第4話 (僕達+私達)とマネージャーとマンション

「先程は失礼しました。改めて橿原です。」

「僕の方からも失礼しました。太宰奏多です。」

「いやっ!あれは私の力不足だから謝るのは私の方で...まぁ、改めて茅野一花です!よろしく!」


雅と奏多はマネージャーの一花と挨拶をした。そして直ぐに話に移った。


「まず...高校生だから身バレとか嫌だろうし、芸名決めようか!なんか候補とかある?」


「なんかあるか?奏多。」

「それなら春夏秋冬の花嵐のやつでいいんじゃない?」

「おお、いい案だ。」

「その、春夏秋冬の花嵐ってのは何?」


案を出した奏多。その案に納得する雅、それが何かを一花は質問した。


「僕達四人はいわゆるダブルカップル的な感じでして、カップル二組でいつも四人でいるので学校の生徒からそう呼ばれているんです。こんな綺麗な表現になったのは雅と京さんのおかげなんですけどね〜」

「へ〜。なるほどねぇ。で、四人は何に例えられているわけ?」


この質問には雅が答える。


「京が椿、僕か桜、楓さんが向日葵、奏多は楓だそうです。」

「楓ちゃんが楓じゃないのね...まああの性格から夏を選ぶのは納得ね...」


と、学校の生徒の名付けに一花も同情する。


「じゃあ、下の前はそれにするとして、上はどうするか〜。動画の時は下の名前だけでいいけど、そうじゃない時は名字も欲しいからね〜。」

「なら僕は石割で。」

「僕は吾妻あがつまで。」


二人は即答した。


「それはなんで?」


一花は単純に疑問を持ったのでそれを質問した。そして二人はこの質問にもすぐに答える。


「桜と言えば自分は石割桜が大好きなので。」

「楓って言ったら紅葉じゃないですか。紅葉って言ったら吾妻渓谷が好きなんですよね。」

「な、なるほど...」


『よく知ってるわね...』と一花は心の中で二人の知識量にも驚いたのであった。


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「では、早速話にはいるんだけど、まず芸名を決めようと思う。何かいい案はあるかい?」

「じゃあ私は春夏秋冬の花嵐の向日葵で!」

「そうなると私は椿かしら?」


この二人も男子と同じことを考えていた。


「了解。苗字はどうするかい?」


手際よくポンポンと話が決まる。


「私は桜井でお願いします。」

「私は福岡で!」


この二人も即答した。


「分かりました。桜井 椿さんと福岡 向日葵さんでいいですね?」

「「はい」!」


大輝の確認に二人は頷く。そして男子の方へと向かった。


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「へ〜、桜井 椿ね。なんというか、そっちも花嵐か。」

「ええ。偶然ね。でもこれでいいのかもしれないわね。石割桜君?」

「なんか恥ずかしいからやめなさい。椿?」

「わかったわ。私もやめるから雅もやめなさい。」

「はは。わかったよ。」

「えへへ。」


二人で軽く冗談を言い合ったあとに、微笑んだ雅が京の頭を軽くなでる。それに無表情な京が表情を緩める。それを見たマネージャー二人が話し合う。


「なんというか史上最高の理想のカップルだけど史上最強の恐ろしいカップルだね。」

「同感。」

「唯一高校生なのは楓ちゃんだけじゃないかしら。」

「それな。」


奏多も調子は高校生だが、勘づく所や場所をわきまえる所は大人だった。


「じゃあ社長にあなたたちが住むマンションを案内するよう言われているから行きましょうか!」


一花がそれなりに高いテンションでそう言って事務所の扉を開ける。大輝含む五人は一花の後を着いて行った。


「ここよ〜!いいなぁ〜。」


一花は案内を終えた後につい本音が盛れる。四人が案内された場所は、学校や事務所のビルとは反対側の改札に直結のタワーマンション。


ここは東京から片道1時間半の地方都市ではあるが、大企業の本社や工場が沢山あり、高層ビルやタワーマンションもそれなりに立っている。そのタワーマンションの中でも一番高いマンションの最上階だ。


