第3話 私のバレーボール1

球技大会三日目。私は今体育館でバレーボールをしている。楓と二人でパス連(パス練習)をしている。


一回戦の相手はバレー部女子のメンバーが3人いる確かに全員サーブやスパイクは撃てないが、小技に点数を稼がれる可能性が高いので油断ならない。


バレー部じゃない人の身長も高い。


正直厳しいかもしれない。


けど、雅が優勝したんだから私もしたい。雅の隣にいる人なのだから常に上でありたい。


そのためにも優勝しなければ。1回戦で負けてる場合ではない。


そう思った。


「おはよ〜京ちゃん、かえちゃん(楓)!朝から頑張るね〜」

「ええ。雅が勝った以上私も負けられないわ。」

「ってな感じで京が張り切っちゃってさ〜」

「いい事じゃない!大切な人のために頑張る女の子は素敵じゃん!!」


優香は雅のために頑張る京の姿に目をキラキラさせながらその意志を褒める。


京は身長もそれなりに高い。女子用バレーのネットの高さくらいならスパイクを決められる。楓も同じだ。楓はどちらかと言うと身長は低いが運動神経が優れていて跳躍力があるタイプ。その他のクラスメイトも優香さんの指導でスパイクを打てるくらいになった。


当初は優香さんは守り固めのチームにする予定だったらしいのだが、私の出るチームでは皆攻撃が上手かったので、リベロではなくセッターとして出ることになった。


私達がスパイクを打てるよう、撃ちやすい所にトスを上げてくれる役割だ。


準備は万全。私達は試合が行われる第一体育館に戻ることにした。


-------------------------


〈よろしくお願いします!〉


両チームコートの端に並んで挨拶すれば試合が始まる。


サーブは相手から。


相手はバレー部三人、身長の高い子が三人。男子の野球とまでは行かないだろうけど、相手は圧倒的な力で優勝できるチームだ。


でもこちらも頑張ってきた。負けるつもりは無い。


ビーッ!!


サーブを打ってくださいという審判のホイッスルがなって相手選手はサーブを放つ。


1球目は私が拾い、優香さんがトスを上げる。それを楓が


バシーンッ!!


ビィッ!!


短いホイッスルが鳴った。


スコアボードの特A組の欄に1点が追加された。


「よしっ!」

「ナイスキー楓ちゃん!!」

「楓凄いわね...」

「京もナイスカット!!」


綺麗なテンポの攻撃にチーム内の士気が上がる。相手もまさか特A組のチームがここまで仕上がっているとは思っていなかったのだろう。


バレー部三人は楓を警戒するようチーム内に指示した。


今度は私たちのサーブ。楓がボールを貰って、ビィーっていうホイッスルの音でコートの後ろから走り始めた。


相手チームはそれに大きく驚いた。


楓は軽くジャンプしてボールを少し浮かせて弾道の低いサーブを放つ。


狙いは初心者。無回転で揺れるサーブは見事相手のレシーブをすり抜けてダンッとボールが地面に着く。


ビィッ!


「ナイスサー!!」

「いいわよ楓!!」


またまた特A組の点数。


2対0


相手のバレー部三人は驚きが隠せない。


そう。楓がして見せたサーブはジャンプフローターサーブと言って無回転で少し高い位置からサーブを打つことで、ネットに引っ掛からずに真っ直ぐな弾道で、かつ無回転なのでユラユラ揺れるサーブになるのだ。


正直二、三年バレーやった程度ではフローターサーブを目標の位置にズレなくレシーブすることはほぼ出来ない。


そもそもフローターサーブというもの自体初心者には撃てない。無回転で真っ直ぐ飛ばすサーブはそれなりの時間をかけないと習得できない。それに加えてジャンプしてボールを上げてフローターサーブを打つのはタイミングを合わせるのも難しいので、普通の高校生バレー部の人でも何回かに一回くらいは失敗するサーブなのだ。


体が温まっていないとバレー部でも最初のうちは全然入らない。


それを初球で決めて見せた楓の運動神経は恐るべき物だ。


相手は完全に楓だけを警戒することになった。しかしそれが相手チームの悪循環を招く。


この後楓はサーブを5本連続で決めて初めてアウトを打ってしまう。


ビィッ!


初めて相手のスコアボードに1点が追加される。


5対1


相手は完全に楓だけを警戒している。相手のサーブが飛んでくる。チームメイトがレシーブをし、優香さんがトスを上げて私はタイミングよくトスの下に入る。左手を上げ、右手をグッと引き付けてボールの上を叩きつける!!


ダーンッ!! ビィッ!!


「ナイスキー京ちゃん!!」

「ナイストスだわ優香さん!!」


今度は私がスパイクを決めた。


「ナイスキー!!京!!」


体育館の上は男子の観衆でガヤガヤしているのに高い所から私に声をかけてくれる一人私はに気づく。


「雅!!」


私は一瞬でその位置を当てて手を振る。それを見た雅も笑顔で振り返してくれた。


「頑張れ!!」

「うん!」


私も雅の声援に応えることにする。


それを見た優香は『やばいやばい!この胸きゅん展開ヤバすぎ!!あの京ちゃんが子猫ちゃんみたいになってる!!可愛すぎる!!』と、猫の尻尾があればピーンと立っているような京の様子を見て興奮する。


今度は優香のサーブ。優香は『ここで点数稼いでこの試合を貰って、京ちゃんが橿原くんに褒められて、惚気ける姿をしっかりと拝見させて頂かないとね。』新たな目標と共に、サーブのモーションに入るのであった。


______________________________


読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る