第26話 クリスマス攻勢とクリスマスプレゼント作戦③

-エチオピア帝国:エリトリア方面軍 最前線-

1935年12月25日


「突撃する場所はあそこで間違いないな?」


と第3竜騎兵連隊『サヴォイア』の連隊長がベットーニ少佐に訪ねる。


「そうです。しかし、まさか騎兵突撃ができる時が来るとは、人生何が起こるかわかりませんね」


「そうだな。もう一度確認するが、混乱しているエチオピア軍側面を食い破った後に引き返すんだな?」


「はい、一撃離脱を行った後にチャーノ伯が率いる爆撃機隊による爆撃を行うそうです。突撃時に信号弾をあげるようにと言われました。爆撃機のプロペラ音が聴こえたら引き返せとのことです」


「了解した。爆撃に巻き込まれない様にさっさと終わらせないとな、だがこんな機会は二度と起こらないだろうから全力で行くぞ」


「勿論です」


「総員、突撃!」


 連隊長の掛け声と共に第3竜騎兵連隊『サヴォイア』所属の700騎がエチオピア軍側面へ突撃を開始した。エチオピア軍に近づくまでの間に第3竜騎兵連隊『サヴォイア』は※①カルカノM1891カービンと四四式騎銃を騎乗射撃で弾幕を張りながら接近した。

 

 そして、弾幕を打ち尽くした後にカルカノM1891カービンを装備していた騎兵はサーベルを抜き、四四式騎銃を装備していた騎兵は折畳み式銃剣を広げエチオピア軍側面に突撃し、同軍を蹴散らした。エチオピア軍が大混乱になったのは言うまでもない。


 更にそこへ追い打ちをかけるようにチャーノ伯が率いる爆撃隊が爆撃を開始し、爆撃隊の護衛をしていた戦闘機が敵戦闘機からの攻撃がないとわかると機銃掃射をはじめたことでエチオピア軍側面は壊滅した。夕方になるとエチオピア軍は撤退し、クリスマス攻勢が終了した。このクリスマス攻勢の結果、戦後に観戦武官を派遣したフランスはマジノ線の対空能力を強化し、ポーランドは騎兵戦力を増強した。ソ連では人海戦術の研究に大いに役立ったそう。



-エチオピア帝国:イタリア軍占領下 エリトリア方面軍司令部-

同日 午後8時頃


 エチオピア軍のクリスマス攻勢を見事防ぎきったエリトリア方面軍の将官達は司令部に集まりクリスマスと勝利の美酒に酔いしれていた。その中で、ある事を思い出した一人の将官がバドリオ元帥の副官に訪ねた。


「そう言えば、ソマリランド方面軍が攻勢をはじめたらしいが、一日でどの位進撃したのか?」


「はっ、ソマリランド方面軍は機械化旅団や快速師団、騎兵連隊を先頭に快進撃が続いていおり、敵の軽微な抵抗を跳ね除けています。そのあまりの進撃力の速さからエチオピア軍が全く対処が追いついていないそうです。現在までに確認できることは、この半日で30km以上前進したことですかね」

※史実でグラツィアーニ大将の率いるソマリランド方面軍は初日で30km前進したことがあります。


 その言葉に一瞬で司令部にいたほぼ全員の酔いが覚めた。


「たった半日で…30km前進ですか?」


 そう呟いたバドリオ元帥に他の将官達が不安そうに見つめる。


「はい」


「エリトリア方面軍が次の攻勢に取り掛かるまでどれくらいかかりますか?」


「予定では1月10日です」


「そうですか…今回の防衛戦でかなりの武器・弾薬を消費しましたから、しょうがないでしょうね。将兵達も疲れているでしょうし、わかりました。しかし、その勢いだと次の攻勢の時までに※②オガデン州全域が占領出来るでしょうね」


「そうですね…しかし閣下、エチオピア軍にはトルコの援助で建設された※③ヒンデンブルク壁があるので、苦戦するのではないでしょうか?」


「普通ならそうですが、あそこまで勢いづいて居るとなると数日もしない内に突破するでしょうね」


「そうでしょうか?」


「どうやら私の堅物副官は自分と同じイタリア男について理解していないようですね…ノリと勢いがあるイタリア漢ほど強い者はいないです。それに彼らにはドゥーチェからの攻勢命令を受けていますから、女も加わっていますしね。最強ですよ…次の攻勢の時までにドゥーチェにお願いしておきましょうか」



