第12話 (僕+私)の川遊び

今年の夏は熱い。この東北地方の山の中ですら気温は30度に近い。


自分たちからすれば住んでる地域が平気で40度に到達するのでかなりマシって感じだが、暑い事は暑い。なので牡丹に案内してもらって、川遊びをすることになった。


皆家で水着に着替えて途中道で虫に刺されないように上下一枚服を着る。


皆着替え終わると庭に集まり、庭に面した山道を歩いていく。


15分くらい歩いただろうか、小さな滝のようなものが見えてきた。


「ここです。皆様。」


牡丹が滝の目の前で止まって僕らにそう言った。その瞬間に牡丹は大きくジャンプして滝の所にバッシャーンと飛び込んだ。


川自体はそこが見えるくらい浅いので皆心配したが、どうやら滝の地点だけ相当深くできているらしい。


牡丹が浮き上がると「皆さんもどうぞ!」と言う。そこで奏多が早速飛び込んだ。


牡丹よりも大きい音がなって水しぶきも飛んでくる。


僕も服を脱いで飛び込みはせずに、川に足を入れてプカプカと浮く。


とても気持ちが良い。緩やかな川の流れに透き通った冷たい水。夏にはピッタリだ。


僕が水に浮いていると、隣に水着姿の京が来る。


「気持ちが良いわね。」

「ああ。」

「私の水着はどうですか?」


京の水着は真っ白のシンプルなビキニ。シンプルなのに、京の体系もあってか、かなり奇抜に見える。でも可愛いことには違いない。いや、本当に可愛い。美しい。木漏れ日に当たり、緑輝く大自然の命の水の上に浮かぶ京は本当に天使のようであった。


「似合っているよ。とても可愛い。」

「そうですか。ありがとうございます。」


そう言って二人で静かに川の上の時間を過ごす。


その内京とは反対側の僕の隣に牡丹が来た。


「みや、どうかしら?」

「気持ちがいいな。本当にいい場所だ。」

「それもそうですけど水着のことです!!」


雅は『ああ、そっちだったか、』と牡丹の方をむく。


首の輪っかに吊るされているタイプの黒いビキニ。正直ほぼ姉弟なのでなにか思うことも無いのだが、


「牡丹もよく似合っている。でもそれは早すぎたんじゃないか?」

「わかってるわよ!これしか無かったのよ!」


少しでも冗談を言うと乗っかってくれるので、ついつい雅と京は笑ってしまう。でも二人が牡丹を美しいし可愛いと思ったのもまた本心なのであった。


「馬鹿にしてますよね。」

「いやいや、本当に似合ってはいるって。」

「私から見てもとても似合ってると思うわ」


二人はそう言って牡丹を慰めた。すると唐突に牡丹は雅の左手をとって自分の胸に当てて押し付ける。


雅の左手にムニッとした柔らかい感触が伝わってくる。牡丹が雅の親戚とはいえこれには少し動揺せざるを得ない、


雅は少し顔を赤くする。それを見た牡丹はニヤッとした笑みで


「馬鹿にしたバツよ。私はこれでもかなり大きい方なのよ。」


と、さっき年相応の水着ではないと馬鹿にした雅に攻撃を仕掛ける。


この意地っ張りな牡丹の性格に雅はこの行動に少し困った。しかし京もかなりの負けず嫌いな正確なのであって...牡丹の行動を見た京も負けじと自分の胸に雅の右手を押し付けた。


雅の右手にまた柔らかくて大きいムニッとした感覚が伝わる。雅は恋人なのであるから勿論牡丹よりも強く動揺する。それを見た京は、


「まあ、私の方が大きいですし、柔らかいわ。」


と、『私も負けてないわよ』と、牡丹に煽りを入れた。


雅は『こっちもかぁ...』と心の中で頭に手をやった。そして周りをキョロキョロ確認して、『この状態は良くない』と思って二人を止めることにした。


「お二人さん。今どういう状況だかわかってます?」


雅が周りを見ろと言うと、二人は川底に足をつけて辺りを見渡す。すると、苦笑いで私たちを見つめるマネージャー二人、「私だって!!私だって!!」と泣きながら苦笑いする奏多の手を胸に押し付ける楓の姿。


二人は顔を赤くして僕の正面を向いて


「「申し訳ありません...」」

「分かればいい。」


と、謝り、二人はすぐに雅の手を解放した。


この後はみんなで泳いだり、ボール遊びをしたり、水を掛け合ったりして時間はすぎていき、夕方。疲れた僕達は川をあがり、来た山道を辿って家へと向かった。


疲れきった中で歩きながら奏多が会話を始めた。


「にしても楓がカナヅチだったとはなぁ」

「苦手なものの一つや二つはありますー!!」


奏多は笑いながら楓がカナヅチだったことを掘り返す。


それに楓は真っ当な回答を返した。


「でも顔に水すら付けられないとはね...水に潜れない人なんて初めて見たよ。」

「別に人間は水中で泳がないもん!!」


そう。楓は水の中に顔を入れることすらできないのだ。昼間は山の中で「鼻が痛い!!」だとか「目!!目が痛い!!」だとかずっと叫び声が響いていた。


奏多は楓が泳げるようにずっと付き合ってあげていた。奏多自身は泳ぎが得意な訳では無いが人並みにはできる。教えることも人並みにはできる。だが楓の場合は全く意味がなかったそうで、二時間くらい教えたらもう諦めてた。


そこからはもう川で皆でボールを落とさないゲームをしたり、流れが無い所で浮き輪にプカプカ浮いたりして時間を過ごしていた。


特に何も進展のないような時間に思われるかもしれないが、これはこれで楽しい時間だった。


「来年もまた来ましょうね。」

「ああ、そうだな。」


京と雅は来年もまた皆で遊びたいねと話し合ったのであった。


時は午後6時、まだまだ外は明るいが、ここから急に日は落ちる。実際7人が家に着く頃には空は真っ暗になっていたのであった。


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読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。









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