第4話 私のバレーボール2
優香はコートに背を向けた。そして逆回転にボールを回しながら高くあげて、すくい上げるように背面打ちをした。
回転のかかったボールは鋭い弾道で相手コートのアウトラインギリギリに落ちた。
ビィッ!!
「ナイスサーブ!!優香ちゃん!!」
「そんなことが出来るのね...」
バレー部は上からサーブを打っては行けない。しかしアンダーハンドのサーブではバレー部の部員が多いクラスにサーブで点を入れられない。
そこであえて逆に向いて下から手を出し、上でボールをミートすれば擬似的なドライブ(回転のかかった)サーブができるのではないか。
これは朝京が考えた特A組のバレー部サーブの抜け穴。
公式戦が始まれば練習する時間が無いが、朝から来ていた優香ならできるのではないか。そう思ってこのサーブを優香に考案したのだ。
実際練習でやって見ると、
バシーンッ...バシーンッ...
「おぉ!入るね!!ちゃんと入る!!凄い!これなら行けるよ!!」
「そう。なら良かったわ。」
強い球が相手コートにバンバン入っていく。コントロールは難しいが、これはバレー部の感覚でアウト等の問題は何とかなった。
そして今。初心者の子がドライブのかかったカーブに苦戦する。
何事もサーブとレシーブが基本。相手から来るボールが取れなければいくら攻撃力が高くてアタックまでたどり着けない。
特A組にはバレー部と遜色ないサーブを打つ楓。初心者キラーの優香、そして恐らく京もそれなりのサーブを打つことが出来る。チームの動きを見る限り他の三人も普通の無回転サーブくらいなら打てそうな感じ。
相手は気持ち的にも展開的にも追い詰められていた。
しかし優香のサーブがバレー部員にレシーブされる。そして綺麗なトスが上がる。身長の高い子が練習してきたであろうスパイクを披露しようとする。が、それだけで自分たちの攻撃が終わったと思っていけないのがバレーボール。
アタッカーのネット越しの目の前に大きな壁が現れる。そしてアタッカーは腕を振り抜く...
バシッ...バシーンッ!!
ビィッ!!
得点は...特A組に入った。
11対1
何が起こったのか。相手のスパイクが決まったのでは無いのか、
実はアタッカーの目の前に現れた壁は京、そしてアタッカーのスパイクは...京のブロックに撃ち落とされたのであった。
「よし。」
「京ちゃんナイスブロックー!!」
球技大会なのにレベルの高い試合。第一試合は京にサーブが回ること無く15対1で特A組が勝利を収めるのであった。
「凄かったね!京ちゃんとかえちゃんのスパイク!!」
「優香さんのトスがあったからよ。他の子もレシーブが安定していたし、」
「も〜!謙虚だな〜京は!」
チーム内も非常に明るい雰囲気。バレー部が一人しかいないチームがバレー部三人いるチームに大勝をおさめる展開に観客席は大いに湧いた。
優勝候補を一点で抑える圧倒的な技術力を見せつけた特A組は弱小からダークホースとなったのであった。
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「おめでとう雅。スパイクといいブロックといい凄かったな。」
「えへへ。でしょ?もっと褒めて〜!!」
「ああ。本当に驚かされたよ。凄いな、京。」
そう言って雅は笑顔で京の頭を撫でる。
「えへへぇ〜。」
いつになく甘える京に楓すらも驚く
「み、京が...」
「可愛すぎない!?京ちゃんあんなんになるの!?頑張って良かったー!!」
言葉を失う楓、この京を見るために頑張ってきて、予想以上のものが見れた優香。
『優勝したらもっと凄いことになるんじゃないの!?偶然二人とも次勝てば決勝の試合に出られるから、次も勝たないと!!』
優香は楓と京が出ない次の試合も絶対に勝つぞと意気込みを入れるのであった。
ちなみにこの時生野先生はもう大盛り上がり。
「よーし!!よーし!!行けるぞ!!総合優勝!!行けるぞーーー!!」
「落ち着いてください先生。」
奏多が必死に興奮する先生を止めているのであった。
------------二回戦-------------
もちろん特A組はシード。言い忘れていたが、バレーボールは基本25点3セット先取だが、それだとあまりに長すぎるので、どんどん回して、3位や5位とかも決めれるように15点1セットゲームになった。
二回戦は京と楓は観客席からの観戦だ。
「いやぁ楓。凄かったね。スパイクもサーブもバレー部並じゃないか!流石だ。」
「イェーイ!!バッティング以外で活躍できなかった奏多とは違うもんね〜!!」
「あれは雅が強すぎるがゆえだ!二回だけボールが飛んできて二回ともダイビングキャッチしてるはずなんだけどな!!」
「でもあれ取った時雅くんニヤニヤしてたよ」
「わざと際どいところに打たせてるんだよ!ったく相変わらずSっ気が強いよなぁ...」
目立った活躍をした楓は雅に遊ばれていた奏多を煽る。奏多はあまり納得いってないようだ。
「さぁ、なんの事だか」
「とぼけるな〜!!」
雅が話を聞いていたのかわざとらしく「知りませんね〜」と奏多に煽りを入れる。
そうしているうちに二回戦の試合が始まる。
相手にバレー部はいないそうだ。かと言って油断はできない。
楓がいないとはいえ、かなり強い。あまり攻撃を仕掛けていないような気もするが、こちらの守りが固く、相手のミスで着実に点数が入っていく。
ビィッビィー!!
試合が終わった。
15対9
それなりにいい試合だ。試合終了の挨拶をすると優香さんが私目掛けてグッドマークを見せる。
私は素直に小さく親指をグッと立てて返したのだった。
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読んでくださりありがとうございます。
もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。
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