第6話 (僕+私)をよく思わない人達
僕は朝、学校の下駄箱付近で僕ら四人によからぬ事を考えそうな連中の声が聞こえてきた。
〈ったく、天才肌なやつはこれだからやだよ。〉
〈橿原くんと付き合えたからって偉そうにね。〉
〈出雲さん、あいつより俺の方が...〉
とまあこんな感じでほとんど根拠もない嫉妬なのだが...
とにかくこう嫉妬が強すぎる者は少し警戒する必要がある。前の林間学校での元木のような事が起こりうる。警戒するに越したことはない。
まあ元々自分たちがネットに姿を現すようになってからはこういう事があるものだとわかっていたから、今まで通りに警戒するまで。
僕達は基本二人か四人で行動するようにしている。できるだけ一人にならない。四人でいられる時は4人でいて、球技大会から特に仲良くなった咲也や小鳥遊(優香)さんとも一緒にいるようにする。
今まではなんの問題も無かったのだが、球技大会で総合優勝してからというもの、少々悪質な行為が見受けられるようになった。
まず盗撮。いつか身バレでもさせようと撮ってあるのだろう。
そしてストーキング。これは僕らが少しでも何か炎上に値する行動をしないかと付けている。
そして三つ目、アンチコメント。動画配信において、好き放題言ってくる。これはなぜわかったかと言うと、言ってきた一人がまさかのアカウント名が本名で、うちの学校の生徒だと直ぐにわかったからだ。直ぐにアカウント名が変わったが、僕はそれをスクリーンショットで保存してある。
まだ度を超えると嫌がらせは受けていないが、いつ何が起こるかわからない。だから警戒しとくに越したことはないのだ。
「コソコソと...」
「京?」
そんなコソコソ陰口をする生徒の声が聞こえたのだろうか、京は完全に女王様モード。
「本当に人を凍らせる力があればよかったのですけど...」
相当怒りが積もっているようだ。あたりの雰囲気が一気に凍りつく。正直そのオーラだけでも十分だ。
陰口をたたいてた奴らも〈バレたか!?〉〈ま、まずい!!〉と、自分たちの所に来るのではないかと冷や汗をかきながら怯える。
「京」
「...」
京は少し前を歩き始めて陰口を叩いた男子に向かってこう言った。
「陰口を叩いても、本人にバレてしまえばそれは陰口ではなく...ただの醜い、低レベルな嫉妬の言葉よ。」
そう冷たくあしらって後ろを歩く雅を待って教室へと向かうのであった。
「やり過ぎじゃないか?」
「いえ、このくらいしないと今後何も変わらないわ。」
「まあそれもそうだけどな。」
まだまだ京のご機嫌は宜しくないようだ。
「せいぜい学力試験でも私の上を取っていただかないと、そんなこと言う価値すらありません。運動も駄目で学業も駄目。性格も宜しくない。そんなの人間の果ての姿じゃないですか。」
「京〜そこまで言ってやるな。」
「...はい。」
怒りを言葉にした京を雅は押さえた。
「これ以上はこちらも陰口になるってことを忘れずにな。」
「...はい。」
どうやら少し反省したようだ。
「僕達だけではどうにもならないことだってあるんだ。そこをいちいち気にしていたら埒が明かないぞ。」
「そうですね...」
雅は『京が気にする必要は無いんだぞ。』という趣旨を伝える。
「まずは目の前の問題から片付けて行こう。」
「目の前の問題?」
この言葉に疑問を持ったのか、奏多、楓さん、京達は疑問形で「何かあったっけ?」と質問する。
「期末試験だ。点数取れないと、嫉妬どころか、動画配信すらも出来なくなるかもな。」
「あ、ああぁぁ...そういえば...」
奏多と楓は「そういえば期末試験もうすぐだった...」とガックリとうなだれる。
「期末試験は二週間後。まずはそこを乗り越えてから次の問題に移ろう。」
「「は〜い...」」
奏多と楓は士気のない返事をして教室に向かって行くのであった。
「雅は話をそらすのが上手いですね。」
「まあな。このままの空気では一日疲れて終わって撮影どころじゃないだろ?」
「それもそうですね。」
京と雅は項垂れて歩く二人の後ろをクスッと笑いながら「ほら、早く行くぞ」と背中を押して教室に入っていくのであった。
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読んでくださりありがとうございます。
もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。
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