第4話 おかしいのは…僕?

キーンコーンカーンコーン

終わりのチャイムが鳴った。


「はぁぁぁ〜〜〜〜〜」

そう大きなため息をつかずにはいられなかった。

ほとんど一瞬の時を過ごしたが、一度違和感を覚えてしまった今、今まで普通にこなしていたことを何から何まで全部に疑問を抱くようになってしまい疲れ果てた。

帰り道ようやく落ち着いてきたので今日一日あったことを振り返ってみる。


まず僕と名前の思い出せないあいつ…仮にSと呼ぼう。S以外教室にはこのクラスの担任?しかいないようだった。その先生の顔は見慣れた顔だから分かるけどやはり名前は思い出せなかった。

ここに着くまでずっと混乱していて気付かなかったがよくよく思い出してみればSとこの担任以外に誰にも会っていない。

しかも机も僕とSの2人分しかなかった。

もしかしてだけどこの学校にいるのは僕たち3人だけなのかもしれない。

机に伏せて寝ているSに声をかけたがここでもやっぱり無反応。

無表情でただ突っ立っているだけの先生に声をかけても同じだった。

2人とも僕が何をしようと、何一つとして反応を示さないので廊下に出ようとしたが今朝みたいに見えない壁があって進めなかった。窓からも駄目だった。

どうやら時間にならないと次の場所には進めないようだった。時間と言ってもここには時計がないからどれだけ待てば良いのかわからないが…、とはいえ、今朝見たあの砂嵐の夢の中をただ一人で待つよりはずっと楽だった。

ここから出るのは諦めて自分の机の横にかかっているカバンの中から教科書のようなものを取り出すが、表紙にも中にも何も書かれていなかった。

というかいつの間にカバンなんて持って出たんだ?

朝僕は手ぶらで学校に行ったはずなんだけど…。でも自分の椅子にかけてあるってことは多分僕のだろうし…。

そんなこんなでしてるうちにあっという間にチャイムが鳴り教室からも出られたというわけだ。ちなみにSと担任はチャイムが鳴ってもそのままの状態で僕が何をしても動かなかったので置いてきた。

…そして今に至る。


こんなことをなんの違和感も感じずに僕は毎日やっていたのか…。


毎日のように自分の家に帰りながら、きれいだと思って見ていたこの夕日でさえ怖く感じた。


やっぱりこの世界は何かがおかしい気がする…。

あの長い砂嵐の夢を見るまではなんにもおかしいと思わなかったのに…。

なんでこのタイミングで…

そういえばあの時、誰かの声を聞いたような…あの声は…Sに似ていた?

そういえば起きろって言ってた…?

いつもの朝に会った時より随分と聞き慣れたような…?

なんというか懐かしい声だ。

いつも聞いている単調な声よりもずっと…。

ずっと…懐かしく感じる…。

いつも聞いている声のはずなのに…

なんで…

………………。

やっぱりこの場所は…僕が見てるこの世界はどこかでおかしくなったのかもしれない。ひょっとしたら今まで何も疑問に思わなかっただけでもともとおかしかったのか…?

……………………………………………………………………………………………。


いや違う…ひょっとして僕がおかしいのか…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る