第25話 クリスマス攻勢とクリスマスプレゼント作戦②
-エチオピア帝国:イタリア軍占領下 エリトリア方面軍司令部-
1935年12月25日 午前9時頃
最前線から僅か5kmしか離れていない司令部にも銃撃・砲撃の音が伝わる中、バドリオ元帥と副官が司令部の外で地平線の彼方で繰り広げられている最前線の方を眺めていた。
「ボーノ元帥が道路等を建設する為に大量の資材と大勢の工兵を持ってきていた事に感謝しないとですね。でなければこれだけの防衛陣地を築くことは出来なかったですから」
「そうですね。閣下から言われた時は信じられませんでしたが、まさか現実になるとは…ドゥーチェは未来予知でも持っているのでしょうか?」
「そうかもしれないですね。現在手の空いている部隊はいますか?」
「何を言っているんですか、閣下がエリトリア師団以外全て投入しているではないですか」
「手の空いている部隊はないですか…」
「強いて言うなら3個騎兵連隊位でしょうか」
「そうですか…エチオピア軍は現在波状攻撃をしているんですよね?」
「そうです」
「エチオピア軍の側面から突撃してくれませんかね?」
「王道な戦術ですが、エチオピア軍の7割以上が志願兵や徴収兵なので効果的に聞くでしょうね。なにせ攻める兵士が撤退する兵士に邪魔されて攻撃が上手く行っていないところもあるそうですから、混乱しているところに突撃すれば効果は絶大でしょう」
「そうですか…偵察機でその部分を見つけ出した後に各騎兵連隊に攻撃する場所を伝え、その場所に突撃するように命令をお願いします」
「わかりました」
副官が司令部に戻って行く中、バドリオ元帥はその場に残ったまま呟いた。
「何故ドゥーチェは毒ガスの使用を認めてくださらないのだろうか…」
-エチオピア帝国:エリトリア方面軍 最前線-
同日
日の出と共に攻撃してきたエチオピア軍にイタリア軍は効果的な防衛を続けていたが、最前線の兵士達は第一次世界大戦と変わらない塹壕戦(防衛側)を繰り広げていた。だが、そのなかで苦労していたのは古今東西問わず現場の兵士である。イタリア軍が44年前から採用し運用しているカルカノM1991もあるが、それ以外にも多数あるのだ以下、現場で運用している兵士達の物語である。
「またコイツ故障しやがった!他の機関銃はないのか!?」
そういう兵士が使っていた機関銃は※①ブレダM30軽機関銃である。この機関銃は数えたらきりがないほど長所よりも短所の方が多く、性能が非常に悪かった。それはイタリア兵が複数の装備を選択する余地があった場合は迷わずに他の装備を選んだほどである。
「ある訳ねーだろ!腰につけてる拳銃でも使ってろ!」
またあるところでは
「なんで燃えるんだよ!コイツ欠陥かよ!」
その兵士が使っていたのは※②フィアット レベリM1935重機関銃である。この銃は、ブレダM1937重機関銃(この世界線ではMG34)の生産体制が整うまでの暫定措置としてイタリア軍に正式採用された。この重機関銃は前の※③フィアット レベリM1914も酷かったが弾薬を6.5×52mmから8×59mmRBブレダ弾に変更したことで威力は増したが、その影響で作動方式を変更したことによる自然発火が起こりやすいという致命的な欠点があった。
「味方の戦車隊が来たぞー!」
塹壕に籠もっていた兵士達が後方を見ると、数十輌の豆戦車が迫って来ていた。数十輌のL3軽戦車の中に2輌の試作戦車が紛れていた。
「なんだあの戦車?」
「L3に主砲乗っけて機銃の砲塔があるな」
「おい、※④ハルダウンしたぞ…あれ意味なくね?」
「俺は戦車隊じゃないけど、あれは文句を言った方が良いな」
そんな欠陥兵器ばかりのイタリア軍ではあるが、当然優良な兵器もある。その内の一つは、今年配備されたばかりの※⑤81mm迫撃砲M35である。この迫撃砲は元はフランスのストークブラン社製の81mm迫撃砲をライセンス生産をした物でアメリカ、日本もライセンス生産した優秀な迫撃砲である。
