第8話 創設 第1空挺師団『フォルゴーレ』

-イタリア:ローマ ヴェネツィア宮殿 世界地図の間-

1934年10月2日


「アンナ。ヒトラー総統から頂だいた、日本の四四式騎銃と八九式重擲弾筒の陸軍からの評価はどうだった?」


「はい、戦争省から報告書によれば、試験で良好な結果をだして、すぐに増産するよう命令が出されたそうです。設計図があるので、八九式重擲弾筒の方はエチオピア帝国との戦争にぎりぎり間に合うかもしれませんね」


「そう、日本との交渉で四四式騎銃は中古品が6千丁送られてくるらしいから、恐らくカルカノ弾を使える様に銃身を改造するだけだと思うよ」

※この中古品は1925年の宇垣軍縮で6千馬の軍馬が解役された時に必要がなくなった騎銃。


「しかし、何故ヒトラー総統は騎銃なんて送ったのでしょうか?騎兵は機械化が進んで戦車・装甲車兵等に転換しつつあるというのに?」


「多分我が国が工業化を推し進めて国力を増強させたとしても、全ての師団の完全な機械化は1944年以降だろうからね。だから全ての師団の完全な機械化までの中継ぎみたいな感じかな」


 実際に1942年の独ソ戦に派遣された※①サヴォイア騎兵連隊が欧州最後の騎兵突撃で成功させたのも、当時のイタリアが工業力が足りなくて戦車部隊(少数の軽戦車は派遣されていた)を派遣出来なかったのが理由にあるし。


「そうなんですか…」


「他には軍事関係で報告は上がっている?」


「そう言えば、空軍省から昨日初飛行したサヴォイア・マルケッティ社の開発した旅客機(※②SM.79スパルヴィエーロ)を空軍省が爆撃機に転換の為の指示するのにドゥーチェ空軍大臣兼任の署名が必要だとの事で、今日の書類の中にあった気がしましたが…」


「あったね、そんな書類」


 いや、…待てよ


「アンナ、それって旅客機って言った?」


「はい」


 それが確かなら、輸送機に転換して空挺部隊を作れるかもしれない。実際にイタリア軍の空挺部隊は1941年9月1日に※③フォルゴーレ空挺師団が創設されるまで、イタリア軍に空挺部隊はいなかったと思うし


「その旅客機はそのままでも使えるんだよね?」


「はい、問題なく使用出来ると思いますよ」


「なら、空挺部隊を創設出来るね」


「ドゥーチェ。空挺部隊とはなんですか…?」


 アンナが首を傾げていた。


「簡単に言うとパラシュートで降下して、敵の後方とかを奇襲する部隊だね」


「確かに出来ると思いますし、その旅客機は客席が確か8席あるので奇襲するのだと、かなりの数の航空機で一斉に降下するか、少数精鋭を送るかですね」


「そう言う事だから、戦争省には精鋭を集めてもらって、空軍省には旅客機を輸送機にも転換するって連絡しておいて」


「分かりました」



-イタリア:軍務省-


 会議室には軍務大臣、戦争陸軍次官、空軍次官が集まっていた。


 最初に口を開いたのは軍務大臣だった。


「ドゥーチェから提案された空挺部隊創設の件について、両軍はどう思っていますか?」


 それを聞いて空軍次官が答える。


「空軍と致しましては賛成です。輸送機に関しては旅客機からすぐに転換が出来ると判断し、転換が出来次第陸軍に貸し出す用意が有ります」


 戦争陸軍次官もそれに続く


「陸軍と致しましても、先の欧州大戦での特殊作戦にて、パラシュート降下が効果を発揮したのを踏まえて、創設の動きが一部であったので、陸軍と致しましても空挺部隊創設に賛成です。決まり次第直ぐに精鋭を集め空挺部隊を創設する準備があります」


 それを聞き終えた軍務大臣が答える。


「両軍共に賛成ですか、なら軍務省は空いた人員の補充と使用される物資の予算を財務省から確保するのでお任せください」


-イタリア:シチリア島空軍基地-

11月中旬 早朝


 シチリア島のとある空軍基地には、イタリア各地から集められた陸軍の精鋭が集結していた。そこへ彼らの新しい上官が壇上へ上がった。


 師団長が壇上へ上がったのを確認した後に連隊長の一人が言う。


「総員、師団長殿に敬礼!」


 それに師団長が答礼し団長が話し始めた。


「急に集められたこともあって、諸君等は困惑しているかもしれないが、私も詳しい詳細は知らない。しかし、空挺部隊は現在世界各国で研究されていて、アメリカ軍では既に配備されている。任務は主に敵の後方等にパラシュート降下を行い、奇襲攻撃によって敵を撹乱することだ。恐らく実戦は1年後になるだろう。それまでに輸送機からのパラシュート降下、降下後の戦闘訓練等がこの1年間でやる主な訓練だ。実戦まで僅かしかない、諸君等の活躍を期待する。今日は各地から来たばかりで疲れたであろう。今日は門限まで自由時間とする。以上だ、解散!」


