第2話 (僕+私)の修学旅行班
薔薇色の高校生活の代名詞とも言えるのは高校二年生の修学旅行だろう。
恐らく全国の高校生に〈どの行事が思い出に残りますか?〉と聞いたら60パーセントくらいは修学旅行と答えるのではなかろうか。
ちなみに20パーセントが文化祭、10パーセントが体育祭、残りの10パーセントはその他という僕の勝手なイメージだが...
とにかく今僕達は修学旅行の班決めを行っていた。
まあメンバーなどと言われてもいつもの五人以外ない。
生野先生が
「じゃあ仲のいい人同士別れてくれ!!」
とクラス中に響き渡るほどの声で呼びかけると教室は一気にガヤガヤとした雰囲気に包まれる。
僕たち五人は元々席がくっついているので動く必要もなく、
「よろしく頼む」
「よろしくお願いするわ」
「よろしく頼むよ」
「よろしくぅ!!」
「やっぱりこのメンバーなのね。」
と、適当に挨拶を終える。
今回の修学旅行の舞台は近畿。特に畿内と言われる所だ。
三泊四日の修学旅行で最初の二日は古都を散策し、残りの二日は都会に出てショッピングや、テーマパークで遊ぶなど自由だ。
中学の修学旅行も楽しかったが、高校となると範囲と自由度は限りなく広くなる。
制服を着ているだけで、ほぼ普通の旅行と何ら変わりはない。
でも回る場所、予定は予め決めて提出せねばならない。そのために今僕達は回る場所決めをしている
「さあ、どこを回ろうか、」
「鹿苑寺!!(金閣)」
「慈照寺なんかいいと思うな(銀閣)」
「伏見稲荷とかどうかしら、」
「清水寺行きたいなぁ〜」
みんなの行きたい所は見事に別れた。その名所がある地点も離れている。
「でもまぁ、二日あれば余裕で回れるな。わかった。」
五人でほかの名所と場所を把握しながら回る場所を決める。
「じゃあこれで行くか、」
「ふぅ...」
「つかれたぁ〜」
何気に移動時間やらバスの乗り換え時間やらの計算に時間がかかって二時間かけてやっと予定決めが終わった。
とりあえず二日間かけて古都の有名所はだいたい回れそうだということになった。
あと決めるのは...
「ホテルの部屋だな。」
まあ...これもある意味既に決まっているようなものだ。
「...これも名目だけ男女別にして、実際は男女混合なんだろ?」
「ええそうよ。」
「あったりまえじゃなーい!!」
親睦旅行のノリで京と楓がYes!!と頷く。
「どういうこと?」
この会話に牡丹が疑問を持った。それに楓がいち早く答える。
「つまり!紙には二部屋あるホテルの部屋分けは男子と女子で分けておくけど、実際に泊まる時は男女別なんてクソ喰らえってこと!!」
「なるほど!!それなら私もみやと一緒の部屋になれると!?」
「そういうことよ。」
...牡丹も乗り気だ。女子のすごいところってやると決めたらしっかりやり通すところだと思う。
まあ人によるとは思うが、少なくとも男子の方が優柔不断な人は多いと思う。
京は安定のスピードで、かつ丁寧な綺麗な字で予定表とホテルの部屋割りを書き上げて僕に〈反対する暇なんて与えないわよ。〉という視線を込めて紙を渡される。
「わかった。じゃあこれでいいんだな、行ってくる。」
僕は一息ため息をついてから生野先生の元へ持っていった。
生野先生は僕たちの予定表の方を見て驚いた...フリをする。いや、本当に驚いてはいるのかな?でもこれは明らかに大袈裟だ。
「なんと完璧な予定表だ!!時間もバスと電車の時刻表で完璧に計算されている!!皆!!この班の予定表を参考にするといい!!」
〈はーい!!〉
先生の言葉で一気に教卓に集まり、僕たちの班の行動が公開されていく。
『いや、元々これを狙っていたんだろ...』
ここまで来るともうバレバレだ。
それにため息を着く僕に、咲也が近寄ってきて、
「お前も大変だな...」
と肩にポンポンと手を置き、同情してくれた。
すると今度は横から優香さんが、
「まあ雅くん達の班は学校の華が固まったもうなものだからね、つい先日転校してきた牡丹ちゃんだって京ちゃんに劣らないくらい男子に人気だからねぇ。」
「そうなのか...それは初耳だな。」
雅は牡丹がモテてるとは思わなかったが、確かに久しぶりに再開したあの時の男性誘惑機みたいな牡丹を思い出すと納得する。
「みやちゃんは男子に人気がある可憐な美しさ、かえちゃんは女子に人気のある可愛さ、牡丹ちゃんは女子別男子別になると二人ほど人気はないけど、男女通してみるととても人気の高い女の子ってイメージかな。」
「ほぉ...なるほどな。確かに動画配信の時に視聴者さんが勝手に人気ランキングとか作っているが、牡丹が加入した最新のものは優香さんが言った通りだったな。」
「でしょ!?」
「雅も雅で女子ウケがいいもんなぁ。」
「そうだろうか、確かに人気投票では女子票が圧倒的に多かったが現実となると分からないぞ。」
雅はあれは画面越しとか性格の問題なんじゃないか?と問いかけるが優香がそれを否定する。
「それがそうでも無いのよ。雅くんは女子からすごい人気があるのよ?みやちゃんと付き合ったと噂が入ったあの日、女子は皆一日お通夜状態だったんだから。」
「まあ京さんも同じだな。男子はお通夜だったぞ」
「そ、そこまで評価していただいてるとは思って無かったな...」
雅は二人の言葉に偽りはないと思い、それをしっかりと真に受けた。
「あなたたちのグループは修学旅行でも目立つわよ〜?何か親睦旅行みたいに問題が起き無いように用心してよねっ!!」
「多分皆がお前たちの班の予定を知りたがっているのはお前たちの班にくっつく変な虫を排除するためだと思うぞ。」
「そ、そこまでしてもらわなくても...」
「みんな好きでやってるのよ。」
雅は修学旅行は自分達の班の好きな行動が許されているから、ほかの班の自由に手を出すんじゃないわよと優香に止めることを止められた。
雅は、
『でもまぁ、それだけこのクラスの人は僕たちのことを大切に思ってくれているってことか。』
と思うと同時に
『彼らも僕の大切なクラスメイトだ、彼らが僕を守ってくれている以上、僕らも彼らを守らないとな...』
と、何かが起こるかもしれないという前提でどうするかと思考を開始するのであった。
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読んでくださりありがとうございます。
もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。
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