第6話 新たな大臣の指名
-会議の数日前-
その日の仕事が終わった後、私はグッタリと椅子に
「ドゥーチェお疲れ様です。本日の仕事は終わりです」
「ありがとう。…はぁ」
私は、ようやく終わった仕事に安堵しながらも、これを毎日続けるのかと深いため息が出た。そんな時にアンナが口を開く。
「それにしても、ドゥーチェは凄いですね。こんなにも大臣職を兼任しているのに、全てをこなしているなんて、流石です。他の人がやったら発狂してしまいますよ」
ん?こんなにも…?
「アンナ。因みに私って、いくつ大臣を兼任してたっけ?」
「ドゥーチェが兼任しているのは、総理・内務・外務・
「えぇ…私そんなに兼任してたの?確かに仕事の量が多いなっては思ってたけど…」
私は先程の終わっても、次々と机の上に並べていった書類の山を思い出していた。
「ドゥーチェが忙しいのでしたら、いくつかの大臣職を手放してみたらどうですか?権力集中を図る為に8つの大臣職を兼任しているのはわかりますが、ドゥーチェが倒れてしまったら元も子もないですし」
「手放すねぇ…」
その言葉を聞いて、私は史実のムッソリーニを思い浮かべていた。史実のムッソリーニはマフィア撲滅に力を入れていた。実際にそれは効果を発揮して、マフィア関係の犯罪がムッソリーニ政権になってから、1/10以下にまで下がった程の力の入れようだった。
「内務大臣は残しておくとして、外務大臣についてはどう思う?」
「諜報機関からの報告を考えると、残しておく方が良いかもしれません。ただ外交関係は、殆ど外務次官が行っているので、手放しても大丈夫だと思います。それと内務大臣は※①モーリさんに任せたら大丈夫だと思います」
「あー...モーリは確かに治安関係だと強いけど、地方行政についてはわからないだろうから、内務次官が地方行政を行って、分散させれば任せられそうだね。まぁ、本人次第だろうけど」
そういえば、史実で有名なイタリアの外務大臣って※②ジャン・ガレアッツォ・チャーノだけど、この時は何をしているんだろうか?
「アンナ。チャーノって、今何をやってたっけ?」
「エッダさんと結婚したチャーノさんですか。それなら新聞・宣伝省の次官をやっていますね」
「チャーノの慣れるまでの間は、外務次官に任せて外務大臣やらせるのも良いかもしれないね」
「チャーノさんを後継者にするのですか?」
「いや?まだ決めてないよ」
「そうですか」
後は
「ねぇ、アンナ。統合軍ってできないの?」
「統合軍とはなんでしょうか?」
私はアンナに統合軍について説明する。
「それは確かに良いかもしれませんが、各軍がかなり抵抗するかも知れません」
「かなり時間がかかっても、やってみる価値はあると思うよ」
「そうですね。だったら、軍務・
国防省とか防衛省みたいなものを設立しようってことか
「良いかもしれないね、それだと大臣は誰が良いかな?」
「それはドゥーチェが決めてはどうですか?」
「そう言われてもなぁ…」
と迷っていると片付いた書類の一番上にあった、個人的なお願いをした。リビアの※③イタロ・バルボ総督から、石油調査の進捗状況についての報告書だった。
「バルボに任せてみようかな」
「確かにバルボさんなら適任かもしれませんね」
「まぁ、議会は私が掌握してるから良いけど。大臣達と貴族、軍には、根回しをしないと難しいだろうね...」
「そうですね」
「じゃあ、モーリに内務大臣をやる意思があるか確認をとって他の大臣達は私がやるから、アンナは貴族達と軍に根回しをしておいて」
「分かりました」
アンナが部屋から出ていった。
-会議の続き-
「因みにドゥーチェは、どの大臣職を手放すのでしょうか?」
と法務大臣が言う。
「内務・外務・
「そんなに手放すのですか!?」
と軍務大臣が驚く。
「まあ、もう任せる人は決まっているけどね」
その言葉を聞いた大臣達…得に手放す各省の次官達が固唾を飲んで見守っていた。
「内務大臣には、チェーザレ・モーリに任せようと思っているよ。昨日にモーリから是非やらせて欲しいと連絡がきた。だけど、モーリは地方行政については、わからないことが多いと思うから、内務次官が地方行政を担当して、モーリには警察関係に専念して貰おうと思っているけど良いかな?」
「分かりました。モーリさんなら仕方がないですね」
と内務次官は納得した様に頷いていた。
「外務大臣には、後継者候補の育成の為にチャーノに任せようと思う」
「私ですか!?」
と驚いた様に新聞・宣伝大臣の後ろで控えていたチャーノが驚いていた。
「少し早いけど、外務大臣でわからないことが有れば外務次官に聞くといいよ」
「分かりました」
「それから
「「「「!?」」」」
それを聞いた大臣達が驚く。
「いきなり言われて驚いただろうけど、これにはかなりメリットがあるんだよ。陸海空軍の連絡・協力もしやすくなるし、それぞれで人員にお金、装備等が足りなかったら、軍務に直ぐに連絡することができる」
それに軍務大臣達が反論する。
