第8話 (僕+私)の動画配信

朝起きると昨日の投稿は削除されていた。そのアカウントの削除されていない投稿は、昨日の事件の当事者が〈悪質な盗撮。元々許される行為ではないが、一般の人のプライベートを撮影するだけでなく、フラッシュをたいてまでしてそこからネットに拡散するのは非常に悪質〉などと言ったコメントが多数寄せられ、そのアカウントは凍結された。


僕らはその後一花さんと大輝さんに感謝の意を延に行った。一花さんは


「いやいや!私はただ、まだデビューもしてない推しが理不尽に晒されて怒っただけですよ!何もしてません。」

「私も同じですね。二人はまだただの一般人なのですから。」


と、感謝される筋合いは無いと言って逆にその後僕達を慰めたり(?)してくれました。


今日は日曜日。今日から僕らの撮影が始まる。グループ名は学校で話題になった通り、【春夏秋冬の花嵐】だ。アイコンはイラストをわざわざ一花さんが僕たちのイラストを描いてくれた。


「...随分と美化しましたね。京は忠実に可愛さが表現されていると思います。」

「いやはや、推しのチャンネル創立に携われると知った瞬間に気合い入れたわ!」

「ありがとうございます。」


先程から一花は推しという言葉を何回も使っているが、四人はそれを気にしない。


「では一本目の撮影に行きましょう!!」


一花が張り切って記念すべき一本目の動画の撮影を始める。


「どうも、桜だ。」

「向日葵!」

「楓〜」

「椿よ」


「春夏秋冬の!!」

「「「「花嵐です!」」」」


「初投稿です!イェイッ!!」

パチパチパチ


撮影が始まる。春夏秋冬の花を順番に言っていき、その動画の企画提案者が「春夏秋冬の」と言った後にみんなで「花嵐です」と言う。


まあ、ぽいでしょ?


動画投稿のリーダーは楓さんだ。まあ、僕や京みたいな人が動画を仕切れば固くなるので妥当だと思う。


今日の内容は簡潔な自己紹介と、いきなりの大変な企画。市の全域で隠れんぼをするという企画だ。制限時間一時間で市内の20箇所のポイントのどこかに潜むというもので、50分おきにヒントが送られ、三時間以内に探し出すという企画。


鬼は僕と京。逃げが楓さんと奏多。


鬼が両方見つけたら鬼の勝ち。片方でも見つけられなかったら逃げの勝ちだ。


そしてこれには罰ゲームがある。


それは広い地域の鬼ごっこにちなんで、二週間私服を着て外に出る時は必ず某テレビ番組のハ〇ターと同じように黒スーツ黒ネクタイをしなければならない。


いや、そんなの嫌に決まっている。何より動きずらいし、友達と出かけられない。かなり困ったゲームだ。


『負ける訳にはいかない...』


心で絶対に捕まえてやると決心するのであった。


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「※カエデ、み〜っけ!おっし!!おし!!」


僕はニヤ〜とした顔で奏多を見つけた。


「うわぁぁぁあああ!まじかぁぁ...」


僕にしては珍しく大きく感情に出してガッツポーズを見せた。


二時間半に及ぶ激闘の末、最終ヒントで丘の展望台の裏に潜む奏多を見つけ出した。


最終ヒントが出てから探す時間は30分しかないため、市の半分より奥だった場合負けはほぼ確実だったが、奇跡的にすぐ近くだったので時間をかけて探したら見つかった。


最終ヒントは自分目線の写真だ。


僕らはスタジオに戻ると二着のスーツが用意されている。そしてカメラも回っている。


それを見た瞬間に楓さんと奏多は、


「うわ...あるよ...」

「カエデ...私たち頑張ろうね...」

「あぁ...」


リビングで机を叩きながら悔しがった。それを僕はにやけながら見下ろし、京は冷たい表情で、


「さあ、さっさと着たらどうかしら?」


と、二人を見下ろす。


『今日の京、一段と女王様がかっているな...』と思ったが、それを口に出すほど僕は命知らずではない。


二人は泣く泣くスーツに着替え終わりカメラに登場する。


「初日からこんなことになるはずではなかったのよ...」

「向日葵...なってしまったものはしょうがないよ。〈逆にスタジオの中!〉とか言って秒で捕まったのは向日葵なんだからさ。」

「ううぅぅ!!カエデまでそれを言うの!」


楓は涙目で奏多に訴える。それに奏多は焦って動画をしめた。


「ごめんごめん!!さ、終わろう!!」


「「「「ではまた!」」」」


そう言って撮影は終わる。


初めての投稿にしてはかなり面白いものが撮れたと思った。


これはやらせなんかでは無いのでしっかりと外に出る格好をする時はスーツを着てもらう。


「フッ...ごめん面白すぎて...クククッ」

「ええ。面白いわね。」


「笑いすぎだよ雅、さすがの僕もショックを受ける。」

「そして京は面白いと思うなら少しくらい笑いなさいよ!」


このやり取りに一花さんと大輝さんは腹を抱えて笑った。


この動画は初投稿ながら、動画アプリの急上昇ランキングにのり、再生回数もいきなり数百万行った。登録者数も一気に増えた。


これには驚いたが、まだまだもっと伸ばさなければならない。


『楽しんでかつ、動画を伸ばすねぇ。』


雅はしっかりと今後についても考えるのであった。


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この話以降、動画配信の中身だけに焦点を当てた話は基本出しません。再び学校や日常、事件に話をシフトします。ただ、事務所や動画の関係の話はそれなりに出てきます。よろしくお願い致します。


あと、伊勢楓と奏多の動画での名前の楓はややこしいので、奏多の方はカタカナ表記にさせていただきます。よろしくお願い致します。

______________________________


読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。

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