第321話 だからなにやってんの?
「待て、落ち着くんだアニオタ君!! この
「倫理――――ペッ!!!!」
一番嫌いな言葉だと言わんばかり、床に唾を吐き捨てるアニオタ。
さっきの言葉が本当ならば、誠司としてもこの娘を庇ってやるいわれはない。
むしろ一族の
だが、たとえそうだったとしても全身を舐め回して良いことには絶対にならない。
そんな方法で解決しても、きっと初代を初めご先祖様全員に白い目を向けられる。
だからここはどうしてでも
「話し合おう!! この
「どくでござるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
「きゃぁああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁっっ!!???」
誠司の説得などまるで聞く耳なく突進してくるアニオタ。
体力が欠片もない誠司は吹き飛ばされ、後ろにしがみついていた油取りはまた変態の餌食となった。
「ベロベロさあこれまでのレロレロ悪事をベロベロ反省してレロンレロン
「ぎぃやあぁぁああぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!!! た、助けてぇジュロウ様ーーーーーーっ!!!! 私……私、汚されちゃうーーーーーーーーっ!! 毒されちゃうーーーーーーーーっ!! 汚物にされちゃうーーーーーーーーっ!!!! うわぁあぁぁああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
「や、やめるんだ、やめたまえアニオタ君!! キミは間違っている!! そんなものは正義でもなんでもない!! それはだたの鬼畜道だ!! 絶対に許されないとこだ!!!!」
「正義――――ペッ!!!! 鬼畜道マンセ~~~~ヘコヘコヘコヘコ!!!!」
「ぎゃぁああぁぁああぁぁ!! マジでマジでそれはやめて!! 助けてだれかぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
とうとう腰まで動かし始めたアニオタ。
泣き叫ぶ油取りに、もはやさっきまでの暗殺者の迫力は微塵もなかった。
だめだ完全に暴走してしまっている。
必死に引き剥がそうとブヨブヨの肉を引っ張っている誠司だが、鬼畜に落ちた変態の力は一介の中年ごときでどうにかできる代物ではない。
どうしよう、どうするか!??
体力もなく戦う力もない、ただの村長なだけの自分が性欲に暴走した若者を止めるなんて、そんな方法があるわけ――――、
その時、一つだけ。
一つだけ方法が浮かんだ。
しかしそれは村の平穏と景観を守る村長として、とても選択しにくい決断。
だけどもそれは――――、
「ふ……ふえぇぇぇぇん……も、もういやぁ~~~~……う……うえぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん……」
変態に襲われて弱々しく泣く娘(悪魔だとしても)を見捨てる理由にはならなかった。
だから、誠司は約束してやった。
アニオタに。
おそらく彼ならば絶対に釣られるだろう最低な約束を。
「アニオタ君っ!!」
「しつこいでござる!! 何を言われてもいまの僕を止めることなど何人たりとも出来はしないでござるっ!!」
ヘコヘコヘコヘコヘコヘコヘコヘコヘコヘコヘコヘコ。
「と、利◯書店!!」
「なぬっ!??」
ヘコヘコヘコヘコヘコヘ――――!?
その名を聞いたアニオタの腰がピタリと止まった。
舌もシュルンと掃除機のコードのように戻ってきた。
そしてギギギギギ……。
なにかの密号で聞いたかのように、ぎこちなく首が回った。
「……とぅ……◯ぅ根書店? なぜ村長がその名を知っているでござるか……?」
「ふ……僕も一応男だからね。若い頃はよくお世話になった」
利◯書店。それは絶倫◯レーで有名な雑貨屋さん。
スナックや駄菓子の品揃えが豊富で、漫画や雑誌も多く取り扱っている。
秘境
「も、も……もし、許してくれるというのなら……どうだろう? うちの村にかの店舗を一つ、誘致すると約束しようじゃないかっ!!」
「――――なっ!??」
どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!
背後に雷が落ちた。
◯根書店といえば全国
関東の覇者と冠されるその一店舗を、この和歌山に誘致するということは、すなわち――――、
「せ、性(勢)力図を塗り変えると言うでござるかっ!??」
「ああ、そうだ。しかもその記念すべき店長にはアニオタ君、キミを推薦すると約束しよう!!」
「な、な、な、なんですとーーーーーーーーーーーーっ!!??」
――働いたら負け――
その言葉を人生訓とし、25年生きてきた。
「そ……その言葉本当でござるか……?」
「ああ、まだ確約はできないが、掛け合うことは約束しよう!!」
そんな彼にいま、心の底から労働意欲が湧き上がる。
いや、労働などという俗的なものではない。
――――神に身をささげる。
そう表現したほうがいいだろう。
「す……すまなかったでござるな。お嬢さん」
「う……うぇえぇぇ……?」
憑き物が落ちたかのような、晴れ晴れとした顔でアニオタは油取りから離れた。
そして乱れた着物をそっと直してあげる。
「……僕はこれから聖(性)職者を目指さねばならなくなったようででござる」
天職。
その神聖なる運命の香りはアニオタにとって、眼前の花一輪よりも、なにより甘い蜜の誘いであった。
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