第3話 なんだろうこの違和感は
「…は?」
喉奥から声にならないような声が出た後、状況が飲み込めず「ピピッ」というアラームの単調的な音が鳴っている中、僕はしばらく固まっていた。
なんだ…
…もしかして抜け出せたのか…?
絶望しかなかったあの虚無空間から…ようやく…
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
僕はまたなんとも言葉では到底表せないような喜びを噛み締めながら、両手を強く握りしめ頭を少し低くしガッツポーズを取った。
そんな状態が数分続き、ようやく自分が次にやることを思い出した。時計のアラームを止めいつもの制服に着替えていつもの場所に行こうと玄関のドアノブに手を掛けた。
…………?
…いつもの場所?
なんだろう…これからすることは明確なのだが…何か物凄く違和感を覚える。
いつもの6時30分の朝に起床して…?
そういえば、その時間ぴったりに起きてから何分が経っただろう。スマホの電源をつけ時間を見ると…
なんと6時30分だったのだ。
「…は?」
今度のはしっかりと声になっていた。
なん…で…?
…スマホの時計がずれているのか…?そんな訳はない。1秒の狂いもないようにプログラムされているはずなのに…
まるで時間という概念を置き去りにしたような感覚に僕は戸惑う。
プログラム…?
なんの躊躇もせずこの言葉が頭をよぎる…なんでそう思ったんだっけ?
駄目だ、考えれば考えるほど頭がこんがらがってくる。
…固まっていても仕方ないからとりあえず外に出てみるか。
そして僕は何気なく後ろを振り返ってみた。そしたらなんと家が消えていたのだ。
「嘘でしょ…。」
家があったはずの場所は白くなっていて進もうとしても見えない壁にぶつかり進めなかった。家だけじゃない、僕が今立っている場所の後ろは一面真っ白で何も見えなかった。
一難去ってまた一難とはよく言うが…、次から次へと想定外の斜め右肩上がりの状況について行けず頭の中でこんがらがっていた糸が更に複雑に絡み合った。
一から順に考えようとしたその時、いつも聞いている声が聞こえた。
走りながらそいつは来た。
「おーい、蠢苓撃譟オ轤取?ー!」
すると僕は思い出したように
「遅いじゃないか!」
…?
考える間も与えず僕の口が動いた。
彼の名は…名前は…?昨日まではちゃんと…
あれ…なんて呼んでいたっけ?
というかこいつは今僕のことをなんて呼んだ…?全然聞き取れなかったのに当たり前のように返事をした。
僕はたまらず声をかけた。
「ねぇ…!」
が、遮るように
「悪ぃ悪ぃ、家の中が混んでてよぉ」
と頭をボリボリ掻きながら笑った。
…何…言ってんだ…?
家が混む…?
「…どういう意味?」
とすぐに聞いたが返答はなし…。
学校への道を歩きながら何度も問いかけたり身体に触れてみたが、全て無視されそれ以上のことは何も話してくれなかった。
おかしい…
昨日まではこのやり取りになんの疑問も持たなかったのに…
…なんだろうこの違和感は
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