第187話 漢
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
――――バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャッ!!!!
怒りに見境がなくなった偽島と組員たち。
橋を渡るなどまだるっこしいことはせず、一斉に川へと飛び込んだ。
そしてがむしゃらに水を掻き、流れに逆らいながらも無理やり渡河してきた。
「くっ!? 話を聞けというにっ!!!!」
突然始まった戦闘。
何も準備をしていなかった元一は、どうすることもできず後ろに下がる。
相手はザッと数えて100人はいる。
対してこちらは河川敷にアルテマ、ヨウツベ、ぬか娘、元一、六段、アニオタ。
校舎内にモジョ、飲兵衛、占いさん、節子。の10人。
数だけでは、言うまでもなく圧倒的に負けている。
それに岸の向こうにはクロードの姿まで。
「ア、ア、ア、アルテマちゃん!! ど、ど、どうしよう!?? と、と、と、とりあえずアモンで追い返してくれないっ!??」
半泣きになったぬか娘がアルテマにしがみつくが、
「だめだ、こいつら水の中を進んできている!! そんなところに
「ええ~~~~じゃあどうするの!?」
取り乱し、涙を撒き散らす。
とりあえずヨウツベはカメラを回しながら、コゲたアニオタを回収している。
本気の本気で殺す気でやれば、水を煮えくり返らせ、大火傷を負わせてやることはできなくもない。
しかし、これは相手の早とちり。誤解による戦闘なのだ。
必要なのは話し合い。
不用意に手を出してしまったら、それこそ収集がつかなくなる。
「元一っ!!」
「わかっとるっ!!」
アルテマの視線に、元一がうなずく。
元一もまったく同じことを考えていた。
「聞けお前たち、ワシらはこの通り戦う気などない!! 娘のことについては話し合えばわかる!! とにかく冷静になるのじゃ!!!!」
両手を上げ無抵抗であることを示し、向かってくる者たちの前に出た。
いくら連中が頭に血をのぼらせているとはいえ、丸腰の老人に集団で殴りかかることなどしないだろう。
(いいぞ。さすが元一、冷戦な判断だ!!)
その的確な行動を頼もしく思うアルテマだが、その脇をもう一人の老人が走り抜けて行った。
「――――は? ちょ、ちょっとまて六段っ!?」
「面白い!! 軟弱な若造どもがいくら束になったとしても魔法具で強化されたワシには敵わんぞ!! うわはははははははははははっ!!!!」
いつも離さず持っている。お気に入りの魔法武器『ホーリークロウ』
それを装備した六段が、アルテマの制止も聞かず、大喜びで突進していった。
「馬鹿者っ!! お前!??」
元一も目を丸くする中、一番先に川を渡りきった、勇敢にも不幸な組員めがけて――――、
「くらえぇぇぇええぇぇぇいっ!!!! 聖なる昭和の番長ボンバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
意味不明の技名。
鮮烈な青の光とともに繰り出される、烈火のごとき拳!!
――――どがめしゃあっ!!!!
「ぐっはあぁぁああぁぁぁぁっぁっ!??!?」
モロに顔面で受け止めた組員は、歯を飛ばし、鼻血を噴いて宙を回転。
――――どばっしゃあぁぁあああぁぁぁんっ!!
吹き飛ばされ、川の真ん中に落下する。
しばらくして浮かび上がってくるが完全にノビており、死んではいないものの力なく流されていった。
他の組員たちは一瞬立ち止まるが、仲間がやられたという
「う、うおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉっ!!!! やりやがったなっ!!!」
「もう容赦しねぇ!! お嬢の敵討ちだ!! 殺るぞてめぇらっ!!!!」
「信じてたのによーーーーっ!! 俺ちょっと……あのメガネ姉ちゃん好きになってたのによーーーーっ!!!!」
「ああ、こんな裏切りってねぇよなぁ!!!!」
「一線越えたぞてめえらァアァアァァアァッッァァァァァァッ!!!!」
公私混同入り混じり、再び怒りを再燃させる偽島組。
「上等だよ!! かかってこいや~~~~~~~~っ!!!!」
それを単騎で迎え撃つ六段は、完全に若かりし頃の荒くれ番長時代を思い出していた。
「だ……だめじゃ……こやつ、完全に昔戻りしておるわ……」
普段は冷静な六段。
しかし〝河川敷に集団乱闘〟などという、昭和男子陶酔のシチュエーションを見せられてしまっては、大人しくしてなどいられなかったのだろう。
元一も同類ではあるので気持ちはわかる。
わかるのだが……。
「多勢に無勢を考えんかーーーーっ!!!!」
あまりに無謀な宣戦布告に、頭をかかえる元一。
そうこうしているうちにも連中は次々と川を渡ってくる。
正面だけでなく、左右を囲むようにして迫りくる組員たちに、
「くそっ!! もうこうなったらヤるしかないか!!」
見事に収集はつかなくなった。
こうなれば、とにもかくにも決着をつけねば収まらない。
あきらめたアルテマは、急ぎアモンの呪文を唱えはじめた。
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