第3話 (僕達+私達)の自己紹介
「おう、戻ってきたか。で、私達に向けて何か言われたのか?」
京と雅は教室に戻ったが、自分の席に戻らずドアの手前で止まった。
そのため先生が『我々に何かあるのだろう』と察してその内容について問う。
それに雅が答えた。
「伊勢さんと太宰をお借りしても宜しいですか?」
「ほう。その2人もお呼び出しということだな。」
「左様にございます。」
生野先生の確認に京が答える。
「では二人とも、行ってきなさい。お呼び出しだ。」
「「はい。」」
先生の言葉に返事をして二人は京と雅の元に向かった。
「恐らく今日中は戻れないと思います。明日からまたよろしくお願い致します。」
「ああ、行ってこい。」
雅は今日は戻れないという趣旨を伝えて先生の言葉に頷きながら教室を出た。
四人を見送った生野先生のポケットのスマホにメールが来た。生野先生はそのメールを見て皆にこう言った。
「我々は、豪運の持ち主だな。」
生徒たちにはそれが何を意味しているのかはわからなかった。
四人がいない25人学級は何故かもの寂しい雰囲気を纏っていた。
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「...ということです。」
「ほほぉ...」
「な、なるほど...です」
河野さんの説明を受けた奏多と楓は呆気に取られた顔で納得しつつ、京と雅の顔を見る。
その後に確認するように奏多が雅に話しかける。
「...僕も事務所に入るの?...」
「ああ。お前はイケメンだ。問題ない。」
「京...私も?」
「あなたは性格以外は可愛いんだから問題ないわ。」
京と雅は二人を煽っているように見えるが、それまた違うのだ。
雅は女子ウケのいいイケメンだが、奏多は男子ウケが良いイケメンなのだ。簡単に言うと男子の間では〈あいつめっちゃイケメンだよなぁ、モテるんだろうな〜〉という系のイケメンだ。
楓もおなじ、同性ウケのいい顔をしている。
二人ともテレビに出ても恥ずかしくは無いくらいに顔は整ってるのだ。
「じゃあこの話は成立ってことでいいかしら?」
「まぁ...雅がそういうんならやります。親のry」
「ご両親には確認済みです。」
「あ、はい。」
ほぼ、というか半強制的に話が決まってしまった。まあ話のメインは雅と京なのだからそのふたりが賛成するのに2人が反対する理由はない。親も賛成してるなら尚更だ。
「では早速マネージャーさん達に会いに行きましょうか、達とは言っても二人ですが、」
そう言って河野さんは僕たちを学校の隣に立つ駅ビルの最上階会議室に連れていった。
「さあ入ってちょうだい。」
河野さんが首にかけた会員証みたいな物をロックにかざすとガチャっと鍵が開く音が鳴って、河野さんは扉を開ける。
僕たち四人は綺麗な広い部屋に入ると二人の若い男女が僕らを待っていた。
「え!?待ってめっちゃヤバいほどイケメンじゃないすか社長!!」
「...イッ...イッ...イケメンだ...」
その反応に四人は二つの意味で『あれ?』と思った。まず河野さんが社長と呼ばれたこと。そしてマネージャー二人の反応だ。女性の方はいい。問題は男性の方だ。
「落ち着け二人、まずこの能天気が茅野、そこの変態が
「えっと、どうも!茅野一花です!えっとー男子二人のマネージャーになるね!」
「「「「え!?」」」」
そりゃ四人も驚く。男子は男子、女子は女子となると思ってたからだ。しかしそこで河野さんが頭を抱えてこう答えた。
「百川だと...男子で組むと心配だろ?...」
『あ、納得。』
と四人心の中でうんうんと頷くのであった。すると手を頭の後ろに持っていきながら笑顔で百川が挨拶する。
「いや、そんなつもりは無いんですけどね。百川大輝です。二人ともよろしくお願いしますね。」
そして今度は四人が挨拶する。
「新城下高の特進科、橿原雅と申します。よろしくお願い致します。」
一瞬場の空気が変わったように感じた。
随分と礼儀正しい雅の挨拶に一花が「おぉ〜...」と感嘆の声を漏らすと後ろからこっそり河野さんが来て一花の耳元で
「彼、恐らく私よりキレてるし大人だぞ。」
とニヤニヤ笑いながら『年下に負けてるぞ』と茶化す。
続けて奏多が
「同じく新城下特進の太宰奏多です。よろしくお願いします。」
と挨拶をすると、京が言葉の隙間もつくらずに挨拶を続けた。
「私は出雲京と申します。同じく新城下特進です。以後お見知りおきを。」
雅の時と同じように一瞬空気が変わるような挨拶をした後にさっき一花に言ったことと同じことを大輝に囁く。