-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿-

1935年12月26日


 首相官邸であるヴェネツィア宮殿に久しい人物が訪ねていた。


「戦争中にお忙しい中、訪ねてすいませんね。ムッソリーニ首相」


「全然大丈夫ですよ。ヒトラー総統」


「これは私からのプレゼントです」


 そう言ってヒトラー総統は親衛隊から受け取った絵を私に渡した。


「これは…私ですか?」


「ええ、開戦演説の時のムッソリーニ首相がとても絵になっていたので」


「そうだったんですか…後で飾らせてもらいます」


 ヒトラー総統から渡された絵を見ると凄い絵が上手だった。ヒトラー総統は人物画は得意ではなかった筈なんだけど…まぁ、転生者だから転生前に絵が上手かったんだろうなぁ。


「勿論どうぞ、画家としてはその方が嬉しいので」


「是非そうしていただきます。そろそろ会談を始めましょうか?」


「そうですね」


 そうして両国の閣僚が座った後に会談は始まった。まず最初に私から話し始めた。


「イタリアといたしましては全面的にそちらの要求を飲もうと思っています」


「そうですか、わかりました。しかし、貴国の条件が多いのですが、譲歩するかドイツが条件を追加するかどちらが宜しいですか?」


 ヒトラー総統から言われた時、私は閣僚達と考えた条件を思い返していた。


①ドイツの溶接技術者をイタリアの技術者への技術指導をしてもらいたい。

②伊独での共同で兵器開発


 うん…多いね。そう思い出して横に座っている大臣達を見るとそれは、覚悟しているようだった。


「これは譲れませんので、そちらが条件を増やしてもらって構いません」


「わかりました。既にこちらで決めていますので、2つ程、よろしいですか?」


「いいですよ。覚悟していることなので」


「そうですか、2人きりにしてくださらないと話せないことなので、そちらの閣僚達を部屋から出てくれませんか?勿論こちらも出させるので」


「わかりました」


 伊独双方の閣僚達を部屋から出てった後に2人で話し始めた。


「そちらの条件とは、なんでしょうか?」


 と私はヒトラー総統に言った。


「まず、第1にスペイン内戦時にそちらが史実よりも減らしても良いので必ず支援してください。特にカラビニエリの派遣をお願いします」


「それはわかっていますが、カラビニエリですか?」


「ええ、占領下の統治なんてしている場合ではないので、その方が彼女が楽になるので」


「わかりました。彼女?」


「いつかわかりますよ」


 …新しい転生者ってことか


「それと話を戻しますが、第2にズデーテン地方の併合時には絶対に邪魔しないでくださいね?貴方には前科がありますから」


 オーストリアの件ね。とっさに動いたとはいえ、彼女の計画を壊してしまったんだから


「わかりました。ですが、その後に介入しますけど」


「二重帝国ですね?」


「ええ、既にドルフース首相と約束しているので」


「国際社会の目がそちらに行くならいいですね。ならばそちらがしやすいように※④カルパト・ウクライナとチェコの共産党が確実に蜂起するようにこちらで工作を仕掛けますので」


「ありがとうございます。でもチェコスロバキアは溜まった物では無いですね」


「同盟国が増えることは喜ばしいことなので」


「そうですか」

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウイキペディア参考)

①カルカノM1891カービン(騎兵銃)

派生型が複数ある。カルカノと同じ規格

②オガデン州

エチオピアの東部にある地方。

③ヒンデンブルク壁

ドイツのヒンデンブルク線を元にトルコの支援を受けて建設された。第二次エチオピア戦争ではグラツィアーニ大将が率いるソマリランド方面軍に数日で攻略された。

④カルパト・ウクライナ

1939年3月14日〜3月16日の間に存在した。チェコスロバキアから独立したが、2日後にハンガリー王国の侵攻を受けて併合された

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