第24話 クリスマス攻勢とクリスマスプレゼント作戦①

-イタリア領ソマリランド:モガディシュ-

1935年11月16日


 エリトリア戦線の司令官がボーノ元帥からバドリオ元帥に変わった日にモガディシュの港では本国から追加派兵された機械化旅団をベルティ中将が出迎えた。


「ベルティ閣下お久しぶりです」


「久し振りですね。私が快速師団長に就任したとき以来ですから、1年振りですね」


「そうですね」


「来て早々悪いですが、グラツィアーニ閣下が士気高揚の為、機械化旅団でパレードを実施してくれないかと催促されているのですがお願いできますか?」


「勿論です」


 機械化旅団による軍事パレードが終わった後にメッセ准将は、部下達に休息を与えてから、ソマリランド方面軍司令部を訪れた。そして、司令官室の扉の前に立った。


「失礼します。ジョバンニ・メッセ准将です」


「入れ」


 部屋から声が聞こえ扉を開け、司令官席に座るグラツィアーニ大将に敬礼した。そして、グラツィアーニ大将が敬礼を返した後に話し始めた。


「本国からの長旅ご苦労だった。ついて早々仕事を与えて悪かったな」


「大丈夫です。ところで、司令部に入った頃から煙を出す緑色の物があちこちにあるのですが、あれはなんですか?」


「あゝそれは蚊取り線香だな、最初はなれないだろうが、時期に慣れるから大丈夫だぞ」


「そうなのですか」


「あゝそう言えば貴官は、途中でエリトリアによったそうだな、どんな様子だった?」


「そうですね…これは現地で聞いた噂なのですが、消極的攻勢を唱えるエリトリア方面軍司令官のボーノ元帥と積極的攻勢を唱える高等弁務官のバドリオ元帥が司令部で言い争っていると聞きました。侵攻状況もあまり進んでいないようです」


「やっぱりか…今日付でボーノ元帥は司令官を解任されてバドリオ元帥が後任に就いたぞ、何でも本国の考えとあわなかったのが理由らしいが」


「そうなんですか、しかしボーノ元帥とバドリオ元帥の考えが違うのですから、戦線が一時的に停滞しませんか?」


「あゝそう思って本国にエリトリア戦線が停滞する可能性が高い以上、敵に時間を与えるので攻勢開始の許可を求めたんだが、まだ早いと返ってきたわ」


「そうなんですか、今現在の状況をお聞かせくれませんか?」


「良いぞ、戦線は動いていない。敵はこちらが攻めてこないのがわかっているからなのか、大部分の兵力をエリトリア戦線にまわしたらしい。我々がやることとすれば航空隊による偵察と爆撃、快速師団所属の※①ベルサリエリによる偵察任務位しかない。だから、前線の兵士達の士気が下がらない様に週に一度休ませている」


「そうなのですか、ドゥーチェからは何かありましたか?」


「ドゥーチェからは開戦から2ヶ月待機と言われたんだが、今日にもっと長くなるかもしれないと電文が来た。暫く攻勢はないだろうから、長旅の疲れを取る為にじっくり休んで良いぞ」


「承知いたしました。グラツィアーニ閣下、最後に一つだけいいでしょうか?」


「良いぞ」


「国際連盟で現在イタリアに対する経済制裁を巡る決議が始まっていますが、スエズ運河とか大丈夫ですかね?」


「あゝそのことか、本国から来た電文の中にそのことが書いたあったが、その中にはなかったぞ」


「そうですか、安心しました」


「そうだな。それにこの制裁はさほど影響はない。ドイツと二重帝国、トルコに保護国のアルバニア、それに独立保証をしているブルガリアが、これまで通り貿易の継続している。この制裁の抜け道になっているからな」


「まるで世界大戦の時の同盟国のようですね」


「そうだな」


 そういうグラツィアーニ閣下は不敵に笑っていた。



-エチオピア帝国:イタリア軍占領下の最前線-

1935年12月25日


 夜闇に紛れて20万を超える大軍が今か今かとその時を待っていた。そして、日が出てきた時に数少ないエチオピア軍の砲がイタリア軍に向けて砲撃が開始された。後にクリスマス攻勢と言われるエチオピア軍の反撃が始まった。この攻勢に出るエチオピア軍は史実よりも多い軍勢ではあったが、これから進む先に史実にはない強大な防衛陣地が築かれているとは、彼らは知る由もなかった。



-イタリア:ローマ ムッソリーニの自宅-

同日


「ドゥーチェ、失礼します。先程、エリトリア戦線でエチオピア軍の大規模な攻勢が始まったそうです。現在バドリオ元帥が防衛陣地にて攻勢を退けています」


「クリスマス攻勢がきたか…アンナ、ソマリランド戦線のグラツィアーニ大将に攻勢開始の命令、作戦名『クリスマスプレゼント』を出して」


「わかりました」


「それから、グラツィアーニ大将に『長い間待たせてごめんね。最高のクリスマスプレゼントを用意したから、思う存分暴れて良いよ。ただし、どんなことがあろうと民間人の虐殺は禁ずる』と電文で送って」


 その言葉を聞いたアンナは満面の笑みで答えた。


「わかりました」



-イタリア領ソマリランド:モガディシュ 司令部-

同日 午前9時頃


エチオピア軍がエリトリア戦線で攻勢を開始したことがソマリランド方面軍司令部に伝わり、将官・佐官達が集まり会議をしていた途中に通信兵が部屋に入って来た。


「会議の途中すいません。本国から2通、電文が届きました」


「そうか、内容は?」


 とグラツィアーニ大将が通信兵に尋ねる。


「はっ、ソマリランド方面軍に次ぐ全軍を持って攻勢を開始せよとのことです」


 それを聞いた将官達が色めき立っていた。


「それと、ドゥーチェからグラツィアーニ閣下に電文が届いております」


「わかった。見せてくれ」


 電文を副官を介してグラツィアーニ大将に渡した。内容を一読したあとに言葉を呟いた。


「最高のクリスマスプレゼントですよ。ドゥーチェ…」


 そして、グラツィアーニ大将は将官達に向かって言い放った。


「諸君、この3ヶ月もの間耐えてくれて感謝する。そしてクリスマスと言う記念すべき日にエチオピア軍は攻勢を仕掛けてきた。いくら異教徒とはいえ、これは断じて許すべき行為ではない。ソマリランド方面軍全軍に通達せよ!これよりソマリランド方面軍はエチオピア帝国に攻勢を開始する。クリスマスを知らないエチオピア帝国にクリスマスの祝砲をぶっ放してやれ!」


「「「「「「「はっ」」」」」」」


 その4時間後にイタリア領ソマリランドに展開するソマリランド方面軍約10万が越境を開始した。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウイキペディア参考)

①ベルサリエリ

イタリア王立陸軍における歩兵科の一つ。現在では1個旅団と5個連隊が残っている。その殆どは装甲・機械化旅団隷下の部隊。主な役割は偵察。日本では狙撃隊員、狙撃兵と訳され狙撃連隊等と呼称される時もある。

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