第161話 拒絶の悪魔・季里姫③
「な……にっ――――ぐっ!!??」
突如、吹き上げられた暴風にアルテマの軽い身体が持ち上げられる。
紫の光球は風の壁に少し軌道をずらすが、突き抜けて、新たな地面をえぐった。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!!
「だからまたワシの畑かい~~~~っ!!」
呪いで動けなくなった体。頭だけ持ち上げて六段が涙する。
そこにバリンと
ごいんっ!!
勢い余って柱に激突した。
『……なんじゃ貴様は』
新たに出現した謎の金色の物体を見て、怨霊季里姫は不機嫌に揺れる。
物体は髪を掻き上げ立ち上がると、
「ふ……ふふふふふふふ、なんだとは言ってくれるな上級悪魔よ。我が名はクロード。ファスナ聖王国の騎士にして、明日の栄光を背負いしもの。俺のいない間になにやら騒いでいると想ったら、ずいぶんと面白いことをしているじゃないかアルテマよ。――――ん? アルテマ? どこへ行ったアルテマ??」
「お前が吹き飛ばしたんじゃろうが馬鹿者っ!!!!」
目玉を盛り上げて怒鳴る元一。
見上げると、はるか上空。ザキエルの余韻の風とともに宙を泳ぐ巫女の姿が。
「ぬ? アルテマめ、俺に恐れをなして空に逃げおったな!!」
「だからお前が飛ばしたんじゃろうが!!」
『……邪魔者よ消えるが良い』
騒がしい珍客に嫌気の視線を向け、怨霊は脇差しを天にかざす。
するとまた胸の血が霧に変わり、辺りを赤に染めた。
ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!!!!
「ぬ? なんだこの霧は!?」
「ぐ……だ……だめじゃ、それは呪いの霧じゃ。そ、それを吸い込むと体の自由を奪われ……ぐぐぐ……」
重ねがけされた呪いに、さらに苦しそうに畳に突っ伏す元一。
気に入らないクロードだが、逃げろ、と目で教えてやる。
しかしクロードは、
「呪いだと? ……ふむ、確かにこれは呪術の類だな」
冷静にその霧に触れ、分析すると、他愛もないと薄笑う。
そして口の中で軽く呪文を唱えた。
「――――リスペル!!」
結びの力言葉を発した。
すると辺りがまばゆい光に包まれ、赤の霧が消えていく。
同時に元一たちの麻痺も解けていった。
「な……なに? こ、これは……体が楽に……?」
「おお……動く、動くぞ……」
「ふう、やれやれ……しんどかったのう……」
たちまち息を吹き返し、起き上がってくる元一たち。
どうやら呪いが解かれたようだ。
怨霊はそれを見てスーッとクロードから離れ、庭の隅へと移動した。
『……たやすく我の呪いを解くとは……おヌシ、只者ではないな?』
戦いに値する敵と認めたのだろう。
怨霊は紫の光を手に集めつつ、クロードを睨みつけた。
クロードは余裕の笑みを浮かべ、庭へと降り立ち、キザな笑いで髪を掻き上げる。
「ふ、だから言っただろう。俺は神の信徒たる聖騎士。悪魔の天敵。呪いの解呪など造作もないことよ!!」
「おお……」
「なるほど、言われれば聖なる騎士。悪魔には強いと言うことか」
意外な強さを見せたクロードに、元一と六段が顔を見合わせた。
異世界には神と魔神が存在する。
帝国は魔神。聖王国は神の元に従う民。
それぞれは、それぞれが崇拝する存在によって力を与えられているが、その力を得るためには崇拝する存在の眷属、すなわち悪魔か天使を取り込まなくてはならない。
アルテマが度々やっている魔素吸収がそれなのだが、能力が悪魔属性なので、実は悪魔相手に相性が悪い。
その試練を乗り越えてこそ力が得られるという考え方なのだが、純粋に戦闘をするとなれば、悪魔より天使のほうがよほど戦いやすかった。
神の力を授かっているクロードも同じ。
経験値以外得るものは無いが、悪魔相手にはめっぽう強かった。
「ふ……見たところ上級悪魔のようだが……アルテマめ、こいつを吸収してさらなる力を得ようとしたか? だがそうはイカン!! 邪悪なる暗黒騎士めの贄となるならば、その前に聖なる俺様が処分してくれよう!!」
抜き放つ勇者の剣(樹脂製)
そして唱えるロンギヌス加護!!
――――ふおぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉんっ!!
剣に聖なる加護が宿る。
玩具が神器へと昇華する。
その気配を感じた怨霊季里姫が光球で対抗しようと構えたところで、
「――――アモン!!」
「っ!?」
『!??』
ちゅどおぉっぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!
空から放たれたアルテマの火炎魔法が、二人の間に炸裂した!!
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