なんで世界中の女達からモテるんですか?」


 その質問に中隊長は笑いながら答えた。


「他国には観戦武官からの報告で俺達のことを知るだろう。それ以降は外国のスパイ達が俺達の部隊のことを知ろうと近付いてくるだろうからな、知っての通りイタリア漢相手に男のスパイが近付いても意味がないからな、可愛い女の子のスパイ達が近付いて来るだろうからな、口説き落としてやれ!」


 その言葉に機内にいる兵士達にどっと笑いが起きた。その笑いが続くなか、中隊長は話を続ける。


「話を変えるが、これは投下後の話になる。降下後は、武器が収納された箱が投下されるまで間はブローニング・ハイパワーと手榴弾、ナイフのみでの戦闘となるが、精鋭である諸君ならば投下されるまで耐える事が出来ると信じている。これを終わらせて世界中の可愛い女の子達からモテようじゃないか!」


「「「「おお!」」」」


 そして盛り上がっているところに機長からコックピット近くに居る中隊長に機長から伝えられる。


「もう直ぐ目的地上空です」


「わかった」


「諸君、降下準備よーい!」


 と中隊長の声が機内に響き渡った。


「目的地上空!」


「降下せよ!」


 と次々と兵士達がSM.79スペルヴィエーロから降下していき、目的地上空に無数の白い大輪の花を咲かせた。



-エチオピア帝国:首都アディスアベバ 宮殿付近-

同日

 

 無事にそれぞれの目的地に降り立った空挺部隊はついてすぐに信号拳銃に彩煙弾を装填して上空に発射し、他の輸送機からそれを目印に箱を投下された。そして、空挺兵達は箱の中から武器・弾薬等を取り、宮殿に向かって進軍を始めた。しかし、順調に進んでいた矢先にエチオピア軍の保有する兵器が空挺兵達を苦戦させることになる。


「中隊長殿、もうすぐ宮殿ですね」


「…そうだな」

 

「どうしたんですか?」


「実は昨日に昔馴染みの作戦参謀から、エチオピア軍は4輌だけ戦車を保有しているが、未だに戦場に投入していないから一応気を付けろと言われてな。だから不安になったんだ」


「そうなんですか、でも我等の敵ではないですから大丈夫ですよ」


「…そうだといいんだが」


 そう言いながら宮殿に近づくと突如、数発の砲弾が先頭を進んでいた空挺兵達を吹き飛ばした。


「おい、大丈夫か!」

「負傷兵を下がらせろ!」

「衛生兵!」

「まだ敵の野砲が残っていたのか!」


 等という声が聞こえるなかでも、空挺兵達は直ぐに反撃を始めていた。反撃を続ける中で中隊長は目を凝らして敵陣地を見つめた。そして彼は宮殿の守る為に鎮座する獅子のような兵器に驚愕することになる。


「あれは…※①FIAT3000軽戦車」


「我が国の戦車じゃないですか!鹵獲されたんでしょうか?」


「いや、そんな報告は聞いていない。恐らくエチオピア帝国との関係が良好だった頃に輸出されたものだろう」


「まさか、我が国の戦車に相対することになるとは」


「仕方がないことだな」


「戦場では何が起きるか、わかりませんからね」


「そうだな。どうやら、4輌ともいるようだ」


「7輌だけですが、※②フォードFT−B装甲車もいますね」


「信号弾で航空支援と砲撃支援を要請してくれ」


「はっ!」


 そうして部下が信号拳銃に彩煙弾を装填している間に中隊長は愚痴を呟いた。


「面倒くさいことになったな」



-エチオピア帝国:首都 アディスアベバ 駅-

同日


 駅に周辺に降下した空挺部隊は、エチオピア軍の強固な抵抗を受けて駅に近づけられずにいた。ベルギーの軍事顧問団から訓練を受けていた皇帝親衛隊もそうだが、空挺部隊が最も苦戦していたのはアメリカ黒人義勇兵達であった。


 彼等は、※③ウィンチェスターモデルM1897を装備しており、駅に侵入しようとする空挺兵に次々とその高火力な散弾で損害を増やしていった。


 しかし、それよりも空挺兵に損害を与えていたのが数名の義勇兵が装備していたトンプソン・サブマシンガンである。このサブマシンガンは空挺兵が装備しているベレッタM1934試作短機関銃(MP40)よりも射程が長く、火力も高い。更にドラムマガジンの影響で装弾数も多かった為、空挺兵の被害を増やしていった。

 

「何なんだあの弾幕は!?」

「クソ!全然近付けない!」

「航空支援はまだなのか!」

「誰か、重擲弾筒持っているやつはいるか!」


 と空挺兵から怒号が溢れていた。



-エチオピア帝国:首都 アディスアベバ 陸軍航空隊基地-

同日


 宮殿と駅周辺に降下した空挺部隊が苦戦するなか、陸軍航空隊基地に降下した空挺部隊は既に陸軍航空隊基地を占領下に置いていた。何故、簡単に占領下に置くことが出来たのかというと、最初に数十機の爆撃機と攻撃機から攻撃を受けており、指揮統制が麻痺し効果的な防衛をすることが出来ずにそのまま占領されてしまったからである。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウイキペディア参考)

①FIAT3000軽戦車

イタリアのフィアット社が開発した軽戦車。

全長:4.29 m

全幅:1.65 m

全高:2.20 m

重量:5.9 t

速度:24 km/h(路上)

行動距離:95 km(路上)

主砲:ヴィッカース・テルニ M30 40口径37 mm 砲×1

装甲:6-16 mm

エンジン:フィアット 水冷直列4気筒ガソリンエンジン65 hp/1700 rpm

乗員2 名


②フォードFT−B装甲車

ポーランドで開発された装甲車

全長:3.25 m

全幅:1.55 m

全高:1.73 m

重量:1.35 t

乗員数:2 名

装甲:垂直面 8 mm、上面 3 mm

主武装:7.92mmマキシム08/15機関銃×1

副武装:手榴弾×25

機動力:50 km/h(整地速度)

エンジン:2900cc水冷4気筒直列22.5 HP

懸架・駆動:横置きリーフスプリング、後輪駆動

行動距離:250 km(路上)


③ウィンチェスターモデルM1897

アメリカで開発された散弾銃。

重量:8 lb (3.6 kg)

全長:39+1⁄4 in (1,000 mm)

銃身長:20 in (510 mm)

口径:12ゲージ

作動方式:ポンプアクション

装填方式:チューブ型着脱式5発弾倉

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