第11話 衝突 ワルワル事件

前書き

前話と同じような流れで短いです。

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-イタリア:ローマ-

1934年12月5日


「ドゥーチェ、※①ソマリランド植民地総督から報告が来ています」


 そう言ってアンナが報告書を渡してくる。


「ありがとう」


 渡された書類を一通り読んだ後、私は呟いた。


「軍事衝突ねぇ。アンナ、戦争次官と外務大臣、それと宣伝大臣を呼んでくれる?」


「分かりました」


 暫くすると戦争大臣達が首相室に入って来た。


「皆もエチオピア帝国との軍事衝突については聞いた?」


「はい、既に植民地軍から報告が上がっています。植民地軍と※②アスカリが30名程戦死。エチオピア軍の損害は詳しく分かりませんが少なくても100名程が戦死したと思われます」

と戦争次官が言う。


「そう」


「それともう一つ、負傷したイタリア兵を手術した軍医によりますと、エチオピア軍がダムダム弾を使用したそうです。鹵獲したエチオピア軍の小銃からも、それは確認されております」


「国際法違反ね…チャーノ外務大臣、エチオピア帝国からの反応は?」


「今のところ反応はありません。ただし、諜報員からの報告では、国際連盟に提訴する準備をしているとことです」


「分かった。宣伝大臣は事件の内容とエチオピア軍がダムダム弾使用したことを大々的に国内外に報じて」

 

 まぁ、エチオピアが国際連盟に提訴しても、アフリカの領土問題に関心のない英仏を苛立たせただけだったから、問題もないはず。


「分かりました」


「集まってくれてありがとね。戦争次官以外は仕事に戻って」


 そうして、外務大臣と宣伝大臣が退室していった。


「ようやくエチオピアが挑発に乗ったわね」


「そうですね。4年前から挑発してきたかいがありました」

※イタリアのエチオピアに対する挑発行為:1930年にエチオピア領のワルワルに要塞を築き。1932年にはエチオピア領内に勝手に道路を建設し始めたり等


「英仏は今回の件で動かないから、挑発行動も問題ないと思うよ」


「それはよかったです」


「今回の件は、イタリア国民が反エチオピアで一色になるには十分過ぎる程の出来事だね」


「えぇ元々侵攻賛成派が多かったので、今回の事件が決定打になるでしょう」


「あと1年もないから戦争準備を加速させて、どうせヨーロッパはアフリカの領土問題どころではなくなるから」


「分かりました」


 その後、史実通りエチオピア帝国が国際連盟に提訴したが、国際法違反を犯した国が何を言っていると英仏を苛立たせ、日独米には無視された。そして、今回の事件はイタリア中に広まりイタリア国民が反エチオピア一色になり、エチオピア帝国との戦争に反対する者が居なくなるのであった。後にこの事件は※③ワルワル事件として歴史に乗るようになる。


-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿 世界地図の間-

1934年12月10日


「ドゥーチェ、チャーノ外務大臣が面会を求めています」

とアンナが言ってきた。


「分かった。通して」


「分かりました」

とアンナが言ったあと、直ぐにチャーノ外務大臣を呼びに行った。


 暫くするとチャーノ外務大臣が首相室に入って来た。


「どうしたの?」


「英仏との5年の不可侵条約がまとまりました。来月に締結する予定です」


「ありがとう。随分と早かったね」


「概ね結ぶ事は両国とも決まっていたそうなのですが、ドイツで不穏な動きがあるという事で早まってようです」


「ドイツで不穏な動きねぇ…」


 1935年3月6日にドイツがヴェルサイユ条約を破棄して、再軍備をはじめるのだけど、ヒトラーが転生者だからもっと早く破棄するのかもしれないね。


「ありがとう。それ以外に報告はある?」


「ドゥーチェはもうご存知かも知れませんが、一週間前に日本でワシントン海軍軍縮条約の破棄を閣議決定したとの報告が上がっています」


「そう…」


 そう言えば、ヒトラーが日本にも転生者がいるとか言ってたんだけど史実通りに日本が動いているから政治には影響力がないのかな?


「チャーノ外務大臣」


「はい」


「ドイツと日本に対する諜報活動を強化して」


「分かりました」


 チャーノ外務大臣が出ていった後に私は呟いた。


「永ちゃんって誰なんだろう?」

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気をださせイタリアを勝利に導く〜を

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※補足説明(ウイキペディア参考)

①ソマリランド植民地

現在のソマリアの南部地域です。ホビョ・スルタン国、マジェルテーン・スルタン国、ゲレディ・スルタン国を保護国化した後1908年4月30日にイタリア領ソマリランドと事実上の植民地になった。


②アスカリ

アスカリはアラビア、ペルシア、ソマリ、ヒスワリ語で兵士を意味する。欧米では東アフリカや中東ヨーロッパ植民地軍で軍務に就いた原住民を表す事が多い。欧米の植民地軍に雇われ準軍事組織として重要な役割を担った。イタリア領東アフリカのアスカリは1940年時点でイタリア軍256,000人のうち約182,000人もいた。しかし、イギリス連邦軍がエチオピアに侵攻した際はエチオピア人のアスカリは大部分が脱走したがエリトリア人の殆どのアスカリは4ヶ月後のイタリア植民地軍の降伏するまで忠誠を通した。


③ワルワル事件

エチオピア領ソマリ地方のワルワルにイタリアが要塞を築き道路を建設しエチオピアを挑発し続け1934年12月5日にワルワル近辺の複数の井戸を巡って小競り合いが起きた。この事件でイタリアは反エチオピア一色になった。

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