第313話 上と下で
偽島は聖なる加護をまとった拳銃を。
元一は堕天の弓を引き絞る。
そしてアルテマは
「地獄の業火よ、我の業をその贄とし、零鱗をこの地に具現せよ――――」
『無駄だ、鬼ふぜいが』
ジュロウの体に乗り移り、はたまた共有しているのか、慣れた人の動きで迫りくる。一瞬のうちにアルテマを間合いに入れると――――、
「――――がふっ!??」
幻のはずの聖剣ボルテウス。
しかしその
「なっ!?」
あまりのあっけなさに動けない元一と偽島。
しかしアルテマだけは冷静に、カウンターの一撃を放った。
「ぐうぅ!! ――――
渾身の一撃!!
刃はすんでのところで身を
お返しの
先の攻城戦のときよりもはるかに強く、熱い一撃。
そのはずだった。
「――――ぐはぁ……はぁ? ……はぁ……はぁはぁ……?」
しまった……と顔をこわばらせる。
手から放たれるはずの黒炎は、そのくすぶりすらも見せなかった。
ニヤリと笑う
『言ったであろう虫けらが、貴様の魔法など我のさじ加減でどうとでもなると』
「くそっ……くそ……!!」
わかっていた。
龍脈を閉じられてしまったら自分の魔法は一切使えなくなる。
だからその前に始末をつけると、最初の一撃に全てを賭けたのだ。
しかし結果は、
――――ドゴッ!!!!
「がぁっ!!!!」
血を撒き散らしながら吹き飛ばされ、元一の足元に転がった。
「アルテマっ!??」
抱きかかえる元一。
急所を避けたものの痛みとショックで痙攣しているアルテマ。
それを見た元一は激高し、ありったけの精神力を弓に送り込んだ。
精神力は魔力へと変換され、内に潜む悪魔へと注がれる。
かつて主人を乗っ取った悪魔は、その牙を再び剥こうと色気づくが、主人の限度を超した怒りに縮み上がり服従した。
「貴様ぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁああぁぁああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁっ!!!!」
――――ズドゴンッ!!!!
黒い渦を巻いた、全霊の一撃!!
堕天の弓はその弓身を祭壇とした悪魔の宿木。
異世界との繋がりが絶たれても威力を発揮する。
空間の白を、切り裂くように激進する魔法の矢。
しかし
『ぬんっ!!』
――――ばしっ!!
薙ぎ払うよう掴み取った。
「なっ!??」
そしてくるりと矢を反転させると。
『……身の程知らずが、己の魔力に焼かれて死ね」
――――ドッ――――――――ズドンッ!!!!
あきらかに、人の力を凌駕した破壊力で投げ返してきた!!
神龍の力を込められた悪魔の矢は、白い魔力と反発し、火花を散らしながら元一の胸に突き刺さったっ!!
「――――ぬぐぉ!??」
貫かれ、倒れる元一。
その陰から偽島が飛び出してきた。
アルテマがやられた瞬間、負けを予感した偽島は一瞬だけ逃げる道を探したが、すぐに無いことを悟ると覚悟を決め
『貴様など、それこそ眼中にない』
無視して、アルテマへ視線を落とす
しかし偽島はそれより早くアルテマの体を掴むと、
「ぬぉっ!!!!」
全力の力を込め、自身の体と入れ替えるように後ろへ投げた。
どん!! ゴロゴロザスス――――。
壊れた人形のように転がるアルテマ。
偽島はよろめきながら
まだかろうじて意識があるアルテマへ向かって、
「俺が犠牲になっているうちにやれっ!!
「きひひひひひひひひひひひひひひひひひひひっ!!!!」
ぬか娘の体を乗っ取り高笑う上級悪魔、油取り
クロードは全身にまとう聖なる加護を切って、彼女に向かっていった。
「おやおや~~~~いいのかなぁ~~~~?? この娘、あんたらのお仲間じゃぁないの~~~~?? 傷つけちゃって大丈夫~~~~??」
からかうように余裕の笑みを浮かべる。
だがクロードは問答無用で、
「正義の
――――どすぅっ!!!!
渾身の〝ただのキック〟をその土手っ腹に打ち込んだ!!
なんの遠慮も配慮もない、身も蓋すらもない直進的な攻撃。
「――――ぐほぉ!???」
まさかの一撃にクリティカルをもらってしまう油取り。
目玉を飛び出させながら転がった。
「げほ、ごほっ!! ……な、なんっ!??」
「……なんのつもりでエロゲ戦士を乗っ取ったのか知らぬが……聖騎士たる俺の前で子供殺しを名乗るとは……愚かな……」
ぬか娘は
だからその体には聖なる魔法は一切通じない。
クロードにとっては天敵とも言える相手。
しかし彼はもう知っている。
そんな彼女に対する正しい対処法を。
「……すまんなエロゲ戦士よ。貴様には恨みはない……。……いや、よく考えたらあるけども。ここで問題にするような恨みはない。しかし俺にとって到底許しがたい外道悪魔に乗っ取られてしまった落ち度はある!! だから多少の痛い目は覚悟してもらうぞ」
「な……なんだって? お前……この娘がどうなっても――――」
「〝自己責任〟だっ!! 普通にどついてボコボコにいしてくれるわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
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