第10話 (僕+私)の朝
朝の眩しい光が部屋に差し込んでくる。
その光に誘われるように僕は目を覚ました。
隣には素の姿の京。
寝ぼけた目で部屋の時計を見る。
時計の針は5時20分を指している。
「おはよう、みや。」
「牡丹...おはよう。」
僕は部屋に入ってきた牡丹に掠れた声で挨拶をした。
「昨日はごめんなさいね。あまりにも久しぶりに会えたものだから興奮してしまって。」
「いや、いいんだ。結果こうして京とも結ばれたんだ。」
「京ちゃん、いい子ね。何よりあなたをとても愛している。認めてあげるわ。京ちゃんにもそう言っておいてくれないかしら。」
「ああ。そうしておくよ。」
「風呂は沸かしてあるわ。まだあの二人は起きないだろうし、早めに入ったらどうかしら。」
「ありがたい。」
雅がそう言うと牡丹は部屋から出ていく。雅は牡丹の大人びた話し方にまだ違和感を覚えていた。
でも、牡丹にもこの二年間に変わるきっかけがあったのだろう。牡丹は女を磨いたと言っていた。口調もその一環だろう。
ここで京が目を覚ました。
「おはよう。雅。」
「ああ。おはよう。」
寝起きの京にいつもの覇気は無い。
雅は今さっき牡丹に言われたことを京に伝える。
「こんな言い方すると上からに感じるかもしれないけど、牡丹は京を僕の彼女に認めたってさ。」
「そう。なら良かった。」
京は少し微笑んで、
「風呂...入りましょ?」
「ああ。沸かしてあるってさ。」
そういうと京は「じゃぁさっさと入りましょう!」と、僕を布団からおろして引っ張る。
僕はされるがままになったのであった。
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二人でお風呂に入る。昨日の汗を流して大自然を眺められる大きな窓のついた広い檜風呂に腰をかける。
「牡丹さんは、楓みたいな性格って聞いたのだけど...」
「ああ。今の牡丹は僕も知らない。ただ、強いて言えば、亡くなったおばさんに似ている。あれは牡丹で間違いない。昨日は女の子を磨いたとも言っていたから性格もそういうことなのだろう。」
「なんというか...雅は残念よね。」
「何がだ?」
牡丹の説明を軽くした後、京は雅を可哀想だと言った。
「なぜそう思ったんだ?」
僕は単純にそう質問をした。
「だって...長い間会えなかった家族が変わり果てた姿でいたら、自分の期待していたその子では無いじゃない。」
「まあそうだな。」
京の言うことは最もだ。僕自身、あの頃の牡丹に会いたかった。二年前の彼女こそが僕の姉であった。
しかし今では丸で他人のように思える。でも、
「それでも、牡丹は牡丹だな。牡丹だったからあそこで妥協して京に譲ったんだ。普通あの性格ならそのまま京を追い出して襲っていたはずだ。京と二人きりで寝ることすら許さなかったはずだ。」
「確かにそうね。じゃあなんで女の子を磨いたりなんてしたのかしら。」
「...それは...」
京の疑問に雅が答えようとするがそこで話が遮られる。
「雅の隣に立つ女の子は、女性として女性らしく在らなければならないからよ。」
牡丹が風呂の扉を開けて、その答えを述べた。
「牡丹。久しぶりに素の姿を見たよ。成長したな。」
「そうかしら、でも、女性としての美しさは京さんに負けました。もう完敗です。顔も凛々しく、髪も美しい。背丈もあり声も爽やか。体つきも出るところは大きく出てますしくぼむところは大きく窪んでます。大切な人を一途に思い、自身の行動に自信を持って行える。ここまで完璧な女の子に私は勝てる見込みなどありません。」
牡丹は京に「完敗だわ」と述べた。かく言う牡丹も色々な面において美しい。それを京が言う。
「牡丹さんも美しいです。自分自身ではその容姿はわかりませんが、私が今まで出会ってきた女性の中で一番美しいと思います。」
「大袈裟ですよ。」
牡丹はご謙遜をと、苦笑いをする。が、京は引かない。
「いいえ、本当ですよ。だから私たちと一緒に帰りませんか?」
「「え?」」
あまりにも突然すぎる話に牡丹所ではなく雅まで驚く。
「距離を感じていたからこちらに住んでいるのですよね。ならもうこうして話せている時点で大丈夫じゃないですか?」
「た、確かに...」
牡丹は『そういえばっ!?』という表情で雅を見る。
「いいんじゃないか、牡丹の気持ち次第だ。」
「私帰るわ。」
「おう、そうか。」
あっさりと湯船で話が決まってしまった。
僕と京と牡丹は話を終えるとすぐに脱衣所に出て、牡丹はすぐに父さんにこのことを伝えるのであった。
父さんは一言「そうか。」と言って自室に戻って行った。
ただいま朝の6時10分。雅は『そろそろ二人を起こしに行かないとな...』と二階に続く階段を登っていくのであった。
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読んでくださりありがとうございます。
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