「確かにわかりますが、軍が納得するとは思いません!」
「それに貴族の方々も納得しないと思います」
「だろうね。だからエチオピア帝国と開戦する時までに軍と貴族達に根回しを完了させる」
「しかし、根回しをしておいても、国王陛下はどうなさるのつもりですか?」
「国王陛下に関しては、私と根回しした貴族で説得するしかないかな」
「しかし、一つの省に統一したとしても、大臣はどうするのですか?」
「バルボに任せようかなと思ってるけど、大丈夫?」
大臣達は何かを察した様に複数回話し合ったあと、全員が賛成した。
「じゃあ、会議は終わろっか、武器の更新の話だったのに大臣の話になっちゃってごめんね」
「大丈夫ですよ。ドゥーチェが頑張っていたのは皆知っているのですから」
軍務大臣がそう言うと、他の大臣達が傾く
「ありがとう」
そうして、その日の会議は終わった。
−ドイツ某所−
1934年8月19日
「民族投票の結果ですが、無事に総統への就任が承認されました。首相いえ...総統閣下」
男が報告を終えると大量の書類と格闘していた深い青い目の黒髪ロングのウェーブがかかった美女が手を止め微笑んだ。
「そう、報告ありがとう。でも、貴方が持っている報告書の枚数を見るに他にも報告があるのでしょう?」
「はい、イタリアに潜り込んでいる諜報員からの報告です」
「イタリア…?確かムッソリーニ統領が兵器の更新をすると言って、会議を開いたのよね?更新する兵器の情報かしら?」
「それもありますが、2つ程…重要な事が話し合われたそうです」
「何かしら?」
「一つが、ムッソリーニ首相が兼任していた内務・外務・
「我が国で言うところの国防省にするということね」
「そのようです」
「後任の人物には誰になったのかしら?」
「内務大臣がチェーザレ・モーリ。外務大臣がジャン・ガレアッツォ・チャーノ。来年に統一する予定の...仮に国防省としましょうか、その大臣にはリビア総督のイタロ・バルボになるそうです。」
「2年早いわね…」
「何か?」
「いや、なんでもないわ。2つ目は何かしら?」
「どうやら、リビアに原油があるそうでその採掘の過程で我が国のユダヤ人を大量に雇用したいようです」
「じゃあ、我が国の技術者と原油採掘に必要な工業製品も贈りましょうか、我が国にはバクー油田を採掘した実績がありますからね。恐らく兵器の更新の件も、我が国の技術者と工業製品、兵器を欲しているのでしょう?」
「採掘に必要な工業製品については、話し合われなかったそうですが、概ねそのようです」
「じゃあ、イタリアに会談を提案しましょうか」
「対価はどうします?」
「リビアで採掘される石油の4割は取るわよ。※④ノイラート外務大臣に連絡を入れといて。それから、日本の永ちゃんにも連絡を入れといて」
「分かりました」
男は部屋から出て行く。
「ムッソリーニに誰か転生したようね。私に続いて3人目か…」
ヒトラー総統は小さく呟いた。
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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリア改革しイタリア軍にやる気をださせイタリアを勝利に導く〜を
読んで下さりありがとうございます。
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また、前回の投稿から2週間開けてしまって、すいません。
先々週に注目度ランキングに乗っていて、驚いて急ぎ投稿しようとは思ったのですが、先週に中間試験があったので投稿できませんでした。7話に関しては再来週に学校行事があるので、来週に投稿ようと思います。不定期では有りますが、これからもよろしくお願いします。
※
①モーリさん:本名チェーザレ・モーリ。シチリアでマフィア撲滅作戦を展開しマフィアを壊滅させ鉄の検事と恐れられた。マフィアはモーリが県知事の時代をモーリの時代と呼び恐れた。
②ジャン・ガレアッツォ・チャーノ:3話の補足説明で出てきたムッソリーニの長女エッダ・ムッソリーニの夫。史実では、1936〜1943年まで外務大臣を務めるも、ムッソリーニが実質的な外務大臣を兼任していて外交特使の方が実態に近かった。イタリアが降伏しムッソリーニが北部でイタリア社会共和国をつくり抵抗していた頃に反ドイツの立場をとっていた為にドイツ軍に逮捕され1944年1月11日に銃殺刑に処された。
③イタロ・バルボ:ファシスト政権で空軍大臣や空軍参謀総長、リビア総督に北アフリカ方面軍最高司令官などの要職を歴任して、②と共にファシスト四天王と呼ばれムッソリーニから後継者に指名されていた。
④ノイラート外務大臣:1932〜1938年までドイツ国で外務大臣を務める。尚、後任はリッベントロップ。
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