続けて楓も挨拶。
「一応三人と同じ特進科の伊勢楓です。よろしくお願いします!」
三人と違い声にハリがある挨拶に場の雰囲気が和らぐ。
そして今後の活動の概要をマネージャーの二人から話を聞くことになる。
男子女子別々に集まるのではなく、四人が二人に集まる感じで話を聞く。
「まず、君たち四人に事務所としてやってもらいたいのは、まあ、実は役者...では無いのかな?いや、場合によっては役者?なのかな?」
「どういうことですか?」
一花のあやふやな発言に雅がしっかりと『的確に』と質問する。
「まあ、単刀直入に言うと、君たち四人にはグループ系動画配信者になってもらいます!」
「あ、あの...それだと...」
「そう!最初の内は有名になることが目標になるね!」
いや、雅はそんな事を質問したいのではなかった。
「これで、この事務所の利益になるのですか?」
雅は直球に言った。
「うっ...」
あまりにも感の鋭い雅に一花がギブアップと涙目になる。そこに雅は
「あっ...すいません。そういうつもりでは...」
と慌てて謝罪を入れる。そこに一花を援護するように話に入ってきたのは河野さんだ。
「済まない雅くん。私は君たちを有名にさせてこの会社の利益にすることを第一に考えているのは間違いない。だが、その付属面として、若いマネージャーの育成もしたいのだ。賢い君達ならマネージャーの育成は適任だ。それで大丈夫かい?」
河野さんは含みで隠さず、自分の利益のために言っている事を堂々と雅に告げる。そして雅に本当の事を伝えることが一番良い結果になることも、既に河野さんは理解している。
「そういう理由なら問題ありません。自分も未熟者なのに偉そうな口を申し訳ありません。」
雅と京で一花に頭を下げる。
「社長ぉぉ...」
あまりに大人な二人に自信を失ったのか、一花が涙する。
「ほら!泣かない!これも修行の一環だ!」
雅は申し訳ない顔になる。
「しょうがない、私が説明するけどいいかな?」
「ええ。河野さんがそれでいいなら...」
今の一花が使い物にならないと思ったのか、河野さんが僕らに説明を始めた。
「まず君達はネット界では既に有名人だ。テレビにそのSNSの投稿が取り上げられ、他の多数の事務所のスカウトマンが君たちを探してはスカウトを仕掛けようとしているのも事実。そこまで反響のある者が突如ネット界に現れればその話が広がるのも早いだろう。大丈夫。君たち四人の強い個性があれば一定のファンは獲得できるはずだ。」
「だから最初の方からある程度の利益は見込めると...それはどうでしょうか...その話は僕たちに人を楽しませる力があればになります。」
「人を楽しませる事だけが動画配信者の特徴ではないわ。」
と、二人の語り合いが始まった。
一花は「ひぇ〜...」と、河野さんに正当な反論を返す雅に軽く脅えている。
しかしそこで楓が話を遮って河野さんに質問をする。
「すっ...すいません。河野さん、河野さんってこの超有名事務所シークライトの社長さんで良いんですよね?」
「ええ、そうよ。それがどうかしたかしら?」
どうやらこの事務所はとても大きな事務所らしい。楓はテレビとかネットドラマに詳しいのでそこら辺は間違いない。
「そうなると、雅君が守った河野さんのお子さんって...天才子役の河野かなちゃんじゃありませんか?」
「ええ!そうよ!」
「「ぇえっ!?」」
雅と京はあまりテレビに詳しくない。だが、超有名の朝ドラに出てきた子役、河野かなちゃんを知らないほど疎くはない。
「あら?知らずに助けたの?」
「え、ええ、失礼ながら気が付きませんでした。」
その後に楓が話を続ける。
「だから、河野さんの話は信じられると思うのよ。だから頑張ってみない?雅くん。」
『超有名な俳優女優子役がいる事務所のトップの人だ。確かに信用できるな。』
雅は楓の発言と河野さんの話に納得した。
「分かりました。その内容でよろしくお願いします。」
雅は河野さん含むマネージャーさんたちの方を向き、頭を下げてお願いをするのであった。
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読んで下さりありがとうございます。
もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。
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