第281話 一人じゃ止められなかった
「認めるかぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
政志の伝言を聞いてきた節子。
夕飯時にその話をしてみると案の定というか、やっぱりねというか、元一が過敏に反応した。
ちゃぶ台を叩きつけ、動揺で目が泳ぎ血走っている。
「お、お、お、お、お、お父さんは許さんからな!! そ、そ、そ、そんなまだ
子供のくせにで、で、で、で、で、でぇ~~~~~~~~となどとっ!!」
唾を飛ばし怒鳴ってくる元一にシラけ顔のアルテマ。
節子は幸せそうに微笑んでいる。
「……いや。除霊の礼にと誘われているだけだ。どうしてそれがデートになるんだ……?」
「そのあとアレだろう!? 祭りを案内するとか言われてホイホイついていくつもりじゃろうがっ!! ワシはお前をそんなふしだらな娘に育てた覚えはなぁ~~~~~~~~~~いっ!!」
「……妄想で説教はやめてくれ。……それに私の中身は40過ぎた大人(言いたくないが)だ。子供相手にそんな展開になるわけがないだろう?」
「ぐ……っ!!」
共に過ごせなかった30年。
そのことはできるだけ考えたくなかった元一だが、本人から改めて言われると胸に刺さるものがあった。
「経験は……」
「はぁ……?」
「お前……まさか異世界で……その、ふしだらなその……もごもご……」
―――――ごごごごごごごごごごごごごごごごごご。
「元一……いや、お父さん。……それ以上言うと燃やすよ?」
チリチリと黒い炎を背に
節子は困った顔をして元一をたしなめる。
「そうですよアナタ。いくら親子でも聞いてはいけない話というものがあります。
「?」
「孫がいるんなら早めに紹介してちょうだいね」
――――きらきらきらきら☆彡
目に星をキラめかせる節子。
アルテマは涙を流しながら、
「……だから……なんにもないんだってば……」
隠せるもんなら隠してみたいわ……そう落ち込み、涙を流した。
翌日、占いさんから電話があった。
朝ごはんを食べたアルテマ。
今日も結束荘で戦争の続きをしようと出かける準備をしていたが、なにやら緊急とのことで予定を変更した。
ジルにその旨を伝えると『そちらの問題も重要です。こちらは私にまかせて行ってらっしゃい』とのこと。
占いさんが慌てるなんて珍しいな……。
アルテマは嫌な予感を感じながら彼女の家に向かった。
「……な……なんだ……これは……」
家を出、しばらく歩いたアルテマ。
占いさん家にたどり着くまでもなく、異変に気がついた。
集落がたくさんの人(ほぼ老人)で
「え……っと……なにこれ……?」
ざっと500人はいるだろうか?
占いさん家の周りをザワザワと囲い込んでいた。
呆然とそれを見るアルテマに「こっちじゃ、こっちじゃ」と窓から手招きをされる。占いさんたちだった。
「な……なにこの人たち??」
人混みを器用にくぐり抜け、勝手口からお邪魔するアルテマ。
中には六段とぬか娘、そしてボロボロに全身を掻きむしられたクロードがいた。
「……なにがあった?」
聞きたくなさそうに尋ねるアルテマ。
ぬか娘が涙声でしがみついてきた。
「こ……この人たちみんな『悪魔憑き』の患者さんなんだって!! ど、どうしようこんなに……まだまだいっぱい来てるみたいよ~~~~!!」
「はぁ!?」
「……この間のゾンビ騒ぎで病院患者をまとめて治しただろう。それで余計に口コミが広まって騒ぎになっているようだな」
クロードが自分の携帯を操作して画面を見せてきた。
そこには『現代の秘術。木津村蹄沢集落に伝説の陰陽術師か!?』と派手な見出してネットニュースが載せられていた。
悪魔憑きとは低級悪魔に憑依され身体に悪影響を及ぼしている状態のこと。
不治の病や治りにくい持病などは大体これ。
治すには悪魔を引き剥がして退治する必要があるが、ゾンビ騒ぎの場合、アンデッド化した時点で宿主の精気がなくなり悪魔は離れてしまっていた。
そのあと解呪して身体も回復させたものだから、結果として悪魔憑きの症状も治ってしまっていたというわけである。
それがかねてから評判であった占いさんのお祓いと繋がり、騒ぎになった。
「なんてこった……じゃあこれら皆、除霊して回らないといけないってことか?」
外を見てゾッとする。
みんなそれぞれに『痛い・苦しい』を抱えてワラをもすがる思い。
必死さが突き抜けて違う意味でゾンビみたいになってしまっている。
「どうするアルテマよ。村の者ならともかく……県外からも来ているみたいじゃ。これじゃあ秘密を守るもなにもない。かといって全員を追い返すのも……無理じゃろうしの……」
難しい顔をする占いさん。
アルテマは腕を組んでしばらく考える。
そして決断した。
「わかった、全員治療しよう」
「んんっ!??」
「ただしここじゃダメだ」
そう言うと携帯を取り出し、村長である誠司に連絡をした。
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