「え。」

「あの...」


「皆まで言うな!社長の財力を気にしたら負けよ!」


『こんな高いところに住まわせてもらう程の事はしてない』と言おうとしたが、一花さんに「分かってる。分かってるからそれ以上言うな」と言われた。


「はい!これが鍵よ。さっ!開けて開けて!」


一花さんが1番楽しそうにしている。


「はい。では」


ガチャガチャと鍵を開けて玄関の扉を開く。すると。


「「わはーーーっ!!」」


楓と一花さんが異常なほど広い玄関に喜びの声を上げる。なぜ一花さんまで喜んでいるかと言うと、実は今玄関を開けたこの家は、撮影スタジオなのだ。


なのでマネージャーさんも撮影の時はこの家にいるのだ。そして僕たちの家はその隣だ。


雅は随分と自分たちに期待してくれているんだなとここで初めて思った。それと同時にこの期待に応えられるような成果をあげないとなとも思ったのであった。


人の命を救ったことがこうなるとは思ってもいなかったが、ここからは学校も配信も努力次第だ。改めて雅は急を引き締めるのであった。


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「じゃあ私達はこのホテルの3階で、私が〇〇〇、大輝くんが〇〇〇に住んでいるから何かあったらよろしく!では楽しんで〜!」


二人は笑顔で手を振りながらエレベーターで降りていった。


僕達は自分たちの新しい家の鍵を開けて家に入る。間取りはスタジオと少々違う。あるものは同じだが、配置や形が違う。そして四人一人一人に部屋がある。


「わぁ〜」

「ひぇ〜」


奏多と楓はリビングの広さに声が漏れる。


カーブする壁は上から下までガラス張り。しかも防弾ガラスだ。そして大きなカーテンがその窓ガラス一面を自動で閉めていく。


「す、凄いわね。これから私たちはここで一緒に暮らして行けるのね。」

「ああ。そのためにも色々頑張らないとな。」


立派な家に京が感動し、雅も「ここにこれからも住めるように頑張らないとな」と、当初の目的を忘れないよう口にする。


大きなソファに大きなテレビもある。ダイニングには立派なダイニングテーブル。


キッチンはアイランドキッチン。冷蔵庫や炊飯機、トースターに、電子レンジも揃っている。


ちなみに家具、家電製品は全て橿原家がお金を出したそうだ。『どこからそんな金を』と思っていたが、これには感謝しかない。


洗面台はふたつ並んでおり、お風呂は泳げるくらい広そうだ。シャワーも二つ付いている。


ベランダは結構広い。


そして個人の部屋だ。個人個人の部屋はそこまで広くない。普通の家の高校生の部屋を少し広くしたくらいだ。中にあるものはもともと自分の部屋に置いてあったやつだ。配置までしっかり再現されている。


他の3人も同じ様だ。


四人はリビングに集まって今後について話し合った。


「まず風呂をどうするか。」

「私は別に雅になら見られても構わないわ。」

「私も奏多なら大丈夫。」

「...」

「...」


女子二人の発言に男子陣は黙り込む。


男子からすれば、女子と風呂に入るのは夢の中の夢。でもいざ入るとなると理性が保てるか分からない。さあどうするか...そう悩んでいる間に


「はい。書いたわよ。」

「「あっ...」」


元々脱衣所の壁にあった裏表にひっくり返せる札に


面[雅&京]

裏[奏多&楓]


と書かれてしまった。


男子二人は『...これから精神面を鍛えて行かなければ...』


と、しっかり断らなかったことに、男の欲に逆らえなかったことに後悔するのであった。


女子はと言うと、


『もう私は子供じゃないんだからって奏多に見せつけないとね!』と楓。


『キャーッ!書いたはいいけどどうしましょう!でもいいわよね!一緒に入っていいわよね!?恥ずかしいけどここで攻めなくてどうするの私!!』と京。


二人は男子陣との心の距離をより近づけるために必死なのであった。


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読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。





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