第265話 ゆるさん!!
「バカな!? そんな危険な国に娘は囲われていると言うのか!?」
帝国が置かれている状況を聞き、困惑する偽島。
カイギネス皇帝率いる一軍(聖王国方面)こそ押し返しているものの、他の三方面、とくに西の六軍が壊滅的敗退をきっし、前線だったカイザークの街はすでにリンガース公国軍の手に落ちてしまっているとのこと。北と南も雑国軍に苦戦していてジリジリとその領土線を縮めてしまっている。
異世界との交流手段を独占し、国力を強化しようとしている帝国への連携包囲網である。
「もし……帝国が滅んでしまったら真子はどうなると言うんだ!?」
「ありえないことだが、仮定の話をすれば……そうだな、殺されることはないだろうが希少な〝鬼〟としての価値がある。……高い値はついてしまうな」
それは即ち、戦利品として戦勝国のどこかに連れ去られるということ。
帝国以外の国では
そうなってしまったら、呼び戻すどころか見つけることすら困難になってしまう。
「ちょっとまて……? 俺が以前聞いていた話と少し違う気がするのだが……?」
おかしいなと、クロードが首を傾げる。
たしかもう帝国は、ほぼ聖王国の占領下にあったはずだが……?
「戦禍の状況など逐一変わる。気にするな」
「そう言いながらなぜ目を背ける? アルテマよ」
「ぬおおぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
詰め寄るクロードにすっとぼけるアルテマ。
そして突然吠えだしたアニオタ。
アルテマはビクッと跳ねて、
「な、な、な何だっ!? いきなりどうした!?」
「どうしたではござらんっ!! そうなればルナちゅわんは!? ぼ、ぼ、僕の嫁(妄想)のルナちゅわわわわんはどうなるでござるかっ!!」
「ど……どうなるって……それは……」
「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!! アレでござるなっ!! 敗北女戦士定番負けイベント発動でござるな!! それだけは!! それだけは許さんでござるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
一部の界隈にだけ通じる淫語を叫び、血の涙を流すアニオタ。
しかし叫びとは裏腹に、口はどこかニヤけて息も荒い。
アルテマはかつてクロード(黒幕はアニオタ)にやられかけた経験を思い出し、苦い顔をする。
「ん~~……ま。ルナはあれで一流の戦士だ。よほどの無茶でもしないかぎり敵に捕まるなどヘマはしないと思うが……」
『ああ……そのことなんですけれどアルテマ』
心配ないと言いかけるアルテマに、ジルから曇った声がかけられた。
「はい? どうしたのですか師匠?」
『実は……』
「ル、ル、ル、ル、ル、ルナちゅわわわわんの部隊が壊滅したですとぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!????」
ジルの報告によると陥落したカイザークの街。そこの守備についていたのがルナの所属する六軍第三中隊であったという。
本軍の劣勢で補給線が維持できなかったのが敗因であったらしいのだが……。
「い、い、い、言わんこっちゃないでござるっ!! そ、そ、そ、それでルナちゅわわわんは!? ちゅわわわわわわんはどうなったのでござるかっ!?? か、か、か、壊滅ということは、ま、ま、まさかっ!??」
最悪の事態を想像して真っ青になり、涙と鼻水を撒き散らすアニオタ。
そんな汚い顔面をアルテマは必死で押し返す。
「お、お、落ち着け……!! 壊滅はしたが全滅したわけじゃない。残った帝国兵は殺されず捕虜になっているはずだ!!」
ルナは異世界との架け橋(とくにアニオタ用)になりうる重要な人材。
手違いで前線に配置されてしまい、帝国も呼び戻そうとしていた。
「ルナがリンガース軍へ連れ去られたという情報は、すでに我軍の諜報兵がつかんでいる!! 居場所もわかっている!! 救出する作戦もいま練っているところだ!! ――――ですよね師匠っ!??」
臭い涙と涎でベチョベチョにされながら確認するアルテマ。
ジルは『もちろんです』と返事を返してくるが、
「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!! やっぱりアレでござるな〝くっ
「わ、脇をレロレロってなんだ!?」
意味不明なことを叫ぶアニオタに、聞き捨てならんと立ち上がる偽島。
その意味をクロードが詳しく説明してあげる。
「な、な、な、なんだと!? 異世界では囚われの美少女はみんな飢えた汚い男にレロレロされるだと!?? そ、そ、そ、それではま、ま、ま、真子は!?」
「真子どのもレロられた後でござるよきっとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぬあぁっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
転げ回るアニオタ。
「ば、バカなぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
偽島も同じく転げ回った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます