第22話 暗黒騎士の実力④
「げ、元一~~~~~~~~っ!!」
「な、何事じゃこれは!? また熊でも出たかっ!??」
集落の騒ぎに異変を感じた元一は、猟銃をかまえ表に出てきていた。
アルテマの声に反応すると、慌ててこちらへ走って来るが、
――――ずんずんずんずんっ!!!!
巨大な棍棒を振り回しアルテマの後ろから迫る、黒山羊頭の悪魔を見て表情を引きつらせる。
「な、なんじゃこいつは!? アルテマ、お前いったい何をした!??」
「色々あって呪いの悪魔を出現させることになった!! だが、思いのほか私が弱くて全く歯が立たんっ!! スマンがそのズルい兵器で迎撃を頼むっ!!」
「な、なに!?」
ツッコミどころ満載の説明をしながら元一の背後へと滑り込むアルテマ。
元一は一瞬だけ躊躇したが、迫り来るのはどう見ても本物のモノノケ。
決して人間の誰かが悪ふざけしてないだろうことを確信すると、足を狙って引き金を引いた!!
――――ズドガァンッ!!!!
大きな発砲音とともに悪魔の足から緑色の体液が飛び散る!!
『ぬっ!? ……人間、邪魔をするか!?』
右足に銃弾を埋め込まれた悪魔は立ち止まり、元一を睨んだ。
それほど効いていない様子だ。
「なんじゃ言葉も話すのか!? ……なにがあったか知らんがワシの娘に手を出すやつは何者であっても容赦は出来んぞ!?」
油断なく狙いをつけながら元一は言い放った。
『ほう? その暗黒騎士の親と申すか? ならば貴様も我の敵と認めよう!!』
悪魔は怒りに吠えると全身に力を込める。
メキメキと音を立てて筋肉が膨れ上がると、めり込んだはずの銃弾が体外へと押し出された。
『我が名は悪魔ザクラウ。地獄の混沌を創りし者。眠りを解かれし怒りをその身に刻むがいいっ!!』
みるみる塞がっていく傷口。
そして悪魔は元一に向かって――ザッ!!
素早く間を詰めると棍棒を振り下ろしてきた!!
――――ドゴアァァァッンッ!!!!
大きく地面が抉れる。
しかし元一は、その歳に似合わぬ早い動きでそれを難なく避けると、
――――ズドガァンッ!!!!
お返しとばかりに今度は悪魔の頭に猟銃の一撃を喰らわせる!!
『ぐおおぉぉぉぁっ!!!!』
これはさすがに堪えたか、苦悶の叫びを上げ、苦しがる悪魔。
ボルトアクションで弾を入れ替えつつ、距離をとる元一。
その流れる動きに、アルテマは思わず見とれてしまうが、
「こら、何をボサッとしているアルテマよ!! ここはワシにまかせてお前は逃げろ!!」
言われてアルテマはハッと我に返る。
「い、いや、私が逃げるわけにはいかん。悪魔にトドメを刺せるのは暗黒騎士たる私だけなのだ!!」
「なんじゃと? それはどういうことじゃ!?」
苦しんでいた悪魔の呻きが止まる。
開いた額の穴からシュウシュウと音を立てて煙が上がる。
そして足の時と同様に、みるみるその傷口が塞がっていった。
「……なるほど、実弾攻撃は効かんのか? ……モノノケらしいな、銀の弾でも使えと言うのか?」
察しのいい元一はすぐに悪魔の特性を看破するが、
「生憎、そんな都合のいいものは持っとらんな……」
と、頬に汗を流す。――――するとアルテマが、
「私の強化魔法『
「入って奥の部屋だ、何なら神棚もあるぞっ!!」
アルテマの言いたいことを大まかに理解し、元一はアルテマを家の中に放り投げる。
詳しい説明を聞かずとも、長年の狩人としての直感で正しい選択を選ぶ元一。
悪魔を誘うように胸にもう一発打ち込み、家から離れる。
――――スマン、元一。すぐ戻る!!
アルテマは目でそう伝えると家の奥へと走った。
一番奥の部屋に辿り着くと、そこに大きく立派な仏壇があった。
アルテマはそれにかぶりつくと、とにもかくにも『魔素吸収』を試みる。
「魔素よ、我が元に集まれ!!」
すると仏壇から大きな光が現れ、アルテマの元へと吸い込まれていく。
さっきの空き家の量と比べるとかなり多い。
「くそ、それでもこれだけか!?」
多くは吸収できたが、占いさんの家にあったアイテムほどは採れてはいない。
あれでもまだ全然足りなかったのだ。
この程度の魔素ではあの悪魔を倒せるほどの魔力を練りだすなんて到底無理。
――――ドゴオンッ!!
――――――――ズドォンッ!!!!
表から元一と悪魔の激闘の音が聞こえる。
うまく引き付けて時間を稼いでくれているが、しかし、致命傷を与えられない元一が圧倒的に不利なのは言わずもがな。
それにいくら熟練の狩人とはいえ老人だ、体力もそうそう持つわけがない。
これで元一が傷付き、倒れてしまったら、私はどうやってその罪を償えばいいのか?
魔力欲しさに軽はずみな行動を取ってしまった自分を殴りつけたいと思いながら、アルテマは魔素を求めて部屋中を探し始める!!
――――
――――
――――
――――
何度目かの探索魔法でようやく反応があった。
『二階の部屋。そこに魔素がいっぱいあるよ』
聞くやいなや、二階へと駆け上がる。
二階へ上がったのは初めてだが、目的の部屋はすぐにわかった。
「なん……と、これは……!??」
溢れるほどの大量の魔素が、その扉から漂ってきていたからだ。
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