第229話 いなくなったアルテマ①
鉄の結束荘、ぬか娘とモジョの共同部屋にて。
「……『サンダーバード2号ブリキ仕立て』――――35点……やっぱりな」
ぽ~~~~い、からかっしゃん。
――――ざすーーーーーーーーっ!!!!
「あああ、私のバージル~~~~!!」
予想通りの魔素量に落胆して
それをスライディングキャッチしようとしてギリ間に合わなかったぬか娘。
はぁ~~~~……とため息をついて落胆しているアルテマに、モジョは自分のお宝も渡しながら肩に手を置く。
「まぁ、それでも地道に溜めていくしかないだろう……。いまのところコレ以外方法がないのだから。ほら、わたしのワンダース◯ンなんかどうだ?」
「わかっている。……わかっているが、これじゃ満タンになるまでどれだけ時間がかかるか――――25点」
「ぐ……っ!! ま、まあ……ともかくもっと目ぼしい物を持ってこよう。……なるべく思い入れの強い物がいいんだったな……」
無慈悲な採点に、わりと強めに傷つきながらも㊙と貼り紙されたロッカーを
ぬか娘も隣のガラク――お宝部屋へと悔しそうに走っていった。
「よし!! じゃあ今度はこれでどうアルテマちゃん!!」
ツバメのゴムとばしグライダー 20点
おきあがりポロンちゃん 30点
ハイテク多機能筆箱 25点
りんごおしゃれセット 15点
キャベツ畑人形 20点
フラワーロック 10点
「――――ぐはぁっ!!??」
自信満々で持ってきたお宝だったが、100点どころが50点にも届かず撃沈するぬか娘。
入れ替わるように今度はモジョが品物を広げる。
「……わたしのはそんなホコリを被った骨董品とは違う。現代ホビーの礎となった歴戦の猛者共を食らうがいい……!!」
ゲームウォッチシルバー・バーミン 35点
ゲームウォッチゴールド・マンホール 35点
ゲームウォッチワイドスクリーン・オクトパス 35点
ゲームウォッチマルチスクリーン・ドンキーコング 45点
ゲームウォッチパノラマスクリーン・スヌーピー 35点
「――――ぐっはぁーーーーっ!! な、なぜだぁぁああぁぁぁっ!!」
ぬか娘よりはマシなものの、こちらも見事撃沈する。
「な、なぜと言われてもな……実際、わずかしか魔素が出てこないんだ……しょうがないじゃないか……」
ちなみにこの点数は、完全にアルテマの感覚で適当にいってるだけであって100点だったら満タンとかそういうものでもなく、あくまで満足度を数値化しただけのものらしい。
「ぐむむ……しかし、これらはゲーマーならばみな神棚に飾って拝んでもいいほどの一品、わたしだってずっと大切に保管していたんだぞ……」
「わ、私だってそうだもぉん……ううう……おきあがりポロンちゃん……まさかの30点だなんてヒドイよう……大切にしてたのにぃ……」
解せぬ、と睨んでくる二人。
アルテマは困った顔で説明する。
「……いや、これでも凄いと思っているぞ。本当なら100年、200年と思いを溜め込んだ骨董品でようやく50点ぐらいだからな……たかだか10数年で、よくぞここまで溜め込めるものだと感心している……。お前たちのお宝への思いは、異世界の呪術師の呪いすら凌駕しているかもしれんな……」
「……まぁな」
「えっへん。まぁそれほどでもあるケドね」
祠の中で
すべてはいい具合に進んでいる、と。
老人といい、異世界の聖騎士といい、うまい具合に
自分を仕留めようと、隠れて張り巡らせている陣にも気付いている。
――――アマテラスの結界。
アルテマよ。鬼の逆臣よ。
我の安息のため、お前にはもう一つ試練を味わってもらうぞ……。
結局――――日が暮れるまで地道な魔素吸収は続いた。
そして翌朝。
「――――はっ!??」
深夜まで続いた作業に疲れ果て、いつの間にか眠っていたアルテマ。
オンボロソファーに移されて、身体には夏布団がかけられていた。
側にはぬか娘とモジョが、板の上で折り重なるように寝ている。
その隣には、まだ吸収していないお宝が山ほど積まれていた。
アルテマはそれを見て感謝するとともに、頬がコケる思いでもあった。
食事を吸収するにも体力がいる。
それと同じく、魔素吸収にも精神力を使うからである。
一日、出来て15~20個くらいが限界。
しかも後になればなるほど吸収速度が遅くなる。
昨晩の最後なんて『ダッコちゃん人形』から20点分の魔素を絞り出すだけで2時間もかかってしまった。
それでも溜まった魔素は、キャパシティの1割程度。
全回復まではたして何日かかる……いや、それより品物は足りるのだろうか……。
色々心配していると、
――――タランタラ~~。タランタラ~~。タランタラッタラッタタッタ。タランタラ~~。タランタラ~~。タランタラッタタン――――……。
モジョの携帯が鳴りはじめた。
手に取り確認してみると画面に『アニオタ』と表示されている。
本人を起こそうかとも考えたが、二人もきっと疲れている。
勝手に出ても問題ないだろうと、昨日教わったとおり通話ボタンを触るアルテマ。
もしもしと応答すようとすると、先にアニオタの声が聞こえてきた。
『もしもし……モジョどのでござるか? ……大変でござるよ……。その……元一どのが……その…………。……今朝方容態が……悪化して……。その……な、亡くなって……しまったでござる……。そ、それで――――』
――――ゴトンッ。
硬いものが床に落ちる音がした。
それに目を覚ましたモジョは、かすれた景色の中、走って部屋を出ていくアルテマの背中を見た。
床に転がっていた携帯からは『……アルテマどのにはまだ知らせないでほしいと……節子どのからの伝言でござる』と微かに聞こえていた。
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