「面白いように敵が吹っ飛ぶな!カエル野郎共の兵器って言うのが気に入らないが、それでも使えるんだったら問題ない!てっー!」
もう既に数え切れない程の波状攻撃の中、イタリア軍、防衛陣地に突撃して来たエチオピア軍の1個中隊がたった数発の砲弾で壊滅した。その砲弾は弾道上を描き、大量の釘状の子弾を広範囲に飛散させほぼ全員を殺傷させた。ドイツから試作提供されたフレシェット弾である。これと※⑥Da75/18modello34の組み合わせが面白い様に合うのであった。
「これが、先の大戦の時にあったらどれほど良かったことか…」
「中佐!敵の機会化部隊です!」
と彼の部下が言う。
彼は双眼鏡で確認した後に言い放った。
「トラックに機関銃乗っけただけの簡易装甲車だ、構わず打て!」
他にはベレッタM1934もあるが、今回の防衛陣地にはあまり、使用されていない。
−エチオピア帝国:イタリア軍占領下 エリトリア方面軍司令部−
同日 午後1時頃
「閣下!ソマリランド方面軍が動きました」
と通信兵が司令部に伝えて来た。
「なんですって!あの屠殺者(グラツィアーニ大将)がですか!攻勢をかける前に私と協議すると言ったではないですか!」
とバドリオ元帥が一人騒いでいたが、副官は冷静に考えていた。
「ドゥーチェが攻勢開始の許可を出して、そのまま意気揚々と出撃したんじゃないですかね…閣下いかが致しましょうか?」
と副官が司令官のバドリオ元帥に訪ねる。
「ドゥーチェが攻勢を許可したんですから、仕方がありません。それよりも、このタイミングでやりますか…恐らくこの攻勢でエチオピア軍の大部分がエリトリア前線に展開していることが本国に伝わったからでしょうね。…私も負けていられません。アディスアベバ占領の名誉は私が頂きますから」
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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を
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補足説明(ウイキペディア参考)
①ブレダM30軽機関銃
口径 6.5mm
銃身長 450mm
ライフリング 4条/右回り
使用弾薬 6.5x52mm カルカノ弾
装弾数 20発
作動方式 反動利用 ショートリコイル方式
全長 1,230mm
重量 10.6kg
発射速度 500発/分
②フィアット レベリM1935重機関銃
口径 8mm
銃身長 653mm
使用弾薬 8×59mmRBブレダ
装弾数 50発(給弾帯)
作動方式 ブローバック
全長 1250mm
重量 18.1kg(三脚含まず)
発射速度 500発/分
銃口初速 792m/s
有効射程 1,000m(最大5,200m)
③フィアット レベリM1914
口径 6.5mm
銃身長 654mm
ライフリング 4条/右回り
使用弾薬 6.5x52mmカルカノ弾(英語版)
装弾数 50発、100発
作動方式 ブローバック
全長 1180mm
重量 17.00kg
発射速度 400発/分
④ハルダウン
斜面等を利用し砲塔以外は隠して車体を防御する戦術。
⑤81mm迫撃砲M35
口径 81mm
重量 61kg
砲身長 1.1684m(約14.4口径)
最大射程 4,050m(軽榴弾:3.2kg) / 1,500m(重榴弾:6.8kg)
仰角 40°~90°
左右射角 約8°
連射速度 18発 / 分
⑥Da75/18modello34
口径 75 mm
全長 1.557 m
運搬時重量 1,852 kg
展開時重量 1,050 kg
俯角仰角 -10 から +45 度
左右角度 50 度
初速 425 m/s
射程 9,564 m
砲弾重量 6.4 kg
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