第274話 突撃・アルテマ軍②
「バ、バ、バ、バルカス様!! 正門が突破されました!! 同時に守備隊も壊滅、アルテマ軍がなだれ込んでいます!!」
「そんなもの見ればわかるわバカモノがッ!!!!」
報告にきた伝令をどやしつけるバルカス。
完全なる八つ当たりで、指揮官としては最低なうろたえっぷりだが、それに気がつけるほどの余裕もなかった。
守備隊に放たれた二回の攻撃魔法。
城壁をも飲み込む規模で放たれたそれは、一般魔法使いなどに再現できる代物では決してない。
つまり、信じがたいことだが――――あの軍の中には間違いなく本物の暗黒騎士アルテマがいる。
「はぁ……はぁ、はぁ――――っ!!」
そう確信したバルカスは息を荒げ、恐怖に冷や汗を吹き出させた。
「バルカス……様?」
「ええい!! 駐屯兵すべてを正門に集めよ!! 街路を利用して四方八方から取り囲んで殲滅するのだ!!」
「し、しかしバルカス様!!」
「なんだっ!?」
「き……北と南の門からも敵軍が侵入しております!!」
「はぁっ!??」
バルカスは耳を疑った。
正門が破られてから敵部隊が三方に拡散したのは見ていた。
本隊に攻撃が集中しないように陽動として放ったのだろうが、そんな小さな部隊ではとても門を突破することなど無理。なのでそちらは無視して戦力を集中させようとしたのだが――――なぜだ!? なぜ破られた!???
「両門とも、なにやら細工がされていたようです!! なんとか守備兵がこれ以上の進軍を食い止めていますが、正門に回せるほどの余裕はありません!!」
言われずとも見ればわかった。
北も南も、兵力ではこちらが圧倒的上のはずなのに、戦力では互角。
地形効果を加味すれば敵兵の方があきらかに強い。
これはアルテマ固有の統率力。
つまり指揮官としてもすでに負けていた。
「ぐ……と、とにかくこちらも本隊を突撃させろ!! なんとしてでも
伝令と側近にそう告げると、バルカスは踵を返し執務室へと戻っていった。
「アルテマちゃん!! 敵の大部隊が出てきたよ!!」
携帯画面をPCモニターに共有してくれたモジョ。
それを見ながら手に汗握ってぬか娘が興奮している。
城門を破って突撃したアルテマ本隊は、動揺する敵守備隊を一瞬のうちに撃破し、街の中央広場まで進撃していた。
目指すは敵指揮官――――エイミイの情報ではバルカスという男の首である。
バルカスは、ここからでも見上げられる高台の領主館に陣取っている。
そいつを血祭りにあげ、街を奪還するのが勝利条件。
そんな中、アルテマ本隊の前に大規模な敵部隊が立ちふさがった。
「だ、大丈夫アルテマちゃん? 敵…ちょっと多いケド……」
侵入したアルテマ軍は約6000。
それらが街中でさらに拡散し、各施設を各個奪還して回っている。
なので本隊はさらに減って2000ほどになっていた。
対して、現れた敵隊の数はおよそ5000。
広場に面する街路を埋め尽くしている。
正面切って勝てる相手ではない。
『狙うは敵将、暗黒騎士アルテマの首一つ!! ものども!! 俺に続けーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!』
名乗りもなく、間を与えず、
威勢のいい敵隊長がそう号令を飛ばし突撃してくる!!
なかなかの猛将っぷりみたいだが。
――――ピキッ!!!!
それを見ていた元一の頭にド太い血管が十本ほど浮かび上がった。
「
「ゲンさん、いいんだよ!!」
ゆら~~~~りと怒りのオーラを燃え上がらせ立ち上がる元一。
その手には堕天の弓が握られている。
首を取ると言っても、実際のアルテマは
『うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉおぉっ!!!!』
果敢に突撃してくる敵部隊。
『ア、アルテマ様!?』
すこし焦ったエイミイの声も届いてくるが、
「お前らごときがワシの娘に指一本触れられると思うなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
――――ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
奥義『
怒りのままに放たれた無数の魔法矢は
そして上空へと上がり反転すると敵兵それぞれをロックオンし、豪雨のように降り注いだ。
『ぐわぁああぁぁぁぁあああぁぁぁっ!?? ぎゃあぁぁあああぁぁぁぁぁぁっ!?? な、なんだこの魔法矢はっ!?? お、追って――――ぐわぁぁああぁぁぁぁぁわぁぁああぁぁぁぁぁわぁぁああぁぁぁぁぁっ!!!!』
『ぬぐあぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁっ!???(隊長)』
アルテマ軍の中から突如射出された魔法矢の弾幕。
どこにそんな弓兵が!?
疑問を考える間もなく、指揮官もろとも数百人の兵を貫いた!!
混乱する敵部隊。突撃の勢いが止まった。
「やったぁっ、さすがゲンさんっ!!」
大喜びして飛び上がるぬか娘
モジョも興奮してお菓子をモリモリ食べている。
そこに追い打ちをかけるがごとく――――、
「地獄の業火よ、我の業をその贄とし、零鱗をこの地に具現せよ――――」
ごごごごごごごごごご……。
充分に魔力を充填したアルテマ。
病院のときのように、溢れ出した魔力が大人の姿を幻影させている。
「帝国の領土を犯した罪。領民を手に掛けた悪行を、あの世で無限に悔やむがいい――――
――――グゴォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォォォォオオォオムッ!!!!
――――かくして。
リンガース軍カイザーク駐屯兵のほとんどが、アルテマの魔法(一部元一の弓)によって壊滅させられた。
残すは館から出てこない総司令バルカスだけである。
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