第21話 開戦演説

前書き

注意点として記載しておきます。今話は、ムッソリーニの演説ですが、実際に書くにあたって転生者がムッソリーニの様な演説ができるとは思えないので、演説の時だけ転生前のムッソリーニが憑依して演説している設定(18話に記載。意識は有る状態)にしています。

また、史実でムッソリーニがエチオピア帝国への宣戦布告の演説の内容と同じ部分(ウイキペディアに記載)並びにそれに関係のある部分(過去にムッソリーニがエチオピア関連の演説)等も演説の中に含んでいます。それ以外は作者の自作ですが、大目に見てくださると有り難いです。史実でムッソリーニが演説で言った内容は後書きに書いておきます。

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1935年10月2日 午後


 その日、首相官邸の※①ヴェネツィア宮殿の周りには数万人の群衆が集まっていた。それは、私の執務室の世界地図せかいちずからも見える程、数え切れない程の人々が今か今かと待っていた。


「すごい数だね」


「それはそうですよ。今日は、記念するべき日ですから」

と後ろに控えていたアンナが言う。


 前世の私だったら、この人数の前に立つと卒倒してしまうかもしれない。転生してから、こういう場面には何度かあったから慣れて来たけど、私が演説する時、何かに取り憑かれたように演説を始めて大盛況のうちに終わっていることが、この一年間ずっと続いているんだけど、何が原因でそうなっているのかわからない。そう思いながら、最高司令官として軍帽を被り鏡で身だしなみを整えた後に演説するバルコニーへ向かった。


 私がバルコニーに出ると数万の群衆が歓声を上げた。歓声が収まるまで暫く待ったあと、前の様に何かに取り憑かれたように感じた。そして、演説が始まった。


「この数カ月というもの、運命の歯車は我々の澄み切った判断に動かされ、本来それが目指すべき所へ向かってきた。エチオピア帝国に対して我々は40年間忍耐を重ねてきたがそれはもう沢山だ!」


「我が国は、エチオピア帝国に対して宣戦を布告する!」


 その瞬間、数万人の群衆が歓喜の声を上げた。それが落ち着いてきた頃に演説の続きを何処か怒りのこもった低い声で始めた。


「我が国は40年前に屈辱的な敗北を味わった。列強国の恥と言われ、この屈辱にまみれた40年という間に我々は爪を研いできた。我々にはエチオピア帝国にはない最新鋭の兵器、戦術がある。エチオピア帝国にはそれがない。40年前の様に油断さえしなければ、我々は勝利を得ることができるであろう!」


 歓声が上がり、暫くたって治ってきた頃に話を続けた。


「しかし!!40年前と今では戦争への価値観が違う。世界大戦を通して世界は戦争を恐れている。国際連盟は我が国に対して制裁を加えてくるだろう。経済制裁に対してイタリアは規律と制約、犠牲を持って戦い!!軍事制裁に対しては軍事力を持って対抗しよう!!」


 静かに包まれた空気の中、私は演説を続けた。


「1年だ...たった1年の辛抱だ。その1年の辛抱で40年にも渡る屈辱から解放されるのならば、喜んでこの1年間を耐えようではないか?そして1年を耐えた時、我が国に勝利の女神が微笑むであろう!」


 さっき途中で歓声を遮ったこともあってか、歓声がより大きく聴こえてくる。


「そうだ!」

「耐えよう!」


 等といった声も聴こえてくる。そして、勢いに乗っている群衆に更に勢いづかせる為、更に力強く言葉を放った。


「アフリカの獅子を名乗る国にローマの獅子の強さを見せてやれ!そしてエチオピア帝国との戦争で戦死した兵士達の復讐を果たし!敵の首都に祖国の旗を立てるのだ!」


 演説を聴いている群衆の歓声に負けないくらい力強い声で演説を締めくくる最後のセリフを放った。


「この戦争に勝利し、列強国の恥という汚名を返上することで我が国の強さをエチオピア帝国に...いや全世界に示す時だ!!イタリア万歳!」


 その瞬間、群衆のボルテージが最高潮に達して今までに聴いたことのないような大きな歓声が湧き上がった。そして群衆から万歳の声が巻き起こった。


「イタリア万歳!」

「ムッソリーニ万歳!」

「ドゥーチェ万歳!」

「ファシズム万歳!」

「祖国に栄光あれ!」


 その歓声はローマ中に響き、誰もが明るく希望に満ちていたと後に語られている。


 その演説から1時間後にエチオピア帝国とイタリア領エリトリアとの国境でエチオピア帝国側に多数の砲弾が半日の間、豪雨のように降り続けた。翌日砲撃の鳴り響く中、夜が開けぬうちにイタリア王立陸軍3個軍団、約20万人が越境を開始した。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウイキペディア参考)

①ヴェネツィア宮殿

ローマ中心部のヴェネツィア広場に面している宮殿。その歴史は古く中世に教会に任命された枢機卿の住居が元となっている。1451年に枢機卿のピエトロ・バルボ(後の教皇パウルス2世)によって大規模な拡張・改築が行われ、ルネサンス建築初期の特徴を有する複合建築物になった。その後、ヴェネツィア共和国、オーストリアが大使館として引き継いでいった。ファシスト政権のムッソリーニが官邸として利用し、世界地図の間を執務室としていた。現在はヴェネツィア国立博物館となっている。



史実でムッソリーニがエチオピア帝国への宣戦布告に使った演説の所


この数カ月というもの、運命の歯車は我々の澄み切った判断に動かされ、本来それが目指すべき所へ向かってきた。

エチオピア帝国に対して我々は40年間忍耐を重ねてきたがそれはもう沢山だ!


経済制裁に対してイタリアは規律と制約、犠牲を持って戦うだろう。軍事制裁に対しては兵力を持って戦うだろう。

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