第319話 俺たちのほうが……

「お……おい、いいのか……あいつらそのままにしておいて!?」


 いくら相手が悪魔でも、さすがに色々気の毒すぎる。

 罪悪感に押しつぶされそうになっている六段。


「かまわん。あれは見た目少女だが実際は1000年以上生きた悪魔、いわば婆さんだ。ぜんぜん若いド変態アニオタがなにをしようが問題にはなるまい」


 ザキエルの竜巻の中、クロードたちは会話する。


「いや、トシの問題じゃないと思うよクロード……。ていうか……なんて決着の付け方するんだい……。これじゃ情けなくて記録なんか残せないじゃないか……」

「お前の相棒がやったことだろうが、俺は知らーーーーーーん!!」

「……ともかくまずはぬか娘の治療だ。お前、魔力は残っているんだろうな?」

「残っているが、問題はそこじゃない」

「そ、そうだよ。このままじゃヒールは通用しないんだろう。どうするんだい!?」

「……やり方は、無いわけじゃない」


 じっと手を見つめるクロード。

 その目は、なにかを躊躇しているように見えた。





 上階に戻ってきたクロードたち。

 通路には、ついさっき排出したヘビ共がうじゃうじゃうごめいていた。。


「ク、クロード」

「わかっている」


 面倒くさそうに息を吐くと、もう一度ザキエルを唱えた。

 現れたいくつもの少竜巻。

 また蛇たちを吸い込むと、下へと続く穴の上で静止する。

 階下にはアニオタたちがいる。

 正面は外へと続く道。

 クロードはためらわず下へと落っことした。


「お……おいおいクロード……」


 仲間がいるのになんてことを……。

 普通ならそう怒る場面だが、なんとなくそれが正しい選択だと、ちょっぴり共感し言葉を続けられないヨウツベ。

 六段もなんとなく不問にしている。

 しばらくして下から、


「ぎゃぁああぁぁぁぁぁぁっ!! な、なんてことを!! ヘ、ヘビをそんなふうに使っちゃダメだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


 泣き叫ぶ油取りの声が聞こえた。

 アニオタのやつ、毒は大丈夫なのだろうか?

 疑問に思うヨウツベだがケモミミブーストが入った彼はいわば、光る星を手に入れた国民的配管工のごとし。よけいな心配なのだろう。

 それよりも本当に心配すべきはぬか娘だった。


「お、おいしっかりしろ、おいっ!!」


 ぐったりとしている彼女を石床に寝かせて声をかける六段。

 首に刺さったままの針からは、大量の血が流れ、止まらない。

 意識もなく、このまま放っておけば息絶えてしまうのはあきらかだった。


「ど……どうすんだいクロード」

「……選択肢は三つある」


 神妙な顔で三本の指を立てるクロード。


「三つ? そんなにあるのかい??」

「方法は一つだ。しかし手段は三通りあるということだ」

「……どういうことだ、もったいぶらずにはっきり言えっ!!」


 短気に怒る六段。

 クロードはまあ待てと手をかざして説明をはじめた。


「エロゲ戦士にヒールが効かないのはこの鎧があるからだ」

「そのようだな」

「だね。でも呪いを解除する(脱がす)魔法は使えないって言ってなかった?」

「ああ、いまは無理だ。しかし鎧をつけたままでも神聖魔法を通す手段がないわけではない」

「どうするんだい?」


 クロードはぬか娘の腹に指を当てると真面目な顔で言った。


「この〝中〟で魔法を唱えれば跳ね返されることはない――はずだ」

「………………………………いや……中って……?」

「……だから。手段は三つあるって言っただろう」


 黙って顔を見合わせる三人。

 クロードはゆっくり指をぬか娘の口に持ってくると、


「ここが一つ」


 そして一際ひときわ男前の顔で、


「ここに二つある」


 股間を指差し――――ごすっ!!!!

 たところで六段のゲンコツがクロードの脳天にめり込んだ。


「…………な、なにをする……………?」

「なにをじゃないだろうが、動けない女に貴様なにをするつもりだぁっ!!」

「医療行為だよっ!!!!」


 目を飛び出させて怒る六段に、同じく目を飛び出させて言い返すクロード。

 ヨウツベは頭を抱えながら思った。


「ようするに……この三つのどれかから手を突っ込んで、体の中でヒールを唱えると?」

「その通りだ」


 いやいやいやいや……これじゃやっていること下と変わらないじゃないか……?

 てか童◯のアニオタは口でいうほどのことは実際のところしていないと思う。

 それを考えるとヤバいのはむしろ僕たちの方じゃないのか????


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