第27話 強行軍

-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿-

1935年12月26日


「あ、そう言えば我が国の試作品を使ってくれたみたいですね。観戦武官からの報告も来ましたけど、開発した企業から現場の兵士からの評価も聞きたいと言われていましてね」


「わかりました。直ぐに送るよう手配しておきます」


「ありがとうございます」


 そこで私は気になっていた事をヒトラー総統に聞いた。


「ヒトラー総統、二つよろしいですか?」


「いいですよ。なんでしょうか?」


「1つ目ですが、貴国は我が国から果物類輸入したいそうですが、なんの目的ですか?」


「あ…いや、それはですね。ファンタを作る為ですよ」


 そう言えばファンタって、コカ・コーラ社のドイツ法人がコカ・コーラの代替商品だったんだよね。その過程で果汁入りのオレンジやグレープを使用したらしいし、その時にイタリアの果物を使ったかはわからないけど戦後にイタリアのオレンジの果汁を使ったのがファンタ・オレンジの最初って言われているからね。


「そうだったんですか」


「そうです」


「2つ目ですが、絵が上手いんですね。びっくりしましたよ」


「ありがとうございます。これでも転生前は人物画だけが得意で風景画は苦手だったんですよ」


「そうなんですか、先程貰った絵は私からしたら上手かったですよ?」


「それはこの体のおかげですね」


 この体のおかげ…?そう言えばヒトラーの絵って


「お察しの通りです。ヒトラーは人物画が下手で風景画が得意だったので、ものは試しで前世の記憶通りに人物画を描いて風景画を感覚で描いたら、上手く行ったんですよ」


「良かったですね」


「そうなんですよ」


 と話をしていたら部屋にある時計が鳴った。


「もうこんな時間でしたか、そろそろ終わりますか?それぞれ忙しい身ですから」


「そうですね」


 そうして私はヒトラー総統を駅まで見送った。



-エチオピア帝国:イタリア軍占領下 エリトリア方面軍司令部-

1936年1月10日


「閣下、攻勢の準備が整いました」


「ようやく、この時が来ましたか…師団長達に伝えてください。攻勢を開始せよと」


「はっ、わかりました」


 と副官が司令部から出ていくとバドリオ元帥が呟いた。


「グラツィアーニ大将…貴方の活躍もここまでです。私が先にアディスアベバを占領します」


 それからのエリトリア方面軍は強行軍で進撃し、僅か3ヶ月で史実より早くマイチューまで進撃して、そこでエチオピア軍の精鋭である皇帝親衛隊を壊滅させた。また、グラツィアーニ大将率いるソマリランド方面軍も負けていられないと競争心が芽生え、一日で30km以上前進するなど、どこちらも凄まじい強行軍であった。


 しかし、両方面軍は攻勢を開始してから殆ど休んでいなかった事が祟り。多くの将兵が疲弊し、兵站が伸び切っていた為にほぼ同時期に進撃が止まり4月中旬まで戦線が停滞した。



-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿-

1936年3月30日


 戦線が停滞した為、珍しく通常業務の仕事が数日続いているなか、私はこの3ヶ月にあった各国の重要事項をアンナから報告を受けていた。


「もう既にドゥーチェは知っていると思いますが、日本で2月26日に陸軍の皇道派に所属する青年将校によるクーデターが起こりました。皇道派と対立している統制派の中心人物である永田中将(1935年12月に昇進)がクーデターを察知していたようで、襲撃各所に陸軍と海軍陸戦隊を配備して襲撃を撃退し、逆に反乱軍を包囲しました。その後に天皇による勅命が出されたことで反乱軍は投降しました。下士官兵達は原隊に復帰したそうです。今月に軍法会議が開かれ反乱を起した青年将校らは全員有罪が確定したそうです」


 まさか、※①二・二六事件が一日で鎮圧されるなんて思わなかったんだけどね。なんで海軍陸戦隊が配備されていたのかは知らないけど、永田中将が海軍にも影響力を持っているのかな?いや日本の陸海軍は犬猿の仲だから海軍にも転生者もしくは協力者がいるのは間違いないだろうけど


「次に3月7日にドイツが非武装地帯のラインラントに軍を進駐しました。フランス政府はドイツに対して抗議したそうです」


 史実通りだね。フランス軍がこの世界でも国境から動かなかったから、心配はなかったけど


「そう。ザール地方駐屯軍からは何か報告はあった?」


「いいえ、特にはありません」


「わかった」


「最後に5日前、去年の12月9日から開かれていた※②第二次ロンドン海軍軍縮会議が締結されました。日本は会議中の1月15日に脱退。イタリアも戦争を起こしたことで脱退しました」


そこは史実通りに動いたしそこは問題ないかな


「なるほどね。報告ありがとう」


「どういたしまして」

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウイキペディア参考)

①二・二六事件

1936年2月26日〜2月29日に皇道派の影響を受けた陸軍青年将校等が1483名の兵を率いて蜂起し、政府要人を襲撃したクーデター未遂事件。


②第二次ロンドン海軍軍縮会議

1935年12月9日〜1936年3月25日まで行われた。ロンドン海軍軍縮条約の改正を目的として開かれた会議。日本とイタリアが脱退。



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