第5話 進展
おかしいというかおかしくなったと言うべきだろう。あの砂嵐の夢を見てから急に疑問を持つようになったのだから。考えたくないけど、この世界をおかしいという疑問を持つこと自体、僕がおかしくなった証拠なのかもしれない。
そんなことを考えているうちにあっという間に家に着いた。
結局帰り道も誰にも会わなかった。
途中で帰路と別の方向へ行こうと辺りを見回したが、道なんてどこにもなくただ真っすぐ家に向かうだけの一本道があるだけだった。引き返すことも出来なかった。
まあ、もし別の道があったとしてもどうせ見えない壁かなにかで行けないんだろうけど。
玄関のドアを開け家に入っても特に何も変わっていないいつもの家だった。
少しホッとした所でふとした疑問がよぎった。
外に出た時みたいに一度進んだら引き返せなくなるのかと思い玄関のすぐ近くの階段を登りきった後、振り返りまた階段を下りてみたが、難なく引き返せる。
どうやら家では大丈夫なようだった。ただ、玄関のドアは開かなかった。次の日にならないと外へは出られないようだった。
とりあえず疲れたしお風呂でも入るか。
考えるのはその後ででもいいだろ。お風呂に浸かっている時くらいリラックスしたいからな。
お風呂場へ向かうと、もうすでにお湯が張られてていつでも入れるようになっていた。
髪も体洗い終わり湯船につかり軽くストレッチをした。
やっぱりお風呂に先に入って正解だったな。すごくサッパリした気分になる。なんてのんきなことを湯船に浸かりながら考えていた。
お風呂から出た後、髪も乾かすさずパジャマに着替えて、すぐに二階にある自分の部屋へ行き、紙とペンを用意して今日あったことを箇条書きで簡単にまとめる。頭の中でごちゃごちゃと考えるよりも紙に書いたほうがわかりやすいし、紙なら記憶と違って明日に持ち越せるからね。
①砂嵐の夢
②Sと担任について
③時間の流れ
とまあ、こんなもんか。
一番疑問なのがやっぱり①の砂嵐の夢だ。
まず、なぜあんなに長かったのか。
いつもはほぼ一瞬で終わるのに。
後あの声の正体は?Sにどことなく似ていたが…?
それに起きろ以外にも何か言っていたような…。それに、起きるって何からだ?あの砂嵐の夢からか?
駄目だ、思い出せない。
じゃあ、②のSと担任について
なぜか二人の名前が思い出せないのだ。
実を言うとこの二人だけじゃなくて僕の名前も思い出せない。
じゃあ、次の③の時間について。
今日一日中生活してみて気付いたのが時間という流れがめちゃくちゃだったということ。
朝起きた6時30分から家をでるまでは少なくとも1分以上は経っていたのにスマホの時計は6時30分のまま進んでいなかったこと。とはいえこれについてはスマホがなんらかの原因で時計が狂ったのかもしれない。
…でも狂うはずがない、だって一分一秒たりとも狂わずプログラムされているはずなのだから…。
…ん?
プログラム…?
今なんの迷いもなくにプログラムされていると言う考えが頭に浮かんだ…なんでだ…?
そういえば今朝学校に行く前にだってそう思った。
とうとう僕は本当におかしくなってしまったのだろうか…。
考えれば考えるほどわからなくなってくる。それになんだか思い出しちゃいけないような気さえするのだ。
こんな思いをするのも全部あんなに長い砂嵐の夢を見てからだ。
……………………………………………………………。
駄目だ、もう今日は寝よう。
これ以上考えたって…待てよ、寝たらまたあの砂嵐の夢を見る羽目になるんじゃないか…?
でもいつもはもう寝る時間だ。寝て覚めたらいつもの朝を迎える…。
いつも…?
そういえばもういつもと違う行動を今日はずっとしている。もういっそのこと寝ないというのはどうだろうか。寝なければあの夢を見ないで済むはず…。確証は無いけどやって見る価値はありそうだ…!
…………………………。
…なんで僕はこんなにワクワクしているのだろう。
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