第5話 (僕+私)の修学旅行と一花

最初も最初からストーカー犯に痴漢にとんだ修学旅行になってしまった。


これでは楽しめる所ではない。


僕らは電車に乗って次の目的地へと向かっていた。すると再びメールが来た。


送り主は一花さん。内容は


[痴漢犯が雅くんたちの電車に乗っています。一つ隣の号車です。私が監視しているので何かあればすぐ連絡します。]


いや、なんで一花さんおるねん。


まあこういう時は本当にマネージャーさん達が頼りになるので特に言及はしない。恐らく河野さん辺りが僕たちの修学旅行に学校を介して送り込んだのだろう。


とにかくこのことを四人にも伝えて警戒しておくよう言っておいた。


奏多は楓の後ろにつき、京と牡丹は僕の前に着いた。


隣の号車から移動してくるかもしれないので女子の最後は男子が守る。


目的の駅と、乗り換えを一花さんに伝えておく。


乗り換えの駅に到着する。


僕達は地下鉄の乗り場に向かう。


特に花嵐とバレている感じはしない。


階段をおりていき、近くにあった電車に乗り込む。電車に入ったあと人の少ない端の車両に行き、空いた座席に腰をかける。


立ち客は誰もいない。


席もまだまだ空いている。


しかしそこに、ドアではなく、隣の号車から来て、わざわざ僕らの座る目の前で立つ男性が現れた。


その数秒後に一花さんと思わしき人が、その男性の後ろの席「僕と正面の席」に腰をかけた。


男性はスマホをいじっている。と見せかけて僕の隣の京を盗撮しているのだろう。


電車は出発して数分、咳が完全に埋まり、立ち客も多くなってきた。一花さんは駅で乗ってきた御老人に席を譲り、僕の座る端っこの席の壁に寄っかかった。


なぜ僕が端の席に座るかと言うと、端の席の後ろには窓がない。地下鉄だと景色が真っ暗のため席に座っている人のスマホが反射してしまう。


そのため一花さんとのメールでのやり取りがバレてしまう可能性があった。


これで見られて事前に痴漢を防ぐ方がいい手段と言えるが、一度自分の大事な人を痴漢されたので僕も少し苛立っていた。どうにかこいつを後悔させてやりたい。


一花さんは電車の反対側のドアに反射する、痴漢魔のスマホを確認して、録画してることを確認する。


[録画しております。何か京ちゃんにアクションを起こすかもしれません。気をつけて。]

[了解。]


僕は隣の京の肩を自分の所に寄せる。もしかしたらやつが卑劣な行為をする可能性もある。その時に僕がくっつくことで少しでもパニックな状態を抑えられるようにするためだ。


すると次の瞬間電車がカーブし、大きく揺れた。


痴漢魔は「おっと...」と言いながらバランスを崩したように足を一、二歩だして膝で京の脚にぶつかった。


「すいません。」


と言いつつにやける痴漢魔。僕は怒りが込み上げてきたが、僕の手を京が握り、『ダメよ。』と僕を抑止する。


次の駅で乗り換え客がどっと入ってくる。痴漢魔は隣の人に吊革を譲り、不安定な状態となった。


『これは...』


僕はこいつが何をしようとしたかわかった。


こいつは...次のカーブか大きな揺れが起きる時に京側に倒れるつもりだ。


僕は一花さんに


[録画お願いします。次の揺れの時、恐らくやつは京にのしかかります。]

[わかったわ。]


一花さんは人混みを上手く使い自然に体制を僕と同じ方向に向ける。そしてスマホをいじるようにして録画を開始する。


僕は京にもメールで伝えておく。


[次に送るメールは一瞬で読んで]

[了解]


返事が来ると僕はさっきの言葉を送信取り消しにする。そして文字を打ち込んだ。


[次の揺れが起きる時、恐らくやつは京に向かって倒れてくる。]


三秒くらいしたらまた送信を取り消す。そして文字を打つ。


[何とか僕がカバーするけど、もしかしたら強引にでも色々なところを触るかもしれない。]


また送信を取り消す。


[触られたくないところを隠す準備をしておいて。]


そしてまた消した。


京からは、


[了解]


とだけ送られてきた。するとまた新しいメールが来る。


[雅、なんか京さんを撮ってるやつの後ろにいるんだけど、そいつ撮っておいた方がいいか?]


咲也だった。


[一応お願いする。]

[了解]


これで準備は万全。もう一度京には怖い思いをさせてしまうかもしれないが、裁かれないと気が済まない。


「ごめんな。」


と小声で僕の方に頭を乗っける京に言うと、


「雅がスッキリするならそれでいいわ、しっかり護ってよね?」


と僕以外には聞こえない声で返してきた。


ことが始まるのはこの直後なのであった。


______________________________


読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。





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