「「「「「は!」」」」」


 師団長の話が終わった後から集められた兵士達が話し始める。


 呑気な兵士達は早速シチリアの町に行こうとする。


「さーて、シチリアの可愛い女の子を朝食に誘うか」


 町に行こうとする兵士達を一人の兵士が止める。


「おい、シチリアって確かマフィアが牛耳っているって言うが大丈夫なのか?」


 町に行こうとした兵士の一人が言う。


「いや、大丈夫だろ。モーリ内務大臣が警察と※④カラビニエリ国家憲兵を総動員して、シチリアマフィアの殲滅作戦をやってるらしいし」


 そんな事は聞いてないと町に行こうとしていた兵士1人が言う。


「え?ちょっと待て、じゃあ町にカラビニエリがいるのか!?ナンパしているところを見つかったらやべぇじゃないか!」


 それを聞いた兵士達を止めていた兵士が言う。


「まあ、カラビニエリに捕まりたくなきゃ大人しくしてろってことだ」


 また、別のところでは兵士が支給された銃器について上官に質問していた。


「中隊長殿。この奇妙な銃はなんでしょうか?」


「ん?あぁそれは新型の短機関銃だな。なんでも、ドゥーチェが書いた絵をドイツから2年契約で派遣された名前は確か…※⑤ハインリヒ・フォルマーっていう技術者が、多少その絵に改善点を追加して試作されたベレッタM1934試作短機関銃史実におけるMP40っていうらしい」


「ドゥーチェが考えた銃なのですか!?ドゥーチェには先見の明があります!これもいずれ活躍する銃になるでしょう!ドゥーチェはカリスマ性があり、語学堪能でスポーツ万能で可愛いのに、更に武器の設計まで出来るとは流石です!」


「おぉ、ドゥーチェの信者だな…まぁ、可愛いのは事実だしな」


「しかし、見た事が無い銃器ばかりですね」


 それを聞いた中隊長が腰の拳銃に片手をそえる。


「あゝこのブローニング・ハイパワーも配備され始めたばかりの拳銃だからな」


「そうなのでありますか」


「あゝ…しかし、師団長殿が実戦は1年後と言っていたということはあの噂は本当のようだな」


「えぇ、恐らくそうでしょうね…。再びエチオピア帝国との戦争を行うという噂は…」


 エチオピア帝国との戦争が刻々と近づいていた。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気をださせイタリアを勝利に導く〜を

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①サヴォイア騎兵連隊

尚話に出てきたサヴォイア騎兵連隊の正式名称は第3竜騎兵連隊『サヴォイア』イタリアが第二次世界大戦時に保有していた16個の騎兵連隊の内の1つ。独ソ戦のイタリア・ロシア戦線派遣軍団でロシア南部戦線に派遣され1942年8月23日にソ連赤軍3個歩兵大隊約2000人に対してサヴォイア騎兵連隊600騎(資料によっては700騎)が「サヴォイア!サヴォイア!」と叫びながら2度騎兵突撃しソ連赤軍3個歩兵大隊の内2個歩兵大隊が壊滅、1個歩兵大隊が敗走して欧州最後の騎兵突撃を成功させた騎兵部隊。


②SM.79スペルヴィエーロ(ウィキペディア参考)

原型機はエアレース出場を目指した8席の旅客機だったが開発が遅れエアレースに出場出来なかった。初飛行したのは1934年10月(日付不明)に初飛行した。時速400kmを超える当時としては高速な機体で当時の世界記録を6つ持っていた。それに高速の大型多発軍用機を欲していたイタリア空軍が興味を持って軍用機(爆撃機)の開発を指示して1936年7月に初飛行した。スペイン内戦時には高速・高性能の本機が無類の頑丈差を誇って5000回以上の出撃して11000トン以上の爆撃を行った。スペイン内戦後には雷撃型も完成しルーマニアではライセンス生産された。イタリア降伏時に社会共和国では雷撃機としてイタリア王国では輸送機として使用された。1952年にイタリア最後のSM.79が退役して中古機の一部がレバノン空軍で輸送機として使用された。

全幅 21.20m

全長 15.60m

全高 4.10m

翼面積 61.00m²

翼面荷重 165kg/m²

自重 7,700kg

正規全備重量 10,500kg

発動機 アルファ・ロメオ126 R.C.34(離昇750馬力)3基

最高速度 430km

実用上昇限界 7,000m

航続距離 1,900km

武装 12.7mm機関砲3門

   7.7mm機関砲2門

爆装時 1,250kg1発


③フォルゴーレ空挺師団(ウィキペディア参考)

1941年9月1日の大戦のさなかに陸軍から選抜された兵士からなる第1空挺師団の編成が開始された。マルタ島占領作戦「ヘラクレス」の為に結成されたが作戦が中止され1942年6月に第1空挺師団から第185空挺師団『フォルゴーレ』に改称されて北アフリカ戦線に投入され第二次エル・アラメインの戦いで英軍との戦力差は兵力差13倍。戦車差は70倍。歩兵用の対戦車装備は火炎瓶と地雷のみという絶望的な戦力差なのにもかかわらず大胆な肉薄攻撃にて部隊が壊滅しながらも2度に渡って英軍(英連邦軍を含む)を退いた。


④カラビニエリ(ウィキペディア参考)

イタリアの国家憲兵。第二次世界大戦時。陸軍、海軍、空軍、黒シャツ隊、と並んで構成する5軍の1つ(現在では4軍)。平時には警察活動を行う。有事には憲兵及び戦闘部隊として機能する。


⑤ハインリヒ・フォルマー

ドイツの小火器設計者。史実でEMPやMP38/40等の短機関銃を設計したことで有名。

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