第320話 お前らなにやってんの?

「じゃ、じゃあ口だ!! 口に入れるしかないだろうっ!!」


 至極当然な選択をする六段。

 クロードは一瞬難しい顔をしたあと「わかった」と返事をし、ぬか娘の顎を掴んで口を開けさせる。

 そして――――ぐもももも……と手を突っ込んでいくと――――、


「げほっ!!?? ごほっ!!??? ――――ガリッ!!!!」

「痛ってぇ痛ってぇっ!????」


 手首まで入れたところで、むせ込んだ彼女に思いっきり噛まれてしまった。

 あわてて手を引き抜くクロード。


「や、やっぱりなっ!! 口だとこうなると思っていたのだっ!! 痛てぇっ!!」

「で、でも口以外だと…………」


 三人は黙ってぬか娘の股間に注目した。

 ――――ガスッ!! ガスッ!!!!


「だからダメだと言っとるんだ!! お前ら本気でぶち殺すぞ!??」

「貴様だっていま見てただろうがっ!!!!」

「お前らとは意味が違う意味がっ!! とにかく馬鹿げた真似は絶対にさせんぞ、ワシにも保護者としての責任がある!!」

「〝ら〟ってなんですか!? ぼ、僕は別にそんな目で見てませんよ!?? この子は異性じゃなく妹だと思ってますから!! ホントですよ!??」

アニオタあのバカはこの世で最も尊しは〝妹〟だと熱弁しとったが?」

「アイツと僕を一緒にしないでくださいっ!??」

「同じようなもんだろうが、いつも一緒にいるだろうっ!??」

「どうでもいいが早く決断しろ!! エロゲ戦士もそろそろ限界だぞっ!??」

「早くと言うが……ど、どうすれば!??」


 そうこうしている間に、ぬか娘の体はどんどん白くなっていき、体温が抜けていく。もはや痙攣すらもしなくなってきた。


「い、いまならやれるんじゃない……?」


 もう一度チャレンジしろと口を指差すヨウツベ。

 そうかな? 言われるままにもう一度手を突っ込んで見るクロードだが、

 ――――ガリッ!!!!


「ぎゃあぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!??」

「……やっぱりだめか……?」


 瀕死の状態でも、かたくなに侵入を拒む歯。

 血だらけの手首を押さえてクロードはうらめしげに六段を睨む。


「だ、だったらアンタが全責任をもって判断しろ。〇〇◯か〇〇◯か。……それとも見殺しにするか。俺はどれでもかまわんぞっ!!」


 仲間殺しか変態か。

 どっちを選んでも最悪な称号しか得られないこの判断。

 六段は究極の三択にダラダラと脂汗を流した。





「うぅぅ……ん」


 冷たい床の感触と、朦朧もうろうとする意識の中、誠司は目を覚ました。

 女の子のすすり泣く声が聞こえる。

 頭を振って身を起こすと、全面石張りの薄暗い地下室。

 たしか自分は落下に巻き込まれて……。

 だんだん思い出してきた。

 そうだ……落ちてヘビに噛まれて――――そこから、どうなった?


「………………………………」


 思い出せない。

 というか、そんな場合ではない光景が目に飛び込んできたので思考を停止したと言ったほうが正しいか?

 地下室はかなり広い場所だったが、その真ん中で、とても言葉にし難いケシカラン行為が行われていたからだ。


「た……助けてぇ……ダメ…………もうこれ以上は……勘弁してぇ~~~~」

「まだまだでござる、まだまだでござる!! チミが〝犯さなかった罪〟はこんな程度で許されるものではないでござるよ!!!!」


 ベロベロベロベロベロレロレロレロレロベロベロベロベロベロレロレロレロレロベロベロベロベロベロレロレロレロレロベロベロベロベロベロレロレロレロレロベロベロベロベロベロレロレロレロレロベロベロベロベロベロレロレロレロ!!!!

 

 ヘビを繋げてロープにし、ぐるぐるに縛られた狐耳の少女。

 そんないたいけな女児の足の裏を、巨大超合金ロボのように目を光らせたアニオタが鼻息を荒くし、涎を撒き散らし舐めまくっていた。


「や……やめ、やめ……て、あ……あ、あひ……あひぃぃぃぃ」

「そこはまだ『あひぃ』でござらん!! 屈辱的な目と涙で相手を睨みつけて『くっ……殺せっ!!』でござる!! その後、それでも続けられる凌辱に対して『あひぃ』でござる!! そこの順番が大事なのでござる!! 必死の強がりからのぉ~~~~~『勝てなかったよ』こそが究極の至高――――熱っいっ!????」


 どこの世界に出しても完全アウトなこの光景と主義主張。

 すべての疑問をいったんぶん投げて、誠司は持っていたライターでアニオタのケツに火を付けた。

 さすがに飛び上がり、油取りから離れてしまう犯罪者。


「だ……大丈夫かい? お嬢ちゃん……?」


 まだ頭がクラクラするが、言ってられない。

 固く丸結びされたヘビ(気絶中)も解いて、少女を開放してあげる。


「ああ……だ、だめでござる村長殿!! その娘は僕の愛人――――もとい、村の少女たちをさらってきた悪魔。難陀なんだの手下でござるぞ!???」

「え!?」


 燃えたケツを床で擦り消しつつ怒るアニオタ。

 油取りはえんえん泣きながらうずくまっている。

 難陀なんだの手下……? この娘が……??

 村を苦しめてきた原因の一つ……?


「僕はいま、その娘を退治(再教育)している最中でござる。邪魔をするとたとえ村長殿とはいえ容赦はできぬでござるぞ!!」


 焼けて穴の空いたズボンから生ケツをプリンと出し威嚇するレロレロベロベロ。

 糸引く涎をしたたらせ、舌をムチのようにくねらせる変質者。


 これは……いったいどっちが悪なのか??

 判断つけられないでいる誠司。

 その裾をつかんで油取りは泣き叫んだ。


「た……助けてください、その男変なんです!! 消えてもすぐ捕まえられるし、刺してもコンニャクみたいに意味ないんです!! 息は臭いし肌は油まみれだし、脇と足の裏ばっかり舐めてくるし、私もう涎でベトベトぉ~~~~~~~~!!」


 え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん。


 そうやって泣き崩れる少女をどうして見捨てられようか。

 誠司はこの瞬間、アニオタと戦う決心をした。

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