第11話 (僕+私)の大自然

東北地方の中央には大きな山々が連なっており、自然が豊かで白樺が自生していることで有名だ。


この橿原家の別荘はそんな大自然の真ん中に位置し、周りに人工物が無い。強いて言うなら下水道の整備と普通水道の整備、電気が通っているくらいだ。


牡丹はここで父親と二人で暮らして、勉強に関しては独学でしており、高卒認定試験を受けて大学に行く予定だったそうだ。


牡丹なら新城下高校の特進科に編入試験で合格できる学力は持っている。


なのであまりそういった所は心配してない。


牡丹の勧めで、山で少し遊んできたら?との事。


マネージャーさんの二人は朝7時くらいに着いたので今は家で休ませている。


二人が回復するまでは、せっかくなので大自然を満喫することにした。


「なんというか...全然親睦旅行と違うね。」

「そりゃ環境が違うからな。木の生え方も違うから景色は違うだろうな。」


かえさんが親睦旅行での登山を思い出して、「山と言ってもこうも違うんだね」と感心しているのを、雅が軽く解説する。


「親睦旅行と言うと、京さんが怒ったり、雅の華麗なる回避であいつを懲らしめたことを思い出しちゃうなぁ〜」


奏多がわざわざ牡丹が気になりそうな話を振った。勿論その話に牡丹は乗っかるわけで、


「どういう話なのですか!?奏多!!」

「それはねぇ〜...」


奏多は自分達が新城下高校1年生の時の事件から自分達がした事までもれなくきっちりと牡丹に説明した。弟の大活躍に牡丹が喜ばないことも無く、


「凄いじゃない!みや!」

「いや、別に大したことは...」

「京ちゃんは...ちょっとこんなに怖いとは知らなかったわ...」

「あら、私怖いかしら。」


京は「心外だわ。」と牡丹に言う。その後に牡丹はホッとした表情で「昨日は危なかったわ...」と小さく呟いたのであった。


この後も五人で山道を歩きながら高校に入ってからの色々な出来事を話し合った。


山菜摘みの話、交通事故の話、ネット騒ぎの話、盗撮の話、動画配信の話、球技大会の話。


とにかく色々話した。その話を牡丹は嬉しそうに聞いていた。特に交通事故の話は大きく驚いていた。


「時速40kmで走る車に跳ねられて20分も意識を持ってたの!?みや、あなた本当に人間かしら...野球と言い顔といい学業といい...」

「失礼な。僕はれっきとした人間だ。男性誘惑機みたいになった牡丹には言われたくないな。」


雅はニヤッとした笑みで牡丹を見つめると牡丹は顔を赤くして、


「全部雅のためにやったことなんだから少しは努力を褒めて欲しい所よ!!」

「まあそれが遺伝じゃなくて、努力で手に入れたものなら褒めてやろう。」

「むぅぅ...でもまあ、みやが人間であろうと無かろうと、元気に帰ってこれたことは嬉しく思うわ。」


自分に不都合な話を強引にねじまげた牡丹の言葉に一同は大きく笑うのであった。


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お昼。


一同は下山し、家の目の前にある広い庭でバーベキューをすることになった。


準備は父さんと一花さん、大輝さんがしてくれた。


このマネージャー二人、本当になんでも出来るな...


改めて感心する。


牡丹は元々超肉食だったので、もしかしたらもうそんな面影もないのかもなと思っていたのだが、いざ食べ始めると昔のようにどんどんと肉を焼いては食べていった。


『ま、まあ根本的には変わってないよな。』


と、少し雅は安心するのであった。


「少しは野菜食え。」

「え〜嫌よ。バーベキューは肉を焼くからこそのものよ。ほら、みやもお肉あーん。」


昔されていたように普通に、あーんをされる。べつに断ることもないので普通に頂くと、隣から京がグイッと入ってきて、


「雅、わたしもあーん!!」


京も僕に野菜とお肉が一緒になったものを口元に近づけてきた。


勿論それも頂く。


「ありがとう。美味しいよ。」


僕は二人に礼を言うと、二人は目をキラキラさせて、『私には!?私には!?』というような視線で僕を見る。


「ははっ...しょうがない」


と呟いて僕は肉を焼き、焼いたキャベツで包んで、先に京にあげる。


「はい、あーん。」

「あ〜ん!!」


「ん〜っ!!」と、都は嬉しそうにしっかり噛んで大事に食べる。


次に牡丹にもキャベツで包んで箸を向ける。


「あくまでも野菜を食べさせるつもりなのね...」

「当たり前だ。それともあ〜んされるのが嫌なのか?」

「食べるわ!!食べるからして頂戴!!」


必死に『やってやって!』といったように足と腕をバタバタする牡丹に『やっぱり昔と変わらないじゃないか。』と思いながら、箸を向けて、それを牡丹が「あーん。」と言いながらいただく。


牡丹も嬉しそうに頂く。


奏多と楓はそれをずっと繰り返しながら食べてた。


「効率悪くないか?」


と、言ったが、


「別に急いで食べなくなってお肉は逃げないだろ!!」


と奏多が反論するが、僕が牡丹の方に視線を向けると、奏多も同じように牡丹の方をむく。すると、牡丹は荒れ狂ったように肉を貪り食っている。


それを見た奏多と楓は『まずいっ!?』と言った表情になって、牡丹の肉食いレースに参加するのであった。


僕と京はそれを焼きそばを食べながら眺めて、


「牡丹ちゃん。確かに楓っぽかったわね。」

「いくら女の子磨いたからと言っても、根本は変わらなかったんだな。」


と、二人で肉を必死に食べる三人の様子を見ながらクスッと笑い合うのであった。


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読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。


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